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- 2006年08月16日(水) ∨前の日記--∧次の日記
- 8・15靖国、小泉首相公式参拝

小泉首相が、昨日8月15日の終戦記念日に靖国神社を公式参拝した。
中韓関係、A級戦犯の分祀など、様々な問題がある中の強行参拝であった。



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■外交問題としての「靖国問題」




参拝後、中国政府と韓国政府は予想通りの声明を出した。

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《中国政府》
「日本軍国主義による侵略戦争の被害国人民の感情を深く傷つけ、
 中日関係の政治的基礎を破壊する行為に強く抗議する」
《韓国政府》
「日本の首相が、8月15日に過去の日本の軍国主義と侵略主義の象徴である靖国神社を
 参拝したことに深い失望と怒りを感じる。国際社会が重ねて伝えてきた憂慮と反対の声にも
 かかわらず、国粋主義的な姿勢で靖国神社を参拝したことで、韓日関係をぎくしゃくさせ、
 北東アジアの友好協力関係を損なってきた点を厳重に指摘する」
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このような中国と韓国に対し、「日本国内の問題。内政干渉するな」という意見と、
「アジアでの政治的・経済的安定を構築する上で日中韓の協力体制を重視するならば、
 外交的判断として首相・閣僚の公式参拝は辞めるべき」
という両方の意見がある。

しかし、これはいわゆる「靖国問題」の中の一つの側面に過ぎない。

中韓の抗議が始まったのが、85年に中曽根康弘が首相として初めて公式参拝を表明してからである。
「内政干渉だ」という主張は正論だが、一国の首相が公人として過去の諸外国の歴史的問題にふれる
行為をする以上、一概に内政問題ともいえない。小泉首相が「参拝は『こころ』の問題」と語るのと
同様に、中韓にとっても「こころ」の問題だ。私が中韓の国民だったら彼等と同様の抗議をするかも
しれないとさえ思う。国民感情の問題だ。だから中韓の抗議内容の正当性を議論しても仕方ない。
小泉首相が中韓の反応を知ってて参拝している以上、その外交的意図を論じるべき。
「外交問題としての靖国」は「靖国問題」の一部であり、これだけで論じられる問題ではない。




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■そもそも「靖国神社」とは何なのか?




(↓Wikipedia「靖国神社」より)
靖国神社とは、近代以降の日本が関係した国内外の事変・戦争において、朝廷側及び
日本政府側で戦役に付し、戦没した軍人・軍属等を、顕彰・崇敬等の目的で祭神として祀る神社。


幕末の坂本龍馬なども祀られるこの神社は、かつて国によって運営され「国家神道の象徴」であった。
しかし戦後は憲法20条に基づいた政教分離政策に基づき宗教法人化して、日本政府との関係はないと
されているが、上記の「首相の公式参拝問題」や、1969年〜74年にかけて、靖国神社を国家管理に
戻そうとする「靖国神社法案」問題など、政教分離の原則に反する動きも見られてきた。

ワタシはまず、靖国神社の在り方そのものに問題があると思っている。欧米の一部から
「Military shrine(軍事神社)」と呼ばれても仕方ない独自の歴史観を明らかにしている。
太平洋戦争は正当なものだとし、東京裁判(極東国際軍事裁判)は国際法に反した不当なものとする
歴史観である。神社敷地内施設の展示物には、戦争美化と捉えられても仕方がないものがあるという。

もし靖国神社が、戦死者の英霊を祀って世界平和のメッセージを発信する場所として
日本の首相が参拝する場所でありたいならば、神社は上記の歴史観を語ってはいけないと思う。
ただの国立慰霊施設として黙ってそこに存在していればよいのだ。そして日本の現首相は、
靖国神社が前述のような歴史観を有する施設である以上、公人として参拝してはいけないと思う。




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いわゆる「靖国問題」に関して、
ワタシが疑問なのは次の2点。


1.なぜ靖国神社はA級戦犯を分祀しないのか?

2.なぜ小泉首相は頑なに公式参拝しようとするのか?





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1.なぜ靖国神社はA級戦犯を分祀しないのか?




政府要人の公式参拝に関して、中韓の反発も国内の反発も、そして天皇の不参拝理由も、
すべては靖国神社にA級戦犯が合祀されているからである。
「即分祀すりゃいいじゃん!」とワタシはずっと思っていたのだが、前述した靖国神社の
歴史観からすれば、「あ〜これはなかなか分祀出来ないわ〜」と思ってしまった。


8月8日のTBSのニュースで、靖国神社の幹部が語った「分祀できない理由」。
「分祀すべき問題を誰がどうやって選ぶのか、ということだと思います。
 もし(合祀対象として)東京裁判のいわゆるA級戦犯を認めるならば、
 東京裁判を認めるのかということになります。東京裁判は絶対認められない」

(靖国神社総代 小田村四郎 元拓殖大総長)※記事内より一部抜粋


「ああ、そうか」と思った。そもそも靖国神社は、A級戦犯もそうでない軍人もすべて同一の
太平洋戦争の英霊として合祀したという解釈なのだ。つまり「全英霊から東京裁判のA級戦犯
だけを分祀せよ」という主張をのむならば、「東京裁判自体を認めないと出来ない」というのだ。
靖国神社が東京裁判を認めない立場であることは前述したが、「分祀問題」はそこに繋がってくる。
だがワタシは、神社側が分祀できないと主張するのは、ロジカルな理由よりも、もっと人間的で
宗教的な問題だと思う。あまりはっきりと書けませんが…。

しかし例の「富田メモ」以来、騒がしくなってきた「分祀問題」は、長らく日本が抱えてきた
重要な国内問題であり、同時に外交問題にも影響を与える(分祀して靖国がクリアになっても、
中韓との関係が解決するとは思えませんが…)大事な問題である。政教分離と謳っていながら、
日本が内包している「宗教問題」と同等のような気がする。

中韓北3国と日本が「靖国」に起因して関係を悪化させ、仮に最悪の事態を迎えたならば、それは
中世から現代まで、欧州や中東で行われてきた数々の宗教戦争と大差ないと思う。A級戦犯の英霊は、
中韓北3国にとっては「邪神」と同等だろう。それを国の要人が参拝するのは、国の悪魔信仰に映る
かもしれない。このような問題は幾ら我々日本人が「それはおかしい!行き過ぎだ!」と指摘しても
解決しない。それが宗教的な問題に等しいという理由だ。「靖国問題」は、自国内から見ても他国
から見ても理解を得られるような解決
を導くべき。前述したように靖国神社の在り方が問われている。





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2.なぜ小泉首相は頑なに公式参拝しようとするのか?





「公的とか私的とか私はこだわりません。総理大臣である小泉純一郎が心をこめて参拝した」

というコメントだけで解釈すると、小泉純一郎はなんて独善的な人間なのかと思ったりする。
小泉個人が「参拝したい」と思う「心」には、なんの異論もない。好きにすればいいと思う。
しかし、内閣総理大臣という肩書きは小泉だけのものではない。首相の意思決定は国民の意志
でなければならない。だから上記の「公的私的こだわらず」というコメントには拒否感がある。
「そこはこだわれよ!」と云いたい。こだわった上で確信犯で国内外の政策の一つとして
参拝しているなら、政策としての「首相の靖国参拝」の是非を論じればいいのだが、その前に
「公人私人」にこだわってくれないのは、首相としてあまりに自分勝手で無責任過ぎると思う。



さて、小泉純一郎個人のこだわりはともかく、
首相参拝にこだわっているとして、どうして頑なに参拝しようとするのかを考えてみる。



(1)国内の政治的理由


小泉首相に限った話ではないが、過去に何人もの自民党総裁が公式参拝を繰り返している
のは、自民党の集票組織として後ろ盾となっている日本遺族会の影響があるという。
日本遺族会と自民党遺家族議員協議会によって69年に「靖国神社法案」が提出された。
これは前述した靖国神社の国家管理を可能とする法案である。しかし74年に廃案となる。
75年の三木首相の時に、政府要人の公式参拝を含む「慰霊表敬法案」が出されたが、これも
廃案となる。日本遺族会への配慮を踏まえて三木首相が8月15日に「私人参拝」を行った。
この時初めて「公的参拝・私的参拝」という言葉が出来たと云われている。これ以後、
法案化に失敗した自民党に対して日本遺族会は継続的な閣僚参拝を求めた。自民党は参拝の
合憲性を主張しながら、日本遺族会に配慮して時の閣僚たちが参拝に踏み切っていく。

78年の福田内閣の時、この度総裁選に立候補する安倍晋三の父・安倍晋太郎官房長官が、
靖国参拝に関する政府統一見解を出した。閣僚の参拝も私人参拝として合憲だとする見解だ。


さらに、80年、82年と鈴木首相が参拝。84年には自民党が公式参拝合憲を討議決定。
そして85年に中曽根康弘が8月15日に首相として公式参拝に踏み切った。これ以後、
77年のA級戦犯合祀の事実公表と合わせて中韓からの抗議が始まる。国内でも司法判断の
議論が活発化して以後の首相は公式参拝を見合わせて来たが、96年7月27日に橋本龍太郎が
首相として11年ぶりに公式参拝を行い、そして01年8月13日に小泉首相が公式参拝をする。
以後、毎年公式参拝を欠かさず、中韓との外交問題に発展。小泉首相が昨年の総選挙時に
「来年9月退陣」と語ったのは、昨日の8・15公式参拝の公約を果たすためであったのだろう。

このように以前から自民党は、「靖国法案提出」→「閣僚の私的参拝」→「首相の公式参拝」
という流れで、靖国神社との関わりを日本遺族会へアピールしてきたのだ。首相就任当初、
派閥という大きな基盤を持たなかった小泉首相は、自民党の大集票団体である日本遺族会を
無視するわけにはいかず、「8月15日公式参拝」を公約にブチ上げるなど、最大限にアピール
しなければならなかった理由は、こうした背景がベースとして存在する。





(2)外交的理由


前述したように小泉首相は、靖国公式参拝による中韓の反応は分かり切っていながら、
参拝を強行している。単に日本遺族会へ配慮するだけの理由と、近隣諸国との良好な関係維持
という外交問題との事の軽重を鑑みれば、意志表明や行動の仕方はもっと方法があると思う。
さらには、小泉個人のこだわりだけで、ここまで強行していると考えるのも不自然だ。
やはり外交的に確信犯的な理由がある。それは中韓と日米関係というパワーバランスだ。
それに関しては、国際情勢解説者・田中宇氏のブログ「田中宇の国際ニュース解説」
「短かった日中対話の春」という記事を読んでみてほしい。
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 【田中 宇(たなか さかい)氏】
 共同通信社を経て97年マイクロソフト入社。「MSNジャーナル」を立ち上げて
 ネットジャーナリズムの流れを創り上げた一人。00年〜01年までハーバード大へ遊学。
 現在はフリーの国際ジャーナリストとして活躍。多数の著書を出版。
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なぜに中国は抗議して、なぜに小泉首相は公式参拝にこだわるのか?…という理由について、
一つの見方を提示している。とりわけ日中のパワーバランスについての話や、同じ敗戦国
であるドイツと比較した日本外交の話は、詳細に読みとれて面白い記事だと思う。

上記記事によれば、超親米外交を続ける小泉内閣にとって、「靖国公式参拝」は一見
対米政策とは無関係な話かと思いきや、実はアメリカを意識した外交策の一つであった、
ということだが、うーん、そこまで深読みしていいものなのか…という疑問もある。

でも確かに、日米同盟があるからこそ「靖国参拝強行」という対中韓への態度なのだろう。
経済協力は惜しまず行いながらも、中華圏側には組みさないという明確な一線を引いている。
「靖国」は中韓に外交カードを与えているのではなく、日本が自ら切っているという見方だ。

しかし、ワタシはこの深読みをあまり信じたくはない。




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■とにかく、今のままではダメ。




仮に、日米同盟のための外交カードとして日本が「靖国」利用しているのであれば、それは
出来る事なら「靖国」以外のカードで行ってほしいと思う。外交カードにしてはダメ。
また、中韓への影響を問う議論は、この解決は単に「靖国」だけの問題ではないと思うので、
この理由のためだけに公式参拝の是非を議論することはナンセンスと思う。もっとトータルな判断だ。

ワタシが問題にするのは、首相参拝による国としての世界に対する戦争認識態度である。
そもそも靖国神社の歴史観はワタシ個人は非常に気持ちが悪い。しかしそれは、政教分離を前提
に100歩譲ってヨシとして、その施設に太平洋戦争で戦没した軍人が祀られていることもヨシとして、
それを閣僚が戦没者哀悼の目的で私的参拝することもヨシとする。しかし、A級戦犯も祀られた
戦争美化施設
に国の代表が公式参拝するのは、どう考えても国の態度としてマズい。

「A級戦犯の分祀」と「閣僚公式参拝中止」、この二つは絶対に必要と考える。
これならば日本国内はもちろん、世界各国から見ても、飲めないところもあるけど基本的には理解を
得られるカタチなのではと思う。中韓は当然、靖国そのものがある限り揚げ足をとってくるだろうが、
国際世論的に理解を得られる反論が出来るので痛くも痒くもない。そもそも議題に上がらなくなる。
この話を飲めない団体は、自民党内の参拝推進派もいるだろうが、そもそもは日本遺族会との関係で
仕方ない面もある。本質的に反対なのは、靖国神社と日本遺族会、そして右翼だけかもしれない。





※書かれた内容については、不勉強・認識不足の部分も多々ありますので、
至らぬ箇所についてはご指摘ください。


060816
taichi

...
    

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