君と二人なら (3) - 2006年03月02日(木) 「ばーか、修理した俺が動かし方、分かんない訳ねぇじゃん」 こんなもんで追っ払えるとは思わなかったけどな〜。多分見たこともないようなおもちゃに、ビビっただけなんだろう。 バタバタと騒がしい足音が消えて、俺はもう一度絨毯を捲って地下室の蓋を持ち上げた。 「大丈夫か?あいつら、行っちまったぜ」 「ああ、私は平気だ」 手を貸してやると、アグリアスは素直に俺の手を取る。 さっきは気づかなかったけど、その指にはゴージャスな銀の指輪が嵌っている。 見たこともない、綺麗な青い石―――宝石なんかあんまり興味ないから名前は分かんないけど、すげぇ綺麗だ。 「ドレス、汚れてないか?ここ、埃が溜まってたろ?」 「いや、良いんだ。こんな服、汚れても」 「そーゆーこと言うなよ。折角綺麗なんだからさ」 暗くたって狭くたって服が汚れたって、気にするような女じゃないけどさ、アグリアスは。 それでも女らしい格好をしているせいか、こっちが心配になってくる。 「お前こそ、無事なのか?」 「全然」 「剣の音がしたようだが…」 「あのなぁ、俺だって一年前まで、あの化けもんと戦ってきたんだぜ?ちょっと腕が立つぐらいのヤツにどうこう出来ねぇさ」 そう、どうこう出来る訳がない。だけど、それはアグリアスも同じ筈で。 何で俺よか全然強い筈のアグリアスが、あいつらから逃げてきたんだろう。何で逃げ切れなかったんだろう、謎だ。 「それもそうか。…すまない」 綺麗な格好をしてても、喋り方はアグリアスだ。それに少しだけ安心する。 「気にすんなって。大したことじゃねぇし」 それに、アグリアスがピンチの時は必ず守るって決めてた。 あの日―――自分の弱さと強さに気づかせてくれたあの時、誓ったんだ。 アグリアスがピンチの時ってなかなかなくって…、でも誓いが守れて良かったよ、ホント。 まあ、アグリアスには言ってないから、何のことか分かんないだろうけどさ。 「で?あいつら、誰なんだよ?なんか感じ悪ィヤツらだったぞ」 「………フィアンセ」 アグリアスは暫く沈黙してから、小さな声でそう告げた。 「は?」 ちゃんと聞こえはしたんだけど、信じられなくて思わず聞き返す。 「フィアンセなんだ、私の」 「フィアンセ〜!?け、結婚すんのか!?姉さん!!」 「それが嫌だから、こうして逃げている!」 そりゃそうか…、そうだよな…。でも、嫌なら何で婚約なんて…。 「親が決めたことなんだ。私は何度も嫌だと言ったんだが、聞き入れて貰えなくてな。相手も何故かその気で…。何度も逃げようとしたんだが、厳重態勢でなかなか逃げることが出来なかった。夕べ、婚約パーティが始まる前にようやく逃げ出せたんだ」 婚約パーティの前にねぇ…。そりゃあ、相手も追いかけるよなぁ…。 「…って姉さん、まさかそれでその格好…?」 「ああ、着替える暇がなくて…。仕方なく、このままチョコボに乗ってきた」 …そりゃ、目立つだろ…。アグリアスが逃げ切れなかった理由が何となく分かった。この格好じゃ、剣も使えないしな。 だけど、そんなことはどうでも良いことなんだけどさ…。 続 -
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