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2003年07月22日(火) そのひとことがうれしくて。

先日ある日記書きさんから、この日記を自サイトのリンクページに掲載してもよいかどうかを尋ねる旨のメールが届いた。
文中リンクを張ったりリンクページに登録したりする際に「かまいませんか」とお問い合わせいただける、あるいは事後にご報告いただけるのはとてもうれしい。私はすぐさま「張るも外すもお好きになさってください」と返事を送った。
そういう場合の先方への連絡を義務だとは思わないので、声高に主張するつもりはない。しかしながら、個人的にはそれは「マナー」という言葉を使ってもおおげさとは思わないくらい大切にしたいプロセスだ。
なくてもかまわない、むしろないのがふつうなのだろうけれど、そのひとことがあるとずいぶん心証が違ってくる……という事柄は世の中にはたくさんある。新幹線で前の席の人がシートを倒すとき、振り向いて軽く会釈などをしてくれると「遠慮なくどうぞ」と笑顔を返したくなるものだが、その感じと似ている。
たしかに私にリンクの承諾を求めるメールを送るというのは、結果だけ見る場合にはあまり意味のある作業とはいえないだろう。なぜなら仮に「ここにはリンクされたくないな」と思ったとしても、私が申し出を断ることはおそらくないから。そういう権利はこちらにはたぶんない。
でもだからこそ、私は相手の方が事前に連絡を入れておこうと思ってくれたことに感謝したくなる。
このサイトにリンクページなるものはないけれど、誰かの日記に文中リンクさせてもらおうと、先方にお伺いを立てることはたまにある。すると、たわいもない感想メールを送ったときよりもずっと早く返事をいただけることが多い。
「いまバタバタしているので、とりいそぎOKの旨だけお伝えしておきます。愛想なしですみません」
といった文面で返ってくることもある。こちらの更新のことを気にかけてくださっているのだ。
ありがたいなあとしみじみ思う。いい人だなあとますます好きになる。こういう発見ができる(可能性が少なくない)ことを思えば、一日や二日更新が遅れることなどなんでもない。惜しむべき手間ではないとつくづく思う。
もっとも、こんな悠長なことが言えるのはここが毎日更新でなく、私の中に「リアルタイムで書きたい、読んでもらいたい」という欲求が希薄だからなのかもしれないけれど。
この日記には「今日」という単語はまず登場しない。「昨日」でさえほとんど出てこない。他に適当な名称がないから“web日記”と称しているものの、私はここにアップするテキストに日記帳の役割は期待していない。
なにがあったか、どんなことを考えたかといったことは正確に記録しておきたいけれど、それが何月何日に起こったのかについてはさほど執着がない。過去ログを読み返したときに、「二〇〇三年の前半のことだったんだ」とか「三十一の夏の出来事だったのね」という具合にだいたいの時期がわかればよい。
よって、私はここ半年くらいの出来事はすべて「先日」「最近」「このあいだ」で片づける。本当に大切なことは“記念日”にして心にしっかり刻みつけるので、サイトの中で日付の正確性にこだわる必要はないのだ。

ときどき他の方の日記で、「明日は忙しくて更新できそうにありません。ごめんなさい」といった一文を見かけ、不思議な気持ちになることがある。
更新を楽しみに待ってくれている読み手に対する「期待を裏切って申し訳ない」であることはわかるのだが、私には口にできないフレーズだなと思う。
私にとって、「読まれることを想定して書くこと」と「誰かのために書くこと」は別物である。これだけ長い文章を読みにきてくださる方には心から感謝しているけれど、だからといってその人たちのためにと思いながら書いたことはない。
web日記の書き手として前者は必須項目だけれど、後者は私には無用だ。誰かのために書くなんてことが自分にできると考えるのはおこがましいし、それよりなにより、そういう心持ちは書く動機を不純にしてしまいそうでイヤだ。
とはいうものの。こんな私でも殊勝な気持ちになる瞬間がまったくないわけではない。
フランスのことわざに「なにを笑うかでその人がわかる」というのがあるが、「なにを読むか」もまた如実にその人を語る。仲間入りさせてもらったばかりのリンクページの紹介文を拝見しているときだけは、「この人の顔に泥を塗らぬよう、これからもきちんと書かなくっちゃ」なんて身の締まる思いがする。
そういう意味でも、リンクの際はひとこといただけるとうれしいなあと思うわけだ。

【あとがき】
中には「リンクなんか勝手にやってよ。いちいち返事するの面倒くさい」という人もいると思います。でも、すべての人にとって好ましいマナーなんてこの世にないわけですから、「リンクの連絡は不要です」と明記してあるところ以外には私はやはり事前に一報入れたいです。ネット上に公開されていて誰でも読めるようにしてあるんだから断りを入れる必要はないという言い分は間違っていないけど、私自身は黙ってというのは気乗りしなくて。