10.薬 (3) - 2005年11月10日(木) 「絶対飲まないからな…」 何だかんだ言いつつ、明人はお粥を殆ど完食した。 割と腹は減っていたのかもしれない。具合が悪くて、動くのが面倒だっただけか。 明人が俺が手に持っている風邪薬を見てそう言った。 「だから、我侭言うなって。病院に行かないんなら、市販の風邪薬ぐらい飲まなきゃ駄目だ」 「嫌だね、もう寝るっ」 明人は俺に背を向けて、ベッドに倒れ込む。 本当に我侭だな…。明人が薬嫌いなんて知らなかった。食べ物では好き嫌いが殆ど無いのに。 「明人、寝るなら薬飲んでからにしろって」 「……………」 そんなに嫌なのか、薬。 「あんまり我侭ばっかり言ってると、襲うぞ?」 「……………」 完全に無視されてる…。なら、襲っても良いってことか? 「分かった」 俺は錠剤の風邪薬とミネラルウォーターを一緒に口に含んだ。 明人の顔の横に手を置くと、明人は驚いたようで俺の方を向く。 無理やり顎を掴んで口づけると、明人の口の中にそれらを流し込んだ。 明人の喉が上下する。しっかり飲み込んでくれたみたいだ。 「…漫画とかでこういうシーン、読んだな。割と上手くいくもんだ」 あれは…、江藤に借りた少女漫画だっただろうか。 まさか俺が実践することになるとは思わなかったけど。 明人は驚いたようで、まだ声を出せないでいる。 「明人ー?大丈夫か?」 「………なんてことすんだよっ!騙したな!?」 ようやく声を上げた明人は、俺の予想通りの言葉を吐いた。 「騙してない。俺、襲うって言っただろ」 「酷いっ!鬼!悪魔!冷血漢!!」 …なんとまあ、酷い言われよう。だけど、それで明人が治ってくれるんなら別に構わない。 「はいはい、分かったからもう寝ろ。俺は帰るからな。明日の朝、また来るから。学校に行けそうなら一緒に行こうな」 まだぎゃーぎゃー騒いでいる明人を、ベッドに押しつける。 「俺はもう駄目だ…。恋人に裏切られ、一人寂しく死んでいくんだ…」 「はいはいはいはい、ちゃんと愛してるから。おやすみ、明人」 明人を軽くあしらって、背を向ける。 …やっぱりちょっと拙かったか?口移しで飲ませたのは…。 明日になったら、忘れてくれてると良いが…。明人の性格から言って、引き摺りそうな気がする…。 「一成」 寝室を出る直前、明人が俺の名を呼ぶ。 振り向くと明人は壁の方を向いていて、俺を見ようとしない。怒っているのか、少し声が低かった。 「何?」 「………有り難う、来てくれて…。ちょっと心細かったし…助かった」 明人の口が出た言葉は、意外なものだった。 この状況でお礼を言われるとは。何だか照れくさくなる。 「いい、明人が元気になってくれれば、それで。だから、早く治せよ?」 「うん…、分かった…」 明人は布団に隠れていない頭を上下させた。相変わらずこっちを見ようとしないが。 もう一度明人におやすみ、と言って、俺は明人の家を後にした。 良かった、俺の行動が無駄にならなくて。 これで明人が治ってくれれば、それで良い。 今日の明人も可愛くて良いけれど、やっぱ俺はいつも明人が好きだから。 了 ***** なんか変だな…。オチはどこだ? 自分でも何を書きたかったんだが…(汗) とりあえず“病気の時の一番の薬は愛情だ!”ということを書きたかったんですけどね。 口移しで薬を飲ませるとこがメインではないですよ(笑) あと一成君のキャラがいまいち掴めていない。 一応献身的に尽くす彼と風邪でちょっと我侭で可愛い彼のつもりだったのに。 うーん、ちょっと失敗。 -
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