実家の母から電話があった。
どうも この前 病気をしてから祖母が 病気の方は治ったのに 時の縦軸と横軸の混乱状態が ひどくなってしまったようで わたしと もう一人の子供が わたしの所にいるはずだから 電話をして連れて帰ってくるように わたしに話すんだと 何度も言って両親を困らせているらしい。
だから電話をしたんだとすまなそうな母の声。
そんなことかまわないよ と言って 祖母に電話を代わって貰った。
祖母はもう耳が遠いから なかなか こちらの声が聞こえにくいようで。 それでも わたしとちゃんと覚えていてくれて 認識してくれたから 嬉しかった。
ただなにぶん 祖母の中では 時が混乱してるから わたしと もう一人 子供の頃のわたしのような存在が そこにいるらしく。 その子は母の子供の頃でもあり 母の幼くして亡くなった妹のことでもあるようで。 「とにかくその子を早く家に連れてきておくれ」 と 何度も繰り返す。
わかったからね。大丈夫だよ。 ちゃんと一緒に連れて帰るから待っててね。 って わたしも何度も言うけどなかなか伝わらない。
そのうち聞こえないことにイライラしてくるようで それで母に代わるんだけれど 納得してないから また電話を・・と言って それを何度も繰り返す。
母が電話の向こうで大きな声で説明してるのが聞こえる。
何度目かで少し気が済んだらしく それじゃあ とにかく頼むよ と言って 再度母に電話は渡される。
疲れきった様子の母が 「昨日からこんな調子で困ってるの・・」と言う。
両親の疲労も当然だ・・と思う。 実際 綺麗事じゃなくて 介護というのは半端じゃない根気がいる。
アノヒトの末期の自宅介護の時もかなり意識の混乱があったから 身体の介護に加えて随分神経を疲弊させられた。
それでも本人にすれば それは まごうことなき現実の風景で 祖母にしても彼女の中ではちゃんと辻褄はあっている。 其処にやるせなさがある。
結局 周りの人間ができることは受け入れてあげることだと思う。 違っていても本人にとってはそれが真実のことなら それを真実として対応する。 でもこれは口で言うよりも大変だしイライラもする。 何しろ 同じことを何度となく延々と繰り返されるのだから。 カミサマじゃあるまいし つい口調もきつくなって当然だろう。
わたしは一つ提案をしてみた。 とにかくわたしがその子を連れて帰るから 安心しておばあちゃんは待ってて って言ってるから大丈夫 ってことを 紙にマジックで大きく書いて見せてみたらどうかな。
母は ああ!と初めて気がついたようだった。 無理もない。ずっと とにかく納得させなくては と それで頭がいっぱいだっただろうから。 疲労が高まれば判断能力も鈍る。
もし 良ければ わたしだけでも子供達が学校に行っている間に 少しでもそっちに行って おばあちゃんと話してみようか? と 母に言ってみた。
何一つ孝行らしいこともできない こんな有様のわたしでも 少しは役に立てるなら。
でも両親は両親でわたしの身体や子供達のことを心配しているようで 10分やそこらで行ける距離では無いから尚更に。
とにかく おばあちゃんが わたしに電話をしたがるなら いつでもいいし何度でもいいから・・ということと 両親にも自身の身体にも気をつけて 難しいだろうけど できるだけ無理をしないで と伝えた。
母がわたしを心配するから こっちは大丈夫だから!と 言ったけど そのとたんに咳き込んで また心配をかけてしまった。情けない・・。
人間は歳をとっていくとどんどん子供に還っていくっていうけど 本当にそうだなぁ・・・って思う。 会う度に祖母はわたしには童女に戻っていくように思えてならない。
祖母が夜に突然歌いだす歌も 何度も繰り返される同じモノガタリも あの 理屈の通らない駄々の数々も。
小さなオンナノコの地団太踏んでる苛立ちにみえて 切なくいじらしくイトシイ。
話を聞くことしか今のわたしにはできない。 父の話。 母の話。
そうして
祖母の 話。
結局 親不孝な娘です。孫です。
それでも だから あの妖精のコトバをモノガタリを せめて聞かせてもらえるならば 何度でも 出来る限り 聞いていたいと思うんです。
妖精はきっと普通の歳をとったオンナノコの中に 棲みつくんだと思います。
そんな気がして ならないんです。
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ゆうなぎ
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