8.蒼 - 2005年06月22日(水) 初めて彼に会った時のことは、今でも忘れない。 最初に目に飛び込んできたのは、目が覚めるような蒼い服だった。 「初めまして。僕、レストと言います。貴方のこと探していたんです。さあ、一緒に行きましょう!」 そう言って、僕は彼に右手を差し出した。 話に聞いていたよりも、ずっと怖そうな人に見える。 無表情で、不機嫌そうで…、何を考えているんだろう―――そう不安に思った。 だけど、その不安は顔に出さないようにして、僕は懸命に笑顔を作る。 「探していただと…?」 彼の唇から発せられた声は、やっぱりどこか不機嫌そうだった。 僕は怖くなって、少しだけたじろぐ。 だけど、そんなことはお構いなしに、彼は僕の頭に空手チョップを食らわせた。 「い…ったーっ!」 「ふざけるな。探したのは、こっちの方だ。あっちこっちうろちょろしやがって…。ローレシアに行ったんなら、少しはそこで待て。サマルトリアに帰るんなら、真っ直ぐ帰れ。こんな分かり辛い所でくつろいでいやがって…。お前、絶対俺を避けてただろ。そうとしか思えない」 「避けてなんかいませんよ〜。僕も貴方を探してたんですよぅ」 「嘘だな。絶対避けてた。じゃなきゃ、こんな面倒なことにならないだろ」 彼は僕をじろりと睨みつけて、大きく溜息を吐いた。 本当に彼のことを探していたのにな。 リリザで一休みしちゃったのは、間違いだったかもしれないけどさ。サマルトリアに着くまでに行き倒れになりそうだったんだ。仕方がないじゃないか! 「あー…、疲れたー…」 彼はそう呟いて、僕が借りた部屋のベッドにごろんと横たわった。 「…ごめんなさい」 それでも、やっぱり僕が悪かったのかなって思う。 だって、彼は本当に疲れてるみたいだったから。 きっと一生懸命探してくれんたんだなぁ、僕のこと。色んな所を行ったり来たりしながらさ。 それなのにこんなとこにいたら、空手チョップを食らわせたくもなるよね…。 「もういい、空手チョップでチャラだ。でも疲れたから、ちょっと寝かせろ」 「はい、どうぞ。僕も寝ますから」 二人部屋借りといて良かったかも…。そう思いつつ、僕もベッドの中に入り込んだ。 何だか不思議な気分だった。 今日初めて会った人と同じ部屋で寝るなんて。 だけど、明日からは毎日こうなんだ。だって、この人と旅をするんだから。 「あの…、カインさん…」 僕は恐る恐る彼に声を掛けてみる。 「あー…?」 すると、返事が返ってきて、僕はほっと息を吐いた。 「明日から頑張りましょうね。ハーゴンを倒す為に…、頑張りましょう」 僕は決意を新たに、誓うようにそう言った。 「そうだな…、まあ適当に…」 「は?」 「それなりに…」 それなりって…。 「もっと気合い入れて下さいよぅ。僕達が頑張らないと…」 「適当で良いだろ…。もし世界が崩壊したとしても、俺達のせいじゃない。ハーゴンのせいだし…」 そ、それはそうなんだけど…。 「見た事もないご先祖様がやったことなんて、俺は知らないし…。勇者とか言われても、よく分からんし…」 「それはそうですけど!カインさん!」 僕は彼の言葉に呆れて、思わず声を荒げる…けれど、彼は眠ってしまったようだった。 なんてやる気のない人なんだ。選ばれた勇者だと言われているのに。 そりゃあ、僕達には関係のないかもしれないけれど。ロトの血を引くなんて言われても、僕だって今いちピンと来ないけれど…。 それでも期待に答えなきゃって、僕は思うのに…。 この人について行って、本当に大丈夫なんだろうか…。 僕は彼の蒼い背中を見つめながら、不安に思わずにはいられなかった。 ***** ついに二次やっちまいましたね…。それもDQ2!古いですよ!(笑) 実は言うと、最近やり始めまして(それもFC版)、最初の方でカイン(ローレ王子)が言っているのはサマルトリアの王子を仲間にした時に遙が思ったことです。 勇者の泉に行くと“ローレシアに行った”と言われ、ローレシアに行くと“サマルトリアに帰った”と言われ、サマルトリアに行くと“まだ戻ってきていない”と言われるアレです。 で、王子の妹さんに話を聞いて、“お兄ちゃんは寄り道が好きなんだよね”と言われた時にはぶちキレそうになりました(笑) リリザの宿屋でようやく見つけたサマル王子はというと…、“やー、探しましたよ”。 そりゃあ、こっちの台詞だっ!!と突っ込んだのは言うまでもありません(笑) 後半のやる気のないローレ王子は、遙的にそんな王子希望という意味を込めて。 ちなみに私の中での名前は、 ローレ王子→カイン サマル王子→レスト ムーン王女→アリシア です。 また書くかもしれないので、一応紹介。 ところで、全然お題と合っていませんね?面白いくらいに。 -
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