☆三者懇談☆

ガキの頃三者懇談で教師に言われた言葉がある。

『こいつはどうしようもない奴だ、このままではろくな人間にはならない。』

確かに僕はどうしようもない奴だった。
勉強はしなかったし、見たいテレビがあると言って授業の途中に家に帰ったりもした。先生にたてついてばかりいた。

僕は不良ではなかったけれど、教師達は並の不良よりも僕のことが気に入らなかった。たちの悪い生徒だった。

僕と教師達との会話はいつも押し問答になった。
『なぜ、学校にこない。』
『学校で勉強する意味が分からない。別になりたい物もないし、勉強する気が起こらない。』
『みんな勉強をしている、勉強していないのはおまえだけだ。』
『目標もなく勉強するバカが多いだけ。』
『バカはおまえだ!!!!』

結論なんて出てこなかったし、僕の真意を汲み取って教授してくれるような本当の先生にも出会えなかった。僕は孤独で、いろんな悩みを抱え込みながら助けを求めていたのだけど。

そんなこんなで三者懇談となると教師達はここぞとばかりに僕を責め立てた。親の前でならたてつく事もないだろうといった考えからだった。

そして三者懇談の日、担任の教師が文頭の言葉を口にした。

『こいつはどうしようもない奴だ、このままではろくな人間にはならない。』

しばし沈黙............。

『どうしようもないのは、あなただ。僕はあなたのことを信じられないし。何も話したいとは思わない。』と僕が言った。

教師は『ほらね』と言った顔をして、母親の方に目をやっている。
母親は黙っている。

教師はすこし怪訝な顔をして、時計を気にしながらこれで終わりにしようと言った。
ベルトコンベアーの流れ作業のように僕達は出て行き、そして次の親子が入ってくる。

教室から笑い声が聞こえる。僕の後ろの出席番号は優等生だ。

僕は学校の教師が嫌いになった。

それから10年後、いろいろな事が重なって僕は教師の立場になった。
気がつけば嫌いなはずの教師の立場に自分がなっていた。おかしなものだ。

初めて教室に入り生徒達の前で僕は話し始めた。

『僕は先生が嫌いです。だから、僕は先生になりました。』
2004年12月29日(水)

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