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- 2005年11月02日(水)
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- 地下鉄ホームのみんなで救出しましたよ!
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めったにありえない光景に遭遇しました。
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それは先週の金曜日、東京メトロ有楽町線の池袋駅、終電間近の地下ホームにて。
山手線の地上ホームから階段を下りて、東京メトロの改札を抜ける。 地下ホームへの階段を下りていく途中、すれ違う人の声を聞いた。
「人身事故だ!電車が止まってる!」
(おいおい…どこの駅だよ、金曜終電間近の酔っぱらいだな…)
即座にタクシーという選択肢がよぎりつつも、とりあえずホームに降りた。 ホームには、ほろ酔い気分のオッさんや、疲れ果てたサラリーマンたち、 宴会あとのテンション高い学生たちが入り交じってごった返している。 その向こうには電車が止まっているのが見えた。
(このまま止まったままかな?、長引きそうだからタクシーにするかな…)
微動だにしない車両を見ながら最初はそんな事を思っていたが、 次第に妙な違和感を感じ始めた。何かがおかしい…。
(なんだろう、この普通と違う不穏な感じは?)
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まるで間違い探しをしているかのような視線で、 騒然としたホームの光景をじっくりと見回した。 もう一度止まっている電車に目を向けた時、 は っ と し た 。
電車の先頭車両が、ホームの途中に見えたのである。さらには、
その電車は扉が閉まったままで、中に人が乗ったままなのだ。
(うわーーーーー、ヤバいんじゃん!!!)
この光景を見ている間、駅からのアナウンスは一度も無かったが、 止まっている電車の姿が、事の重大さを物語っていた。
人身事故は、 たった今目の前で、起きたばかりだった。
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よく見ると、ホームにいる人達の表情も、他の駅の事故であったなら 怪訝そうな顔をしているはずだが(それが人間というものだ)、 そうではなく、驚いたような、不安なような、中途半端な顔つきであった。 ふと、女の人の叫び声が聞こえた。先頭車両の方からだった。
(え!オイ!どうなったの?!)
そしてもう一度、女の人の声が聞こえた。今度はしっかりと聞こえた。 叫び声には違いないが、『せーの!』という掛け声であった。
最初は意味が分からなかったが、次第に人々が車両の方へと集まって行く。 車両の中にいる人達は、窓越しに不安げな顔で外の光景を見ている。 そして、車両の傍に集まった人達が、車両を押し始めたのだ。
(なんだそりゃー!、あ、ありえねーーー!!!)
あまりのありえない光景に驚いたと同時に、反射的にハラも 車両の傍へ行って車体を押していた。
「せーーーーの!!」
二度三度と掛け声がかかり、ホームのみんなで車両を斜めに傾けた。
最終的には確認出来なかったので想像ではあるが、ホームに入線して来た電車に 誰かが巻き込まれて落ちた後、車輪か何かの間に挟まって動けない状況だと思われた。 掛け声とともに車両を押しながらも、人混みで状況が分からないお客たちは 皆このように思っていただろう…
(こうして電車から救出したところで、その人は助かるのか?、今どんな状態なのか?)
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5〜6回ほど、ホームのみんなで車両を押しただろうか?
いきなり、先頭車両の方から歓声と拍手があがった。
…どうやら、助かったらしい。
(いや〜…よかった、よかった…)
電車内に閉じ込められている人達も、安堵の表情で外を見ていた。
しかし、最初は大きな歓声があがったものの、すぐに萎んでいった。 助かったことは本当によかったものの、そもそもは 酔っぱらい1人の不注意で終電間際の電車を止め、 沿線全駅にて何百万人もの帰宅の足を止めている状況なのだ。
皆その事に気づきすぐに我に返ったのだろう。 歓声は微妙なトーンで収まっていった。
救出後の確認作業が進む中、救出された人がどんな状況かを、 野次馬の一人となって見に行こうとしたが、何せ人だかりの山であった。 結局、状況は分からないまま、止まっていた電車が再び動き出し始め、 正規の位置で停車してドアが開いた。
閉じ込められていた人達が疲れきった表情で降りてくる。 降車してきたお客の中にはホームで待っていた乗客に、状況を確認していた人もいた。
降車客が降りきった後、ハラはその電車に乗った。
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その電車が通常運転に戻り、池袋駅を発車した。
同時に車掌の車内アナウンスが入った。
『え〜(ゼェゼェ…)、ホームの(ゼェゼェ…)、端を歩く(ゼェゼェ…)、 事は、大変(ゼェゼェ…)危険です(ゼェゼェ…)のでお止めください(ゼェゼェ…)」
車掌さん、おつかれさまでした…
051102 taichi
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AIR〜the pulp essay〜_ハラタイチ
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