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- 2005年04月29日(金)
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- JR西日本よ、何を反省すべきか分かってる?
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史上例を見ない鉄道大惨事となったJR福知山線の脱線事故。 この事故に関して様々な記事を見るにつけ、 怒りがこみあげてくる。
それは、安全を度外視した収益優先の企業体質と、 現場に過度の負担と責任をなすりつける管理部門にである。
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■運転士曰く「曲芸的ダイヤ」
事故の起きたJR福知山線と平行して阪急宝塚線が走っている。 この二線は競合路線としてお客を奪い合って来たわけだが、 JRは数年前のダイヤ改正と軽量の新型車両導入により、 宝塚ー大阪間を23分に短縮して差を広げた。阪急電鉄は30分かかる。
しかし、阪急電鉄は、これ以上のスピード競争は避け、安全性などの他の部分での サービスを強化する方針に変更したという。
一方JRはスピードとともに本数も増加させて過密ダイヤを構築し、 これを運転士に強いていたのだ。
事故車両が事故前にめざしていた駅はJR尼崎駅。3路線が交わる主要駅とのこと。 なんとこの駅での停車時間はラッシュ時で15秒しかないらしい。 こんなの、遅れる事を確信犯で組まれたダイヤといってもいい。
このダイヤそのものが、運転士へどれほどの負担をかけていたのだろうか? この疑問は、そのまま安全管理への疑問へとつながる。
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■遅延時の対処は「現場丸投げ」
亡くなった事故車両の高見運転士は、事故地点前の停車駅である伊丹駅で 40mのオーバーランを犯してしまった。バックで戻って停車し直したため、 伊丹駅を約1分半遅れて発車となった。 このミス自体は単純に高見運転士の責任であるが、問題はここからである。
JR西日本では、電車に遅延が生じた場合、制限速度の範囲内で、 運転士が遅れを取り戻す裁量権を認めているとのこと。
さらには、数秒の遅れであっても輸送指令から運転士に無線で 「電車が遅れています。定時運転を心掛けてください」と連絡することがあるという。
事故時の高見運転士には2度、この連絡を入れたらしい。
なんという乱暴で 無責任な管理部門であろうか? 云うなれば、有事対処は現場丸投げなのだ。
過密ダイヤを課している以上、管理部門がするべきことは、 他線乗換主要駅への連絡やダイヤの調整、運転士へのサポートであり、 頻繁に遅れがちであるならばダイヤそのものの見直しである。
遅れてしまった以上、「遅れていますよ」と連絡を入れていること自体、 運転手に対して「なんとかしろ!」というプレッシャーを与えているに等しい。
そして一番の問題は対処の仕方を明文化せず「運転士まかせ」にしていることである。 それはつまり、対処の内容が間違っていた場合、 責任を現場に押し付けられということだ。
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■「限界ブレーキング走行」が 常識だった?
他の運転士曰く、遅延した場合の対処方法としては、 事故地点となった右カーブ手前の直線で、限界まで速度を上げることが、 カーブが多い同路線での遅延挽回の唯一の手段であったらしい。
同路線運転士曰く、遅れ挽回時の 「誰でもやっている裏技」とのこと。
通常なら制限速度120キロの直線を100〜110キロで走り、 快速通過駅の塚口駅を過ぎたあたりからブレーキングを行いカーブ手前170mの地点で、 カーブ内制限速度の70キロになるように減速するらしい。
しかし「裏技」では、直線は限界ギリギリの120キロで走行して、 ブレーキングはカーブ直前限界ギリギリまで我慢して急ブレーキをかけ、 制限速度70キロに減速して右コーナーを通過していくとのこと。
こんな「限界アタック」が 日常茶飯事にならざるを得ないダイヤって、 一体どうなのだろうか?
そもそも、「限界アタック」に チャレンジせざるを得なくさせている 運転士へのプレッシャーってどうなのだろうか?
運転士はレーサーではない。 彼らは限界に挑戦したくてしているのではない。 そうさせているのは、過密ダイヤと懲罰である。
「遅れてしまったものは仕方ない、それ以上遅れないように。 諸処の対処はこちらでするから、運転士は運転に集中するように」 このような姿勢を管理部が示しさえすれば、運転士は無茶をしなくていいのだ。
または、しっかり限界アタック範囲を定めてあげること。 「直線は115キロまで、ブレーキングはこの範囲内で」とする。 それで遅れる分は仕方がないので、管理部門で対処をする…などと決めればよい。
とにかく、 ノルマを高くするだけ高くして、 あとは現場マル投げなのだ。 体育会系中小企業じゃあるまいし、大勢の客の命を預かる仕事なのに このような管理部門の運営には許しがたいものがある。
かくして、1分半の遅延ミスを犯した時点で、事故へとつながる 重圧デフレスパイラルは始まっていた。
高見運転士はわずかな直線区間でなんと1分も時間短縮して走行したという。 一体何キロ出していたのか?そして、問題の右カーブ直前では 制限速度時速70キロのところ、時速108キロ出ていたという。 減速しきれずに車体が浮き、前代未聞の「転覆脱線」となった。
これはもう、高見運転士の運転スキルの問題だけではない。
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■秒単位で厳重管理、 遅延常習者は「強制労働」
ノルマが過酷な定時厳守・業績主義であるならば、 管理体制や罰則体制も同様である。
遅れて当たり前な過密ダイヤであるならば、遅れた場合に ある程度の寛容な評価で受け止めてもらえればよいのだが、そうではない。 運転への集中をも妨げかねない厳重な管理体制と、 遅延ミスを犯した運転士への過酷な罰則が控えている。
前述した、遅延運転中の頻繁な「遅延アナウンス」もそうだが、 主要駅では秒単位での管理を行っているという。 事故車両が向かっていたJR尼崎駅では、運転士に1秒単位で 遅れを報告させているらしい。
同社の労組幹部は 「1秒単位で報告させるなんて、運転士に運転をあせらせる 無用のプレッシャーをかけるだけだ」と批判している。
さらには、「日勤教育」とよばれる懲罰があるらしい。 草むしりや窓ふき、ペンキ塗りなどの労働を課せられ、 1日に数本のレポートを書いて提出するらしい。 日勤教育期間中は10万ほど収入がダウンして、 期間の終了は監督者の裁量に任せられていつ終わるか分からないという。 過去には自殺者も出た事があるとのこと。
事故を起こした高見運転士は、事故前の伊丹駅で犯したオーバーランを 「なかったことにしてくれ」と車掌に頼んだらしい。 それを受け、車掌は約40mの停止位置超過を8mと報告していた。 高見運転士は同様の停止位置超過などで過去に3回処分されており、 厳しい罰則を恐れていた様子がこのいきさつで見て取れる。 2路線乗換の主要駅である尼崎駅で、何としても遅れを帳消しにしたいと 思っていただろう。どのような心理状態に陥っていたか想像がつく。
厳し過ぎるノルマと罰則を現場に与える事は、 現場に対して「誰のため、何のために働いているのか」 という意識を見失わせる事になる。
世界中でこの事故が取り上げられて報道されているが、 特に驚きを与えているのが、秒単位の管理と自殺者を出す程の罰則であった。 世界では5分ぐらいの遅れは、遅れのうちに入らないらしい。 日本人の国民性が秒単位の定時運行と過度の管理体制をさせている とも云える訳だが、死なせてしまっては意味がない。
JRが世界に自慢していた「定時運行」は何のためなのか?
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■またしても出ました、責任転嫁
一企業が大事件や大惨事を起こした時、その緊急時の対応に その企業の本音を見て取れるものだ。
JR西日本は、事故の原因を問われ、ろくに調べもしないうちに、 「置き石の可能性がある!」などと云いやがった。
なんと腹立たしい事だろうか?
たとえ最終的に「置き石」だったとしてもだ、 もっと被害者の感情を考えてコメントしろと云いたい。 「置き石だ!」とJRが主張することは、あたかも、 「ウチの責任じゃない!ウチも被害者なんだ!」 と云っているように、被害者の方に聞こえても仕方がないはずだ。 もう感情の逆なでもいいとこである。
まずは、身内に必ず原因が有るはずだから、徹底的に究明することを 云うべきであって、外因的なことを当事者のJRが口にしてはいけない。
んでもって結局、置き石なんてとんでもない話で、 実際の原因は身から出た錆なわけだから、どうにもこうにも許せなくなる。
また、JR西日本は、現場の右カーブで脱線の恐れが生じる危険速度は、 「時速133キロ以上」と発表したらしいが、実際はそれより遅い速度でも 脱線の可能性があることが国交省の事故調査委員会の調べで明らかになった。
JRの上記の発表は、事故車両の最高速度は120キロであるとして、 あたかも速度超過が脱線の直接原因ではない とするような主張であった。
しかし調査により、JR発表の数値は、なんと乗客ゼロの想定の上 気象条件を一切加味していない、ただの机上の空論でしかなかったという。 もうアホまる出しとしか云いようがない。
事故当時は満員だった。車体が重い上、カーブに差し掛かれば 乗客ゼロ時より何倍もの遠心力がかかることは 中学生でも感覚で分かる。 さらに急ブレーキで後部車両が浮き気味になり、車輪がグリップを失って いることも加味すれば、JR発表の数値に微塵の意味も無くなる。
「限界速度は時速133キロ」に、前述の「置き石説」を加えた 事故直後のJRが行った責任転嫁な発表には、 怒りを通り越して呆れるばかりだ。
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JR西日本の中枢部の奴らよ、大事なものは何だ? 正確さか?、速さか?、本数か?、そもそもそれは誰のためだ? それとも正直なところはやっぱり「保身」が大事なのか?
「薄氷上での定時運行」の何が自慢なんだ? そんなの業界や株主に対する単なる見栄でしかない。
過密ダイヤというノルマと、重い懲罰の間にある1本のロープの上を、 運転士達は全速力で走らなければならない。
その仕組みの中に、乗客の安全確保という 一番大事な業務をこなせる余裕がどこにあるのか?
現場が見えていない管理部門ほど愚かなものはない。 顧客が見えていない企業ほど本末転倒なものはない。
今回の脱線事故でお亡くなりになられた皆様の ご冥福を心よりお祈り申し上げます。
050429 taichi
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