コミュニケーション。
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「気にしてないよ、大丈夫」
それまでどおり、寺島の頭を胸に置いて、 髪の毛を撫でた、次の瞬間には、 涙が頬を流れていた。
幸運にもほとんど音は立たず、 鼻水も出なかったから、すすりあげずにすんだ。 でもすぐに手を動かしたらバレるから、 何気なく拭わなくちゃ。
胸の真ん中を中心に、痛みが体に広がった。 足がびくりと動いた。 あの痛みは、一体なんだろうと思う。 初めて経験したのは、 小学生のとき、同じく初めて男の子に告白したときだったな。
涙はもうこれ以上流れないで欲しい。 拭えなくなるから。 寺島の頭にも滴り落ちてしまう。
頑張ってよ、あたし。 一番好きな人に会えてるんじゃないか。 幸せじゃないか。 何を悲しむことがある。 好きな人の重さを感じているんじゃないか。 髪の毛の柔らかさを感じているじゃないか。
そう思い込めるほど、子どもじゃないってことなんだろうか。 痛みは治まらなかった。 不意に寺島が顔をあげたので、咄嗟に顔を背けた。 笑いながら、無理矢理寺島の頭を押さえつけた。 寺島は、苦笑していた。
あたしの涙がどうでもいいんじゃなくて、 隠そうとするあたしを受け止めているつもりなのだと思う。 余計なことを言わないほうがましだ、と。 これ以上傷つけてはいけない、と。
あたしもあなたも、求めてばかりだね。 お互いが無理なことばかり。
「陽ちゃんとのセックスに不満なんてなかったからなぁ、
次の人に不満とか持ったらすごく嫌だな」
…な、なるほど…(汗)
他の人には、とりあえずセックスを求めてるんだ。 あたしにとっての愛情表現だと思ってるから。 それで、相性が合わないと不満を感じるんだ。
寺島とシたって、愛されてるなんて思えない。 だからセックス以上のものが欲しくなるんだ。 他の人なら、それで満足してしまうのに。 例えその人が、既に誰かのものでも。
時たまあなたは、核心をついたことを言う。 あたしのことを見てるってわけじゃ、ないけど。
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何で泣いたかというと。
寺島は、近くのパン屋の厨房に応募したのです。 で、採用されたらーっという話をしていて、 「家でパンが焼けるようになったら、ぽーいってあげなきゃ」 と言ったのです。
「ぽーいって」 という表現で、最初、飼ってる犬かなーと思ったんだけど、 聞いたら違って、 まぁお察しの通り、ユミちゃんにあげる、という意味だったのでした。
自分で、食べるものを作ったとき、 まっさきに食べて欲しいと思うのがユミちゃん、ってのが、 未だにショックだった。 小娘脱却はいつのことやら…。
で、客観的に考えても、 何のコメントも思い浮かばなくて、黙ってたら、 怒ったとか傷ついたとか思ったらしく、 「なんだよぉ〜〜」 とか言いながら暴れた(?)ので、 「いやいや、コメント思いつかなかっただけだから(笑) 気にしてないよ、大丈夫」 と笑ってみせた後に、あぁなったのでした。 口に出してしまえば、大丈夫だと思ってたんだけどなぁ。
書いてみて思ったけど、何やってんだかねぇ。
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