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2005年08月18日(木) はしたない妻でごめんなさい

みなさま、楽しいお盆をお過ごしになりましたか?(昨日フライングしたので)あらためて、ただいま帰りました、小町です。
レンタカーでめぐる気ままな旅。昨年のスイスでは九百八十キロ走ったのだけれど、今年は同じ八日間で二千五百キロ。
どうしてこんな距離を走ることができたのかというと、ドイツのアウトバーン(高速道路)には制限速度がないから。二百キロで走っていてもどんどん抜かれてしまうという、この不思議。「あの人たち、いったい何キロ出してるわけ・・・」と何度つぶやいたことか。
そんなところを走りつづけたものだから、旅の終わりにはカーブの手前で百キロくらいに減速するとものすごくスローモーに感じられるくらい、スピードの感覚が狂ってしまった。


さてさて。書きたいことは山ほどあれど、真っ先に報告したいなあと私が思い浮かべるのは、食べ物の話だ。
私は出発前の日記に「ドイツにはじゃがいも料理ばかりで、おいしいものが少ないらしい」と書いた。が、それは大いなる誤解であった。
たとえば、プレッツェル。ひらがなの「め」のような形をしたパンなのだけれど、中はもちもち、皮には岩塩がまぶしてあってとてもおいしい。ミュンヘンで「ホーフブロイハウス」という有名なビアホールに行ったら、客はこのプレッツェルを食べながらジョッキ(一リットル入りだ!)を傾けていた。
えっ、パンとビールを一緒に?とかなり驚いたが、いや、あの塩味は案外合いそうだと思い直す。

そうそう、ドイツの料理は全般的に塩分がかなり強いのだけれど、ビールをおいしく飲むための味つけなのかもしれない。
なんせ国民ひとりあたりの年間ビール消費量が百三十リットルという国なのだ。日本で道端でビールを飲んでいる人がいたら、「酔っ払いか?」とぎょっとするが、かの地ではありふれた風景である。

じゃあさぞかしたくさん飲んできたんでしょうね、って?
そうしたいのは山々だったのだけれど・・・。
見かけによらず私はお酒に弱い。少量で酔ってしまうという意味だけでなく、味がわからないのだ。せっかくここまで来たんだもの、と一応注文はしてみるのだけれど、おいしさというものが実感できない。これにはかなりせつないものがあったなあ。
夫が毎晩本当にうれしそうに飲んでいるのを見て、生まれて初めて、飲めないことを残念に思った。

* * * * *

というわけで、飲むのは夫にまかせ、食べるほうに専念する。
ある日記書きさんから、ケルンの大聖堂の近くのビアレストランにネタになるくらい巨大なソーセージがあるという情報をもらっていたので、さっそく出かけた。
・・・のであるが、ドイツ語は難解でメニューとにらめっこしてもどれがそれなのかわからない。店の人に英語で訊いてみることにした。

「このお店の名物ソーセージはどれですか?」

すると、いかにも“ビール腹”をしたおじさんはしばらく考える素振りを見せてから、ある一行を指差した。
「名物」と言えば即答してくれるだろうと思っていたのに、なんだかちょっと心許ない。ここまで来て、間違ったものを注文するわけにはいかない。ちゃんと確認しておいたほうがよさそうだ。

「それは大きいですか?」

しかし、どういうわけか、おじさんはこんな簡単な質問にも小首を傾げる。
いくら私の発音がひどくったって、このくらい通じそうなものなのに・・・。まどろっこしくなった私は思わず言った。

「この店で一番太くて、長いソーセージをください!」

その露骨な表現がよかったのか、おじさんはようやくわかってくれたらしく、今度は自信ありげにさきほどとは別の欄を指差した。

はたして出てきたソーセージは直径四センチ、長さは三十センチほどもある超ビッグなもの。話に聞いていたのは間違いなくこれだろう。
思わず「まああっ、なんて立派な。こんなの見たことないわ!」と感嘆の声をあげたら、なにを思ったのか、夫はちょっと嫌そうな顔をした。