嘘みたいな話(6) - 2007年01月09日(火) 「そんなつもりで撫でたんじゃないよ」 私が何を言ったって、榎木さんは優しく笑っている。そんな彼に、何だか涙が出そうになる。 「…断りたいなら断れば?」 そうだ、断りたいのなら、榎木さんが断れば良いんだ。私みたいなガキが自分に不似合いだって思っているのなら。 断られたって傷つかないんだから。こっちだってどうせ『会ってみるだけ』のつもりだったんだから。 そう思っているのに、どうして涙が出るんだろう。 「断らないよ」 ………へ? びっくりして顔を上げると、榎木さんの指が私の頬の涙を拭うところで。 頬に触れた指は私の手を取った。 「葉月さん、改めて交際を申し込みます。僕と結婚を前提としたお付き合いをして下さい」 信じられないような言葉を告げた後、彼は私の手の甲に優しくキスをした。 「な、何で!?」 「俺が君を好きになったら、おかしいの?」 「だ、だって、私が高校生だから…」 「高校生だから嫌だ、なんて一言も言ってないよ」 そうだったっけ?だったら、何の話してたんだっけ? ああ、駄目だ。私、混乱しまくり。どうして良いのか、分かんない。 「返事はくれないの?」 「返事!?」 「俺、『お付き合いして下さい』って言ったんだけど」 相変わらずにこにこしている彼は、あくまで優しく私に尋ねる。 言われた事は分かる。答えを出さなきゃいけない事だ。 私の答えは?―――そんなの決まってる。一つしかない。 「…はい」 私は彼の言葉に小さな声で、だけどしっかりと頷いた。 私の答えなんて最初っから決まってたんだ。あの時、この人が私に現れた瞬間から。 一目見ただけで心臓が震えた。ろくに喋れないくせに、この人に良く思って欲しくて、殆ど無意識の内に嘘を吐いていた。自分でも訳分かんなくなるくらい…。 「葉月さん、今度は二人きりでデートしましょう。その時、君の本当の趣味を教えて下さい」 私の手を取ったまま、そう言った彼を私は王子様みたいだって思った。 高校生の私が見合いする事になって、現れた人は最高に格好良い人で、その人とお付き合いする事になった。 全てが嘘のような話だけど、一番信じられないのはやっぱり、 「ねぇ、葉月さん」 私の名を呼んで優しく微笑む彼を、どうしようもないくらい好きになってしまった事。 END ***** お見合いで知り合った二人が恋に落ちる話。私としてはかなり憧れで好きな設定です。 で、この話は結構気に入ってて続きを書こうかと思ってたけど、もう忘れちゃった…(泣)だってこれ書いたの、去年の10月…。 いつかちゃんと考えて、続きというか本編というか…書いてみたいなぁ。 以上、過去小説でした。 ところで…背景のいちご、見辛いか?変えようかな…、素材探してこよう。 追記。 変えてみました…が、やっぱり少し見辛いかもしれません。気合いで読んで下さい!(変えた意味はあったのか) あと日記タイトル変えてみました。ピエロちゃんじゃなくて、ラルクさんより。 そんな感じです。 -
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