コミュニケーション。
DiaryINDEX|past|will
「俺には何でもお見通しなんだ」
さながら尋問の如く、 優ちゃんは、泣いた理由を聞いてきた。
お風呂に入ってくる、と声をかけてから、 お風呂のドアを開けるまでに時間があった、 それで気がついたのだ。
その直前の話題がヤキモチのことだったから、 推理というほどのことではないけれど、
やっぱりこの人とあたしは、似ている。
泣いたことは本当だったから、 聞いてくるのも嬉しかったから、 ちょっとだけ、話した。
「浮気されたことが、あるんだよ。
それで別れたのに、その後も会いに来て、
あたしもヤキモチ妬いちゃって、
苦しかったからもう妬きたくないって思ってたのに、
優ちゃんに、
“相当なヤキモチ妬きだよな、何人も付き合った俺にはわかる”
って言われたから、
変わってないんだなぁと思って、悲しかったの」
話をセーブできる自分にはびっくりした。 何年も付き合った人だったこと、 あたしにしか言えない人だったこと、 言おうと思ったのに、 まだ時間が足りない、と判断した頭が言わなかった。
ヤキモチを隠せなかったことも嫌だったんだ。 あなたの前では、出来るだけ大人の女でいたかった。 悔しかった。
それだけ。 つまんなかったでしょ、と言ったら、 優ちゃんはあたしを抱きしめた。
怒るのもムッとするのもボーっとするのも笑ってくれるけど、 泣くのだけは、必死になる。 「何で泣いたんだよ?!」 逆に言いにくくなっちゃうけど(笑) そのうちスッと言える気がする。 ずっと必死にならせる女でいたいな。
皆既月食。 どの窓からが一番見えるか探して、見た。 寝室の窓が、ちょうどよかった。
「お月様がちっちゃいー!」
めったに開けないらしい窓の枠は、 ホコリが溜まっていたけど、 見慣れない月に飽きなかった。
「人が住んでるんだぞ」
「知ってます」
優ちゃんと見るのは楽しい。 ここまで話が合うとは思ってなかった。 一番最初に飲みに行ったとき優ちゃんはそう言ったけど、 今のあたしもそう思う。
“一緒に月や星を見てくれる人”
まさか、あなたが叶えてくれるなんて思ってなかったよ。 2ケタ離れたプレイボーイさん。
明日も仕事だー。 では、おやすみなさい。
|