ある日記書きさんから、このサイトをリンクページに加えたことを知らせるメールが届いた。不備があれば訂正しますのでご確認ください、とある。
その丁重さに恐縮しつつ早速見に行った私はひえーと声をあげた。紹介コメントの中に「優しい文章」「柔らかい口調」というフレーズを見つけたからだ。
驚いた。私は「優しい」とか「柔らかい」といった言葉は、自分の文章ともっとも遠いところにある形容だと思っていたのだ。
とはいうものの、こういうことは初めてではない。自分自身の評価と読み手のそれとがかけ離れているために、「ねえねえ、どうしてそんなふうに思うんです?」と尋ねてみたい衝動に駆られることが、実は時々ある。
私は自分の文章を男性的だと思っている。「だ」「である」の文体も書いていることも“強い”印象があり、ヒトガタにしたら骨太で筋肉質のがっしり体型という感じ。たおやかさや可愛げというものに欠ける。しかしながら、数日前にいただいた初めましての方からのメールの中にも「繊細」というフレーズがあり、私はひっくり返ったのだ。
「いったいどこが……」
モニターに向かって問い掛けつつふと頭に浮かんだのが、新入社員研修で習った「初頭効果」という言葉。最初に得た情報がその事柄についてのイメージを決定づける、というあれだ。
彼らがこのサイトを初めて訪れたときに読んだテキストがたまたまほのぼのとした内容のもので、その印象が私のデフォルトとして刷り込まれたのだろうか。
もちろんそれは私にとって光栄な誤解であるが、少々面映くもある。
誤解といえば、先日こんなことがあった。
男性の身長コンプレックスについて書いた前回のテキストのあとがきに、「私は身長百六十七センチです」と書いたところ、イメージと違うという内容のメールがいくつか届いた。
それぞれの方の脳内にいるどの小町さんも実物よりずっと素敵な女性っぽかったので、私はほくほくしながら読ませてもらったのだけれど、中にひとつ傑作なものがあった。
「私のイメージでは、小町さんは小柄で華奢な感じでした。髪はストレートで肩くらい、眼鏡なんかも似合っていつもスカートで可愛らしく、でも時には大人な雰囲気を醸し出している……」
それだけではない。彼女の中で、私は「花柄の壁紙、レースのカーテンのついた出窓のある部屋に住んで」おり、「うららかな日差しを浴びながらパソコンに向かっている」というのである。
ここまで読んで、私と会ったことのある日記書きさんたちがゲラゲラ笑っている姿が目に浮かんだのが悔しいが、当人も不思議でしかたがないのだから責められまい。
「はっきり言って、ものすごい妄想ですよ……」とキーボードを叩きながら、いったいどこをどう読んだら私についてこのようなイメージが湧くのかと思いめぐらせた。初頭効果といったって、そんな想像をさせるようなスイートなテキストは一度たりとも書いたことがない!と断言できる。
そこにある文章だけを頼りに像を作りあげる作業の中で、イメージは実物とは似ても似つかぬものになっていく。読み手のあいだでも、それはかなり異なっているだろう。彼らの中で自分がどんな姿形をしているのかを知ることができたらどんなに面白いだろう?と私はよく思う。
たとえば、ここに六人の女性がいる。もしこの中に私がいるとしたら、あなたはどれを選ぶだろうか。
「私は髪が長い」と以前書いたことがあるので、ロングヘアの女性をラインナップしてみたが、それでも票はかなり割れるに違いない。
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