『記憶』
忘れてしまいたいのに
忘れられないことがある
覚えていたいのに
こぼれ落ちていく記憶がある
『鍵』
二度と開けられない鍵を
捨てられずに
幸せの形見のように持っている
『理由』
理由なんていらないのにね
理由がないと不安になってしまうんだ
何故 ただ そのままを 信じられないんだろう
いつから ただ そのままを 信じられなくなってしまったんだろう
形のないものを どうして形にしようとするのだろう
わたしは こんなふうに
『五月の雨』
薄いレースのカーテンのように
景色を覆って穏やかに降り続く
もどかしいような
人恋しさの中で
想い出に絡めとられて
静かに沈んでいく