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2002年10月06日(日) ビデの謎

アンニョンハセヨ〜!
というわけで、週末はソウルへ。韓国は三回目の私だけれど、はじめての経験がいろいろできて楽しい旅となった。
骨まで黒い烏骨鶏のサムゲタン(見た目がとっても悪い)に挑戦したり、ソウルタワーから不夜城と呼ばれるソウルの夜景を眺めたり。しかしながら、今回もっともインパクトのあった初体験はこれだ。

ホテルに着き、ベルボーイに案内されて部屋の中へ。
「こ、ここ……?」
「はい。スイートルームでございます」
私たちが泊まることになっていた部屋の清掃が済んでいなかったとかで、お詫びに部屋をグレードアップしてくれたらしい。大きなソファ三点セットに、絵ハガキを書くにはもってこいの明るいライトのついた広いデスク、奥にはキングサイズのベッドがどどーん。なんてラッキーなんだろう!
小躍りしながら、バスルームのドアを開ける。床も壁も大理石張りのそれはうちの寝室よりずっと広かったのだが、便器までふたつ並んでいるのには驚いた。
思わず夫を呼ぶ。
「いくらスイートっていったってさすがに便器はひとつでいいよねえ。ふたり仲良く並んでどうぞって?ヤダー」
が、照れながら便器をのぞき込んで……あれ?
どちらも真っ白な陶器でできており、一見お揃いのようだが、手前と奥のは少し形が違っている。
「そうか、もしかしてこれ……」
思い出した。この便器状の物体は、これまでも海外で何度となく見てきた。洋式便器からフタと便座を取り除き、流水レバーのかわりに蛇口をつけたものを想像していただきたい。蛇口をひねると、駅や公園にある水飲みのように下から小さな噴水が湧き起こるようになっている。
これがなにであるか。シンガポールのホテルではじめてお目にかかったときは友人とさんざん首をひねった。
「わかった。ここで果物を冷やすんだよ」
「でもお湯も出るようになってるから、違うんじゃないの」
「じゃあ下着の洗濯をするとか?」
「それなら洗面台で間に合うやん。外から帰ってきたら手を洗うみたいに、こっちでは足を洗う習慣があるんとちゃう。ホラ、ちょうどいい高さ」
「便器の隣りにあって穴もない。こっちの人は大のときと小のときと便器を使い分けてるんだよ。で、これはきっと小便器」
この正体が判明したのは、一昨年のイタリア旅行で。荷物を運んでくれたベルボーイに無邪気に尋ね、はじめてこれがビデであることを知ったのである。口ごもる彼に使い方を教えろとはさすがに言えなかったが、私はいつか試してみたいと思っていたのだ。

日本のウォシュレットにも、ビデはついている。ピンクの縁取りの中に女性のマーク。おしり洗浄とは別の、女性専用機能であることは明らかだ。私は使用したことがないけれど、腰掛けてボタンを押せばああなるんだろうなということは察しがつく。
しかし、この独立型のビデはどうやって使えばいいのだろう。扉対面式のトイレに慣れている外国人は和式便器で用を足すときもつい金隠し(前方についた半円状のあれ。この名称まんますぎ!)を背にしゃがんでしまうと聞くが、私もビデを前にはたと考え込む。
やはり洋式便器と同じように、壁を背にして構えるのだろうか。しかし、蛇口は後ろについている。座ってから体を後ろにひねるのはとてもやりにくそうだ。姿勢的には蛇口に向かってまたがるほうが自然である。だが、これにはズボンのとき、全部脱がねばならないという不具合がある。どうしたものか。
そうだ、この部屋にはパソコンもついていたのだ。
早速調べてみると、「バスやトイレが当たり前になかった頃、欧州の女性たちがセックスの後、デリケートな部分を清潔に保つためにそれを利用していたのが起源」とある。その習慣はいまなお健在で、各家庭にはもちろん、部屋にシャワーやトイレのない安ホテルでも、ビデだけはしっかり設置されているのだそうだ(ゆえに、シングルの部屋にはついていない)。
具体的な使用方法まで教えてくれるサイトは見つからなかったが、夫がサウナに出かけた隙に試してみることにする。
とりあえず洋式便器と同じように腰掛けて、蛇口をひねる。キャー、冷たい!お湯、お湯!
うーん、こんな使い方で合っているのだろうか。
ウォシュレットと違って乾燥機能がないため、それ専用のタオルが備え付けられているのだが、なんとなく気が進まない。もしこれを使ったとして、そのタオルはどうしたらいいのだろう。まさか何事もなかったように、またフックにかけるのではあるまいな……。
というわけで、私はトイレットペーパーを使用したのだけれど、便器の向こうのそれをどうやってたぐり寄せたかはご想像におまかせします(っていうか、そんなもん想像しないでください!)。
次回の旅行までに、あれのちゃんとした使い方を知っておきたい。もしご存知の方がいらしたら教えてください。
(あ、次は中国だった。じゃあとりあえずは必要ないか……)

【あとがき】
上記の日記を読んで、ある方が情報を提供してくださいました。あれは水を貯めて使うのだそうです。ということは、おしりを浸すんでしょうか。
また、脇に備えつけられたタオルは使用後、次に使う人のために周囲に飛び散ったしずくを拭き取るためのものとのこと。私は自分自身を拭くためのものだとばかり思っておりました……。
ひとつ賢くなりました。この日記を読んで、私の友人のようにあの中で果物を冷やしたり足を洗ったりしようとする愉快な日本人が一人でも減りますように。ありがとうございました。