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2003年08月06日(水) 日記サイトの寿命

先日実家に帰省した際、独身時代に愛用していたノートパソコンを四年ぶりに立ち上げた。
液晶の調子が良くないので修理に出そうとしたら何万もかかると言われたため、それならとデスクトップに買い替えた。以来、納戸の隅で眠らせていたのであるが、この十月からパソコンの処分にリサイクル料金(三千円!)がかかるようになると聞いて、その前に捨ててしまわねばと思ったのだ。
さっさと初期化して、階下でお茶を飲もうっと。そう思いながらパソコンに向かったのに、いざとなるとちょっぴりセンチメンタルな気分になるもので。「今日で見納め」とハードディスクに保存してあるファイルを開いていくうちに、その頃に別ハンドルで書いていた日記を見つけてしまった。
「うわー、懐かしい!」
が、しかし。ほんの二、三日分を読んだだけでぱたりと閉じてしまった。よくまあ、こんなどうでもいい話を垂れ流していたものだ。もしこれが別の人が書いたもので、どこかのリンク集で見つけてアクセスすることがあったなら、私は五秒でバックボタンを押すだろう。そのくらい幼稚でお粗末な代物だったのだ。
過去の恥は掻き捨て、とばかりに今度はブラウザを開く。「お気に入り」には当時交流があったり、日参していたサイトがずらり。思い出がよみがえり、上から順にクリックしていく。
が、はしゃいだ気分は十分後にはすっかり落ち着いていた。ブックマークしていた三十二の日記のうち、実に二十四が「ページが見つかりません」、もしくは休止中だったからである。
「リンク集でも見かけないはずだよなあ。みんな、どこ行っちゃったんだろう」
こんなことでもなければ思い出すことはなかったとはいえ、跡形もなく消滅しているのを知ってしまうとなんだか寂しい。

以前から興味があった。日記サイトの平均寿命っていったいどれくらいなんだろう。誰か調査した人はいないのだろうか。
カップルが三ヶ月、一年、三年の区切りで別れやすいというのはよく耳にする話だけれど、個人サイトにも閉鎖のタイミングは存在するのではないか。
私の感覚では(もっともweb日記界における私の生活圏はかなり狭いが)、「二年」というのがひとつの大きな境界線になっているような気がする。閉鎖してもハンドルを変え、それまでに得た人間関係や認知度といったものも捨て、まったくの別人として出直している書き手も少なくないと思われるが、そのサイトに関しては「臨終」させている。そういうパターンも含めれば、半数近くの日記は二年持っていないのではないかと感じるのだ。
サイトを存続させるというのは決して容易なことではない。なんて言うと「どうして?好きでやっていることなんでしょ」と言われてしまいそうだが、趣味以外のなにものでもないからこそむずかしいのだ。
現在、私のブックマークの中には「無期休止中」の日記がいくつかある。ある日を境に彼らのサイトに時が流れなくなった理由を知るすべは、私にはない。しかし、その状態が彼らが望んでのことであるとはどうしても思えない。あれだけていねいに文章を書き、サイトを大切にしてきた人がなんの言葉も残さず、フェイドアウトなんて形で私たちの前から消えることを望むだろうか。
毎日通い、時計が止まったままであることを確認しては「いったいなにがあったのだろう。どうしているんだろうか」と思いを馳せる。これはかなりせつないものがある。
「更新」はいくつかの条件が揃ってはじめて可能になる。モチベーションを保つこともそう、ネタを調達してくることもそうだ。しかし、もっともキープするのがむずかしいのは書くための時間と体力を確保することではないだろうか。外的要因に左右される部分が大きく、意思ではどうにもならないことだから。
そうであるかどうかはわからない。けれど、もし彼らがいま「書きたくても書けない」「それどころじゃない」状況にあるとするならば、一日も早くそこから脱出してくれることを願ってやまない。「戻ってきてほしい」とはまた別の思いで。

さて、閉鎖だの休止だのといった話を書いたあとに言うのもナンなのですが、『われ思ふ ゆえに・・・』はしばらくお休みをいただきます。
あ、いやいや。べつに「書くのに疲れた」とか「スランプで」とかではありません。八日から旅行に出かけるから、という話です。
というわけで今年もやります、絵ハガキ企画。オーストラリア、中国につづき、第三弾となる今回は北欧。どんな絵ハガキなのかしらと興味のあるあなた!ナマ小町に触れてみたいというあなた!ふるってご応募ください。
明日(七日)の夕方までにメールで必要事項をいただけましたら、北欧四ヶ国のいずれかからあなたのポストにラブレターをお届けいたします。
これが出発前の最後の更新になるかもしれないので、一応あいさつしておきます。
気をつけて行ってまいります。みなさまもよい夏をお過ごしください。

【あとがき】
出張の多い夫を持つ私はいまのところ自分のために使える時間をかなりたくさん持っているけれど、この状態がいつまでもつづくわけではない。もし夫が異動などで毎日家に帰ってくる生活になれば、いまのように一話に何時間もかかるテキストなどとうてい書けなくなる。短い時間で書けるようなものに作風をチェンジするなんて器用な真似はできないし、かといって納得のいかないものをアップする気にはなれない。そうなったら、これが潮時かもな……なんてことを考えてしまうような気がします。日記書きは趣味に過ぎないからこそ、安定した生活と精神がないとつづけることができないのです。