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- 2006年02月25日(土) ∨前の日記--∧次の日記
- 荒川、獲るべくして獲った金メダル!(イラスト付)




昨日は溜まりに溜まった我慢が一気に放出して、日本中が恍惚状態!!
トリノ五輪・フィギュア女子シングルの荒川静香の金メダルは、これ以上ない感動を与えてくれた。



しかし、一人のアスリートにこれほど驚かされたのは久々であった。

何が驚いたかというと、



1.メダルゼロという流れの中で勝ち取ったメダル。
2.しかもそれが金メダル。
3.日本フィギュアスケート初の金メダル。
4.アジア人初のフィギュアスケート金メダル。
5.冬季五輪で世界中から最も注目を集める種目での金メダル。



…と、ここまでは日本中の誰もが驚いたことであり、
改めて言及する程のことでもない。個人的にはここからである。


6.ハラは荒川静香を少々みくびっていた。

7.本当の意味で評価される金メダルであること。

8.運命的選曲「トゥーランドット」。







この3つには本当に参りました。








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6.私は、荒川静香をみくびっていた。








実は、今回のフィギュア三人娘にはほとんど注目していなかったのだ。
特に、荒川静香に限って云えばほとんど知らなかったのである。いや正確に云えば、
私の地元で行われた長野五輪の時の印象しかない。当時16歳の荒川静香は、
線が細くあか抜けない感じの少女で、どこか頼りなく大丈夫か?という感じ。
そして、それ以降8年間の荒川の動向は殆ど知らなかったに等しい。

ハラは今回のトリノ五輪、真面目に観戦したのは、上村愛子のモーグルともう一つ、
後日記事をアップ予定だが、初戦からずっと見てしまったカーリングだけである。

しかし先日、たまたまテレビをつけたら女子フィギュアSPの中継が映った。
画面に現れたリンクに立つ荒川静香の姿を見て、まず第一の驚きを喰らった。


「きれーじゃねーかよ!!しかもこのスキのない感じは何だ?!」



リンクの一点を見つめる彼女の顔は凛とした存在感を放っていた。
まるで、この選手を知らなかったことがとても恥ずかしい事のような感覚を感じた。

さらに、落ち着き払ったスケーティングを目の当たりにして2回目の驚きを感じつつ、
SP後の荒川のインタビューを聞いた後に、私は彼女に完璧たたきのめされた笑。


「最初のジャンプをしている時、
 空中で3回転を2回転に変えようと思いました。」




この声を聞いて一瞬で感じた。日本人アスリートの誰かに似ている?!
そうだ、イチローに似ている。清水宏保にも似ているかもしれない。
何を感じたかというと「芯の強さ」である。何かを達観している。
さらには、その時初めて「クール・ビューティー」と評される彼女の笑顔と性格を知った。
彼女を完全にみくびっていた自分を嗤わざるを得なかった。

「彼女は銅なら普通に獲れる。メダルを期待された今回の他の日本選手とはレベルが違う…」

正直そう思った。
結果が出た今となっては、このような話は幾らでも云えるのだが、
実際にその時そう予感した。






「レベルが違う」とは、彼女の場合は何が違ったのか?

技術だけなら世界レベルの選手は日本人でも沢山いる。彼女の技術も世界レベルだが、
それ以上に荒川はメンタル面が世界レベルだったのだ。メダルを獲る人に共通の資質である。

事後に色々な話を聞いたが、彼女は人と競う事が嫌いだったそうだ。
そのため、幼い頃から「天才」と呼ばれていたものの、ヤル気になった時しか結果を出せない。
彼女をコーチする人間にとって一番の課題は「やる気にさせること」だった。

04年の世界選手権で優勝後、周囲に無理に現役続行させられた結果、
05年の世界選手権は8位に惨敗。しかしここで再び彼女のやる気に火がつく。
新たな目標は「新採点基準で勝つ事」だった。04年の優勝は「旧採点基準」のもの。
05年以降採用された基準では、自分の技を評価してもらえなくなったのだ。

「このまま終われない。イチからやり直して、認めてもらわねば…」

彼女はハナから他のライバルと競い合うことが目的ではなく、
自分がやりたい演技をした上で、それを認めさせることが重要だった。

ショートプログラムが終わって、1位はコーエン、2位はスルツカヤ。
3位の荒川も十分に金メダル圏内。この時、荒川は自分に言い聞かせた。

「メダルは別にどうでもいい」


この時点ですでに荒川は、精神面でライバル二人に勝っていたのだろう。







世界選手権など、金メダルを獲得してきたスルツカヤが、
唯一手にしていないのが五輪の金メダル。喉から手が出るほど欲しくて仕方がない。

一方のコーエンはどうか。
ある特番で解説をやっていた元世界女王の佐藤有香氏が、
「コーエンの弱点はメンタル面。試合では必ずポカをやっている」と指摘していた。
事実コーエンは、SP1位が決まった夜は興奮して眠れず、翌日の練習を休んだとのこと。

2人とも、SPで僅差の1位2位となって、強烈に金メダルを意識していた。
その中で、僅差の3位で金メダルが見えていたはずの荒川静香は、前述したように
自分自身をコントロールしていた。



「SP終わって一瞬『メダルが欲しい』と思いそうになりました。でも、すぐに止めました。
 人間、何かを欲しがった時って、自分らしさを見失うもの。私は自分らしい演技を
 することが大事なので、メダルは欲しくないって思ってました。」



なんだろうかこの達観ぶりは。
五輪に来て「メダル欲しくない」って云い聞かせるメダル候補が他にいただろうか?
SPが終わった次の日でも、荒川は練習でもリラックスしていて、
練習以外の時間でも普通にショッピングなどをして楽しんでいたという。






実際のフリーの演技は、結果を知った後に昨夜じっくりと録画で見た。
結果を知った後なので、主観が混じりながらの観戦記となるものの、
素人目にこれほど明らかに、3人の違いが出ていたとは思わなかった。

まずはサーシャ・コーエン。
リンクに出て来て後、アップにされたその表情を見てびっくりした。
獲物を狙うコアクマな顔つきをしていたSPとは全然違う表情。
微妙に目が泳ぎ口元が固い。滑り出してみてもSPで見た弾けるような動きではない。
そして転倒…。

この次の演者は荒川。
しかし荒川はコーエンの演技も転倒シーンも見ていなかったという。
それどころかヘッドホンをして、他者の演奏音楽も歓声も聞いていなかった
まさに彼女は、他者とメダルを「競い合うこと」には興味がないというわけだ。。
この後の荒川の演技はご存知の通り。

SP/66.02点、そしてフリー/125.32点、いずれも荒川のパーソナルベスト
合計点/191.34点という得点は、最終演者のスルツカヤに相当な重圧を与えた。

そして最後にリンクに登場したスルツカヤだったが、何故か中々演技の準備に入らない。
たとえナマで観ていたとしても通常の精神状態でないことが分かっただろう。
そして、彼女もまさかの転倒。この時点で荒川の金メダルはほぼ決まった。

金メダルが決定した後、荒川静香はずっと笑顔だった。
メダルを獲ろうものならばお涙頂戴の日本人選手が多い中、彼女は最高の笑顔で祝福に応えていた。
彼女はメダルを獲ったこと以上に、納得のいく滑りが出来たことが嬉しくて、
それを世界中に認められ、その滑りに皆が喜んでくれたことが何よりも満足だったのだろう。





「メダル!メダル!」と騒ぎ続けてきた我々日本人。
競い合うことが嫌いな彼女が勝ち取った金メダル。そのメダルが大事なことを教えてくれた。
それが何なのか?マスコミをはじめ皆分かっているのだろうか。


いやー久々に一人のアスリートに魅せられた。降参しました。







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7.本当の意味で評価される金メダルであること。






05年から新しく採用された採点システムは、ジャンプやスパイラルやスピンなど、
スケーティングのあらゆる技術を点数化して、加点方式で採点される。
そのため、一部選手や関係者からこんな意見がある。


「アレをやったら何点ゲット、コレをやったら何点追加…みたいな、
 フィギュア演技が点数を獲るためのパズルゲームに陥ってしまう」



メダルを獲るためには、点数の出る技ばかりを集めてそれをクリアすればいいのだ。しかし、
荒川静香の金メダルは、そういう小手先のテクニックで獲ったメダルではない。
荒川は新採点システムに対して、上記のような疑問を持っていたのだ。
彼女は「自分が美しいと思うものを演技したい」と主張した結果、
採点対象ではない…つまりメダルのためにはやっても無意味な技をフリー演技に加えた。



それが、今や彼女の代名詞となった、
イナ・バウアーという冒頭のイラストの技である。





荒川のイナ・バウアーは「世界一美しい」といわれる優雅なもの。
これをやらずにメダルをもらっても彼女には意味が無いのだ。
機械的でシステマチックになった採点システムを嗤うが如く、
荒川静香は笑みを湛えながらイナ・バウアーを演じた。(もう2〜3秒やってほしかったが…)


そして、審判は観念したかのように、
誰よりも高い技術点と演技点を荒川に与えたのだった。

荒川静香の金メダルと、オペラのような荘厳な演技が、
フィギュアの本質とは何かと改めて問い直した。








******************************************





8.運命的選曲「トゥーランドット」。








というわけで、荒川静香には完璧に打ちのめされたわけですが、
それに加えて、あまりにも出来すぎなこんな話もあります。

しかしながら何故か金メダリストには、いつでもドラマがあるものだ。






1ヶ月前に急遽変更した演技曲は、プッチーニ作曲の『トゥーランドット』。
これは04年の世界選手権で優勝した時の演技曲だったらしいが、
なんと偶然にもその曲を、あのハヴァロッティがトリノ五輪の開会式で歌ったのだ。
しかも、その曲の歌詞の内容を聞くともっとビックリする。



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氷のような冷たい心をもった姫が、王子によって心を開いていく物語。
最終幕では、姫が「今夜は寝てはならぬ!」と住民に告げ、
王子が「夜明けに私は勝つのだ」と宣言するシーンがある。
最後に王子は姫にキスをして、姫の冷たい心が解けていくストーリー。
================================




云わなくても分かりますよね?
「氷の微笑」「クール・ビューティー」といわれる荒川が
金メダルをとるためのストーリーそのままではないか。
これには荒川も「運命を感じます」とコメント。

ちなみに、今回のフィギュアの実況を担当したのはNHKの刈屋アナウンサー。
この人、実は2年前のアテネ五輪で体操団体の金メダルの瞬間に
「月面が描く放物線は、栄光への架け橋だ」と名実況した人。
荒川の金メダル決定の瞬間に、「トリノの女神は荒川静香にキスをしました」とこれまた名実況。



しかし、「トゥーランドット」の歌詞を読むにつけ、
「トリノの女神」というのなら、「トリノの王子」にすべきであった笑。





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もう本当にハッピーな金メダルであった。
荒川選手、本当におめでとうございます。
あと日本の皆さん、本当によかったね。(→って俺はどこの人よ笑)


さ、あとはアルペンの佐々木明だけか!
最後につづけよー!!



060225
taichi
...
    

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