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2004年12月20日(月) web日記サークル

今月は忘年会の予定が四つある。付き合いでのものはひとつもなく、すべて友人や親しい同僚との約束であるが、中でも楽しみにしていたのが先週末の忘年会だった。
心斎橋駅で、「BabyBlue35」のまぁこさんと「flip-flop」のさちさんと待ち合わせ。ふたりとの出会いは昨年秋にさかのぼる。「ボウリングをして遊びましょう!」という企画を立て参加者を募ったところ、どんなメンバーが何人集まるとも知れぬその“闇鍋オフ”に申し込んでくれたのである。
さちさんとは四度目の逢瀬になるが、まぁこさんとは一年二ヶ月ぶりの再会だ。待ち合わせ時間ぴったりに彼女が現れたとき、懐かしさのあまり「きゃああ」とはしたない声をあげてしまった。

こじゃれた居酒屋に移動、まずは共通の友人、つまりボウリングオフのメンバーの近況確認と相成る。
「こないだ○○さんとごはん食べてん」
「わ、元気してた?」
「うん、ふたりに会いたがってた。よろしく伝えてって。そうそう、△△さんも変わりないよ」
主催者である私が言うのもなんだが、このオフ会は成功だったと思う。
その日一日が楽しかっただけでなく、あのとき初対面だったメンバーがいまでも交流をつづけていると聞くし、私も何人かとはその後もちょくちょく会っている。また、ロム専門だったがあの場でみなに勧められてサイトを立ち上げ、いまや日記書きがすっかり生活の一部になってしまった、という女性もいる。
それもこれも私の人徳のなせるわざ……なわけはもちろんなく、参加メンバーの人柄がよかったという偶然の賜物である。私はいまでも、あんな出会いはもう二度とないんじゃないかと思っているのだ。
注文の品がきて、さあ食べようとなったとき、「お箸、このままいっちゃうよー」とさちさんが元気よく断りを入れるので、ふきだしてしまった。
なぜって、私は以前、
「大皿に盛られた料理を何人かで食べるとき、私は取り分け用の箸がなくても気にならないほうだ。潔癖症の友人が同席しているときはやむを得ないが、箸を引っくり返して使うのはてっぺんが汚れて見た目がよくないので好きではない」
と書いたことがあるのだ。
“日記の人”と会っていると、こういうことはよくある。別の友人は私と歩いたりカウンター席に座ったりするとき、「こっちがいいんでしょ」と言って左側を譲ってくれる。彼女もやはり、「私は利き顎が右だから、右側に顔を向けながら話すのが落ち着く」と書いたのを覚えてくれているのである。
面と向かってそんな話をしたことはないのに、と思ったら、可笑しいやらすまないやら。しかし、私もきっと同じようにほかの誰かに無意識のうちに気を回しているのだろう。

日記リンク集っていうのは結局、“web日記サークル”なんだよね、という話になった。日記の読み書きを趣味とする人間の集まりとはいっても、位置づけや楽しみ方は異なる。友達づくりが目的の人がいれば、作品を公表する場と考えている人もいる。無理をしない範囲でのんびりという人がいれば、目指すところを持って貪欲に取り組む人もいる。人気者がいればトラブルメーカーもいて、会員間での恋愛があればケンカもある。
そして、その巨大なコミュニティーの中で「言葉を交わしたことがある」人の数は少なくないかもしれないが、心を許したり信頼したりできるまでに至る縁はほんのいくつかしかない。
私は「なぜ日記をつづけているのか」を考えることはまずないが、なぜはじめたか、つまり日記というものにめぐりあった理由については確信がある。そこに出会わなくてはならない人たちがいたからだ。
「日記の世界も、れっきとしたリアルの一部なのだ」
このごろ、つくづくそう思う。

店員さんの「ラストオーダーになります」の声にはっとあたりを見渡して、驚いた。
両隣の個室にもカウンターにも客はいず、フロアはいつのまにか貸し切り状態。入店して五時間後の二十二時過ぎまで、私たちの誰ひとりとして腕時計を見なかったのである。
「『日記日記って、この人らええ年して交換日記でもしてんのかいな』って周囲のお客に思われたんとちがう?」
「ええー、むちゃむちゃマニアックな人やん」
「たいして変わらんと思う……」
うん、たしかに。
会ったことがあるとないとの差はもちろん大きいが、一度きりかそうでないかでもまたちがう。何年ぶりであろうが顔を見た瞬間にセーブデータがよみがえり、前回のつづきからゲームをはじめることができるのだ。
昨年たくさんの種を蒔いたから、今年はいくつもの再会があった。来年も地味にサークル活動を楽しみたいなあ。そんなことを思いながら、最終電車で帰途に着いた。
(音頭をとってくれたまぁこさん、お店の手配をしてくれたさちさん。おかげで楽しい半日を過ごすことができました。本当にありがとう!)

【あとがき】
どういう流れだったか、ナンパメールが来るとか来ないとかいう話になり(これはどのオフ会でもたいてい出てくるテーマのひとつだ)、「うち?まったくない。断じてない」と答えたら、一瞬の躊躇もなく「うん、そうやろね」と頷かれてしまった。「会ったらフツーのオネエチャンなんやけどね」とな。やはり、サイトの中の私はかなりコワモテに見えるらしい。たしかに「怖そう」「気が強そう」としばしば言われるけれど、それは世を忍ぶ仮の姿。一対一で話したら、私はとってもフレンドリーなのよ。
ある女性日記書きさんには「小町さんは日記とメールの印象に二十倍ギャップがある」と言われたし、あるオフの席でみなが口を揃えて近寄りがたい雰囲気の人だと思っていたというので、「そんなことないわよ、ねえっ?」と隣りに座っていた私よりうんと若い女性に同意を求めたら、彼女はちゃんと答えてくれたもん。
「え、あっ、は、はい、小町さんはメールでは、す、す、すごくフレンドリー……」
しどろもどろの彼女にみなから同情のまなざしが注がれました。