明日から西武デパートで個展を開催する。一階に有るギャラリーへ下見に行くとお洒落な婦人がコサージュの様な物を展示している。私は自分の部屋がある三階まで歩いて登ることにした。二階から三階に上がる途中で何故か外に出てしまった。どうやらデパートの裏口らしい。辺りはとても辺鄙な町で、どうやってデパート正面に戻ったら良いのか解らない。迷路のような小路の所々に不良少年が番兵みたいに立っている。私は彼等を無視しながら歩いていたのだが、一人が話し掛けてきた。「道に迷って困っていらっしゃいますね?私が大通りまで案内しますのでついてきて下さい」不良少年は私を気にもせず駿足で小道を走っていく。少年を見失った私は彼の足跡を頼りに畑道や住居の私道をクネクネ歩く。足跡は大きなビニルハウスに消えていた。中から不良少年の声がした。「此処が精力絶倫魚の干物工場です。貴方は死ぬまでここで働くのです」中をチラリと覗くとこれから天日干しされるであろうグロテスクな深海魚が並べられている。私は恐ろしくなってその場から立ち去った。闇雲に歩いていた。気が付くと大通りに出ていた。しかし見回してもデパートの影はない。仕方がない...。タクシーを拾おうか。
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