前回の「賞味期限、気にするor気にしない」の終わりに、「期限切れの玉子、どのくらいまで食べていますか」と書いたところ、「一ヶ月」という方がけっこういらした。私なんてやっぱりヒヨッコだったのね。
実際、冷蔵庫で保管していればそのくらいは品質的に問題はないようだ。調べてみたら、パックに記載されている日付は「生食できる期限」であり、火を通すのであればひと月以上食べられるということだった。
ニューヨーク在住の方からいただいた情報によると、かの地で売っている玉子の賞味期間はさらに長くて二ヶ月近くあるそう。三日前に買った玉子には「13/12/2006」と書かれているとのことである。
さて、メールを読んでいると女性より男性のほうが賞味期限に敏感であるという説は当たっているようだったが(女性で期限を気にするという方はゼロだった)、一番のチャレンジャーだと思ったのは「冷蔵庫のポケットから取り出そうと殻を掴んだとたん、グシュッと潰れた」という男性。
「そういえばここ半年、玉子を買った覚えがなかった」
そうで……。
男性の中にもツワモノがいらっしゃる。
それでは今日のお話。
一昨日、毎日新聞の記事で「夫婦げんか」についてのアンケートの結果を読んだ。第一生命経済研究所が三十代から六十代の既婚男女八百人を対象に行った調査によると、「先に怒るのは妻、先に謝るのは夫」というのが現代の夫婦げんかでもっとも多いパターンなのだそう。
また、けんかの頻度がもっとも高いのは三十代で、若い世代ほど女性優位の傾向が強く見られるということだ。
ふむふむと読む。夫婦げんかはうちもしょっちゅうしているが、なるほど、先に怒るのは私である。決して気短ではないのに、どういうわけか私がカチンときて火蓋が切って落とされる……ということが多い。
しかしながら、「謝る」については調査結果通りではない。先に折れるのはたいてい私。私も強情だが夫はそれに輪をかけてなので、こちらが意地を通したら一週間でも二週間でも口をきかないという事態になってしまうのだ。
先日、毎日新聞の投書欄で五十代の主婦が書いたこんな文章を読んだ。
夜の六時にパートから帰宅、ちょっと一服していると、五時に会社を出た夫が帰ってきた。第一声が「まだ夕食の支度をしていないのか」。「私だっていま帰ってきたばかりなのよ」と答えながら準備にとりかかろうとしたそのとき、「おまえは料理が下手だからな」と夫。あんまり腹が立ったので、「だったら離婚して、料理のうまい人と再婚すればいいでしょ」と夕食づくりを放棄した------という内容だ。
この「食事づくりの放棄」は、夫婦げんかの際にしばしば見られる妻側の攻撃手段のひとつのようだ。「夫とけんかをして、昨日夕食をつくらなかった」という話を友人から何度か聞いたことがある。
そんなとき、いつも私は「気持ちはわかるけど、相手を困らせることで勝とうとするのはよくないよ」と言う。言うのであるが……かく言う私も実は結婚生活六年のあいだに二度、それをしたことがある。
もっとも、私の場合はインスタントラーメンもつくれない夫を飢えさせてやろうと思ってのことではなく、「私は家政婦じゃないわよ!」という気持ちが爆発してのことだったので、反撃というより“ストライキ”だったのだけれど。
しかしいずれにせよ、それを放棄するというのは賢い策ではない。家に食事がなければ外で食べればいいし、ホカ弁という手もある。「俺が悪かった、だから飯つくってくれえ」と泣きついてくるなんてことはありえず(それを狙うなら、ワイシャツのアイロンがけをやめるほうがまだ有効だろう)、事態はこじれるばかりである。
どちらかが「なんで私が……」という気持ちをぐっと抑えて歩み寄らなくてはいつまでたっても仲直りはできない。だから、私は「心が広いほうが先に謝るんだ、そうだ、私のほうが大人なんだ」と自分に言い聞かせ、「そろそろいい加減にしない?」と言いに行く。
すると夫もいつになくしおらしく、ああ、振り上げたこぶしを下ろすタイミングをなくしていたんだなあということがわかるので、私の怒りも(なんとか)おさまるのである。
知り合いの話である。奥さんとけんかをし、「顔も見たくない、出て行け!」「おう、出て行くわい!」という展開になり車の中で寝ていたら、深夜、コンコンと窓を叩く音で目が覚めた。
見ると奥さんが立っている。「言いすぎたと謝りに来たんだな」と思いながら彼が窓を開けたところ……ばさっと毛布が投げ込まれたそうだ。
「で、どうしたんですか」
「それがな、『風邪引くから家入んなよ』とか言われるものとばかり思ってたからびっくりしてさあ。ほんまに俺をここで寝かせる気かい!って思ったら、つい謝ってもうた」
俺って情けねえと彼は嘆いていたけれど、そんなことはない。
奥さんはかなりの意地っぱりなのではないかなあ。そんなところで朝まで寝かせられないと思いながらも素直にそう言うことができない。それで、「毛布を差し入れる」という口実をつくって車まで行ったのだ、きっと。
「だから、あなたが無言で受け取ってそれでおしまい、にしなくて奥さんはほっとしたと思いますよ」
と言ったら、彼は「いやいや、うちの嫁さんにかぎって……」と首を振っていたけれど、本当に冷酷非情な奥さんならわざわざ毛布を持って行ったりはしない。
こういうわかりづらい「仲直りをしよう」のサインもあるのだ。
ちなみに、うちではけんかのルールとしてこれは守ろうと決めていることがひとつある。どんなに頭にきていても同じ布団で寝るということだ。
過去には私か夫が客間で寝るということが数回あったが、これをやると食事をつくらないこと以上に雰囲気が悪くなってしまう。それじゃあいけないと話し合い、ここ数年は一緒ではイライラして眠れそうになくても「そうだ、寝返りを打つふりして蹴っ飛ばしてやろー」と思い直して、とにかく寝室で寝ることにしている。
さて、さきほど紹介した投書の主も仲直りの方法というか夫婦安泰のコツについて書いているのであるが、オチがなかなかおもしろいのでぜひ読んでみてください(こちら)。