コミュニケーション。
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「初詣は毎年行くのか」
「えぇまぁ、大体」
「来年は、誰と行くんだ?」
「え?」
わかっていた。 照れ屋の優ちゃんのいつものパターンだ。 私に言わせたいのだ。
私の頭には、家族しか浮かばなかった。 新年に希望をはせる、あのおごそかで冷たい空気に、 いくら今私の心を捕らえている人でも、 家族よりは遠い人と行ける気がしなかった。 そういう意味では、誰とも行けない。
別考えてないけど、と笑顔で濁らせた私に、
「なんだ、『優ちゃんと行きたい〜』って言うかと思ったのに」
と口を尖らせる真似をしたので、 私は笑いこけた。 今までの女の子は皆そうだったのかしら? 私って家族にくっつきすぎかしら。
がっかりさせて、ごめんね。 明日、話題にするね。
今は、あなたの期待を裏切ってやれたことを喜ばせておいて。 なんでもかんでも「彼氏」で片付ける女は嫌いなの。
今朝を思い出せば、憂鬱な朝だった。 眠れなかったから、あぁ今日も眠気を堪えなきゃ…ってのと、 強引に途切れた記憶を取り戻そうと必死だったから。 嫌悪感を飲み下そうと。
それが今日はまぁ…夜明け前のコーヒーが幸いしたのか、 いつもより眠くならず。 優ちゃんはいつも通り、仕事しながらかまってくれて、 空白に新しい記憶をくれた。
明日は夕方から迎えに来てくれる。
「4時ね」
「おう」
「じゃ、お疲れ様」
「お疲れ」
カラカラと引き戸を開けると
「おい」
「ん?」
チュッ
振り向いた私に、仕事机からの投げキッス。 嬉しくなって、思わずそっくり返したけれど、 私が我慢出来るわけないのだ。
「何で近づかないのかって話なのよ」
せっかく同じ空間にいるんだから。
明日もたくさんのキスをしてね。 私の記憶容量いっぱいに。
浮かれていた、のかもしれない。 強いカードばかり、でもペアがないときのように。 どのカードを捨てようか? エース?キング?クィーン?
自分に馬鹿、と言ってやろう。 エースのペアを選ばずに勝てると思ってんの?
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