2004年03月17日(水) |
少年の顔(「フォーカス」アンケート結果発表) |
「少年の顔(前編)」の中で行った「フォーカス」の少年の顔写真掲載についてのアンケートに、百十四名の方がご協力くださいました。ありがとうございました。
それでは結果発表です。
一番左の棒が全体、中央が女性、右が男性の回答結果。
全体で見ると、顔写真掲載を「許される、妥当」と答えたのは34%、「(好ましくはないが)やむを得ない」は26%。合計すると、回答者の約六割が「容認派」(棒の中のブルー系部分)ということになります。
面白いなと思ったのは、女性の内訳のトップが「(好ましくはないが)やむを得ない(35%)」で消極的な肯定であるのに対し、男性の意見は「許される、妥当(46%)」か「許されない、不適切(40%)」のどちらかにはっきり分かれていること。
また、「許されない、不適切」と考えている割合は女性よりも男性のほうがぐっと高いこともわかりました。
「容認」の理由は大きく分けて、この三種類(スペースの都合上、一部引用とさせていただきます)。
今回も顔写真を手に入れたいくらいです。出来ればすんでいる場所も。なぜなら、自分と自分の家族を被害にあわせたくないから、近づきたくないのです。
【30代 女性 許される(掲載は妥当)】 |
加害者ばかり保護される今の日本の状況はおかしい。被害者の顔が公表されるなら加害者も公表されるべき。
【10代 男性 (好ましくはないが)やむを得ない】 |
彼のやったことは、少年犯罪というにはあまりにも重い。将来のある少年だから隠匿されるべき、という性質の犯罪ではなかったはずです。
【20代 女性 許される(掲載は妥当)】 |
一方、「非容認」の理由でもっとも多かったのはこれ。
少年の顔を知ってしまったら、やっと仮退院して、社会復帰しようというときなのに、周りの人間が拒否反応を起こすのではないでしょうか。やれ元犯罪者だとか凶悪犯だとか言われて、これからの暮らしに支障をきたすことになり兼ねません。
【20代 男性 許されない(掲載は不適切)】 |
賛否は違えど、いずれも正直な人間らしい感情であり発想であると思いました。
六年五ヶ月という期間で変わることができるものか?という疑問はすべての人の中にあるだろうと思いますが、「彼はきっと更生する」と信じてやることができるか否かが意見の分かれ目になっているのでしょう。
どれが正解というものでもないですが、「人としてやり直すチャンスが与えられなければならない」というコメントには度量の大きさを感じました。相手がどんな人間でも、「許す」という心をなくしきってしまってはいけないのだろうなあ、むずかしいことだけれど。
テキストに書いた「顔が語る」について言及したものも多かったのですが、意見は見事に真っ二つに分かれていました。
加害者A少年、などという「記号」のみをもってして事件を語られても、全く現実味がなかった。顔写真が掲載されたことで、本当に存在する少年が、この事件を起こしたのだと実感することができた。
【20代 女性 許される(掲載は妥当)】 |
先入観をもって見れば人の顔などどうとでも見えると思うのです。見たいと思う心情は理解できますが、そのこと自体にあまり意味があるのかどうか……。まるで別人の顔が掲載されたとしても、人はもっともらしいことを感じ、もっともらしいことを言うのではないかと。
【20代 男性 許されない(掲載は不適切)】 |
そして、「許される、妥当」と答えた人の心の中にもあるのではないかな、と思ったのがこの意見。
自らの意に反して社会的に自らの顔を公開されてしまうことは、凶悪事件の加害者が刑法による刑罰以外に受け入れなければならない刑罰なのかもしれないと思うことがある。そういう意味では、神戸の事件は公開されても妥当といえる程の重大事件であったと思う。だが、加害者が少年であったことで、私はそれを妥当と言うことにためらいを感じている。
【30代 女性 いずれとも言えない】 |
「十四歳」という部分にとらわれてしまい、情けのようなものをばっさり斬り捨てることができない、というところは私の中にもあります。
媒体が「フォーカス」だったことについての意見も多数いただきました。
本来ならば新聞やTVのニュースで報道すべきだと思った。
【30代 女性 (好ましくはないが)やむを得ない】 |
掲載された媒体が「フォーカス」でなければ、「(好ましくはないが)やむを得ない」を選択したと思います。
【30代 男性 いずれとも言えない】 |
掲載したのがいわゆるイエロージャーナリズムであったため、なおさらその是非をめぐる議論が大きくなったのでしょう。「部数を伸ばすために利用したんだ」と。うん、心情的にはよくわかる。
しかしながら、前回も書きましたが、もしこれが百パーセント正義感に基づいて新聞紙上で行われたことであったとしても、
未成年の容疑者の顔写真、名前の公表が法律で禁止されている以上、法律の是非はともかくとして、それを破るべきではないから。法律を破ることそのものが肯定される場合があるという前例をつくることは、長い眼で見て秩序を揺るがすことになると思う。
【20代 女性 許されない(掲載は不適切)】 |
という理由で、非の大きさに違いはないと考えます。メディアが裁くなどということが許されるはずはなく。
それでは最後に、あたまを抱えてしまった問題を。
フォーカスの問題ばかりではないですが、警察に逮捕された時点での顔写真掲載は避けるべきだと思います。なぜなら、警察に逮捕された時点では容疑者だからです。容疑者は取調べを受け、送検され、裁判を受け、判決が出て確定されて初めて刑に服するのです。僕は判決が確定の時点での顔写真掲載はいいと思いますが、容疑者の時点での顔写真掲載は時期尚早だと思うのです。
【30代 男性 許されない(掲載は不適切)】 |
冤罪の可能性、ですね。松本サリン事件での一件が記憶に新しいので、報道被害というものについて考えさせられました。
しかし、その前に誤認逮捕自体があってはならないことで。裁判で有罪判決が下されたときにはすでに世の中の大半の人は事件があったことすら忘れ去っている、という現実を考えても、そこまで待つべきだとは言えないものが私の中にあります。
「いまさらその話題?」なんて乗ってもらえないんじゃないか、とちょっぴり心配していたのですが、たくさんの方にご参加いただくことができました。
日記を書いていてよかったなあと思うのはこういうときです。私の場合、ひとつのテーマについてこれほど多くの人から考えを聞かせてもらえる場所はここをおいてほかにありませんから。
今回もいい勉強になりました。本当にありがとうございました。
※ 百十四の回答のうち、七十八がコメントあり。これは大事に取っておかなくてはと思ったので、全コメントを別ページに掲載させていただきました。
回答が届いた順に上から並べてあります。さまざまな意見がありますので、よかったらご覧ください(「フォーカス」アンケート回答一覧)。
【あとがき】 アンケートをするときはいつも「こんな結果が出るんじゃないか」と予測をするのですが、今回はむずかしかったです。当時、書店でその号の販売が中止されたり、ワイドショーで非難轟々だったことを思えば、「人権侵害、行き過ぎ報道だ」とする声のほうが多そうな気がする。だけど、身近にはそういう反応に疑問や不満を抱く人たちもけっこういたよなあ。というわけで、蓋を開けてみないことにはわからんなと思いながらの実施となりました。はたして結果はとても興味深いものでした。アンケートをやるたび、本当にいい勉強させてもらってます。いつもありがとう。 |