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- 2005年03月06日(日)
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- 『最後のツーショット』(創作エッセイ&イラスト)
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男の部屋に女がいた。
週末になると、男の部屋に女が遊びに来るのだ。 付き合いだした頃のように、毎週どこかへ出かけるでもなく、 最近は部屋でだらだらと、互いに別々の事をしていた。 良く云えば、落ち着いた付き合いということだろうか?
女はスナック菓子を食べながら、呆とテレビを見ていた。 男は横になりながら雑誌を読んでいる。
画面がCMになった時、女は何気なく視線を泳がせて、 テレビの横にある本棚の一点で止めた。 そして、手を伸ばし一冊のアルバムを取り出した。 表紙を開いて、パラリパラリとめくり出す。 アルバムの中の写真は、殆ど二人の写真であった。
女がアルバムを見ているのに気づいた男は、 雑誌を置いて起き上がり、 テーブルの上へ身を乗り出して一緒に眺めた。
女はおしゃれにこだわりがあって、どの写真を見ても いつシャッターを切られても構わないように、まるで 準備をしていたかのようである。 別に彼女だからというわけでなく、客観的に見ても スタイリッシュな女だと、写真を見ながら男は改めて思った。
「お前さ、どの写真が一番気に入っている?」
男は女に訊いた。
「…え?」
一瞬間を置いて、女は顔を上げた。
「だからさ、どの写真が一番いいかって。」
「一番気に入ってる写真?」
「そうそう、ツーショットでもお前のピン写でもいいけど、 どれがいい?お前の写真、どれもキメキメだけどさ、 その中で選ぶならどれ?ま〜一つ選ぶのも難しいだろうけど…」
女はどれを選ぶだろうか? 海に行った時の写真か?ヒルズの夜景がバックの写真か? 普通に公園でのツーショットか?誕生日にレストランへ 連れて行った時の、とびきりおしゃれなコーデの写真か?
「あたし、これが一番。他はみんな一緒。」
男が全く想像していなかった一枚を、女は選んだ。
「おしゃれな写真は、そこへ行って、きれいな服着て、 二人で並べば、いつでも何枚でも撮れるでしょ?
この一枚は、もう二度と撮れない気がするもん…」
…
男は黙ったまま、
その写真をじっと見つめていた。
050306 taichi
...
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AIR〜the pulp essay〜_ハラタイチ
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