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絵だけ見せろ↓(AIR掲載イラスト集)

犬だけ見せろ↓(AIR掲載の犬系日記集)
- 2003年09月16日(火) ∨前の日記--∧次の日記
- 10年前の俺、現在の俺、10年先の俺。



助手席で犬が舌を出している。

季節はずれの暑さが、エアコンの冷風を押しのけて車内に充満する。
もう今年は寒くなるばかりと油断していた俺と犬は、
環七通りの渋滞を進みながら、かなり参っていた。





9月11日木曜日、午後1時。
俺は犬と一緒にクルマに乗り込み、環七を時計回りに走らせた。

目的地は足立区竹ノ塚のとある店。
そこに、ちょうど10年前、大学時代に創作した俺の作品がある。
その作品の存在を確認し、久しぶりに見たくなったというわけである。






********






俺の作品があるというその店は当時、
インドアの打ちっ放しゴルフショップだった。


ちなみに「インドアの打ちっ放し」と云うのは、
実際にクラブでボールを打つところまでは普通の打ちっ放しと同じである。
違うのは、打った球の行く先を、正面にある画面のビジュアルで確認するところだ。







それはさておき、


そのインドアゴルフショップのシャッターに、俺は絵を描いたわけである。
締めてシャッター4枚分、2m×10mの作品となった。


俺が絵を描く前、そのシャッターは味気ない「業務グレー」色であった。
店の入口が別にあったため、営業中でもそのシャッター4枚は常に降ろされていて、
通りからのビジュアル的には、いつも閉店したままのような印象を醸し出していた。
それを店長が気にして、シャッターに絵でも描きたいと云いだしたらしく、
しかもプロに頼むほど金は無いから、上手い素人に描かせようとしたのだそうだ。


そのショップに当時、俺の友人の「カメ」という奴がバイトをしていた。
店長から相談を受けた「カメ」が、シャッター絵描き候補として無謀にも俺を指名したというわけだ。
俺は、そういう候補が何人もいると思って、ダメモトで提出用の絵を描き、
それを店長に見せたわけだが、なんと一発OK!
しかもすぐに描いてくれと云いだす始末で、「カメ」と二人で顔を見合わせて、
『お前も無謀だけど、お前の店長もかなり無謀だな・・・』と、
か〜な〜り驚いたのを今でも鮮明に覚えている。


てな経緯で、いきなり巨大スペースのキャンバスを与えられた俺は、
ペンキをしこたま買い込んで、ペンキ屋のオヤジに色の混ぜ方や塗り方を教わり、
大学の授業と生活費のためのアルバイトの合間を縫って描いた。


すぐ目の前が細い道路だったのだが、比較的人通りも交通量も多いので、
3ヶ月の間、ず〜っと見せもん晒しもん状態の中、ひたすら描き続けたのだった。


ある時は、絵に面する道沿いにずらっと並んだ幼稚園児7〜8人が、
ペンキを塗る俺に向かってかわるがわるに
『なにかいてんの?』『あかよりきいろがいいよ』『ぼくにもかかせて』
というような質問攻撃を30分ぐらい延々と浴びせてきた時もあった。
またある時は、老夫婦が小一時間、黙ってじ〜っと俺の作業を見ていた時もあった。



こうして、
何度も何度もその店に足を運んで、少しずつ少しずつ描きあげていき、
3ヶ月かけて完成させたのがその絵というわけだ。


t a i c h i 1 9 9 3




今、その絵の写真を見ると、正直かなり幼稚に感じる・・・。


しかし、
俺の創作意欲がマスターベーションの殻を破り、
社会に対して関わったひとつの記録、ひとつの痕
であると思っている。


俺の人生の中の記念碑のひとつ。


それを、先週の木曜日、見に行ったというわけだ。





********





「カメ」からは、
『今は飲み屋か何かになってるけど、まだシャッターの絵は残っていたと思う』
と聞いてはいた。さらに、
『ただ、営業中だとシャッター上がちゃてるから、昼間行った方がいいよ』とも。



ま〜「カメ」の情報だけに、ぬか喜び対策の半信半疑モードでいた・・・
(うそだよカメちゃん)





本当にあるのか?もう無いのでは・・・?
(当然信じてましたよ〜カメちゃん)






********


午後2時を過ぎた。日中で一番暑い時間帯であろう。
クルマのモニターの外気温度は38度と表示されていた。

竹ノ塚付近にさしかかり、環七から細い道へと左折する。





10年ぶりだ・・・。




過去の自分を向き合うようで、
妙な気恥ずかしさと胸騒ぎを感じ始めていた。

おぼろげな記憶をたどり、ゆっくり道を進むと、
突然、はっきりと見覚えのある通りに入った。



『ん?!この通り沿いじゃ・・・』



と思っているうちに、通り過ぎた!
記憶と一致する風景が通り過ぎていった!


引き返し、近くにクルマを停めて歩く。








あった・・・。






(目的の場所・・・現在は中華料理屋/写メール画像)








営業中だった・・・
ああ・・・シ、シャッターが・・・。






飲み屋では無く中華料理屋だった。

食堂だけに、当然昼食時に営業していたと思われ、準備中の札がかかってはいるものの、
すでにシャッターが上がってしまっているのも無理もないだろう。




ああんっ!、でも、絶対この場所なんだけど、
シャッターを見ないことには信じられない!








・・・というわけで、

店に怒られても不審者に思われても職務質問されてもいいので、
4枚のシャッターのうち、
勝手に1枚だけ下げてみることにしました。






(シャッターを下げて見えた『T.HARA』のサイン/写メール画像)






ああ、間違いない、俺の絵だ・・・(感涙)。







ほんの一瞬だが、10年前の俺と再会した気持だ。
10年前の、やる気満々な俺・・・。






そして、その俺に、報告をした・・・



『10月から新しい道を進むことになりました』









********










その日の朝、

9月11日木曜日、午前9時30分。

俺の新しい会社が決まったのだ。








8年間、不動産広告を中心に扱う代理店に勤めてきた。

不動産広告という、あまりに制約の多い広告創作に不満を感じ、
表現から媒体手法まで、広告そのものの力を試せる異業種を求めていた。
もしくは、営業よりももっと表現立案に近い位置で仕事ができる異職種を求めていた。

転職活動の末、最後に残った内内定済みの2社は、
上記の仕事内容のA社と、もう1社、
不動産に特化した販促コンサルティングを売り物としたB社であった。



キャリアは薄いが、昔からやりたかったクリエイティブ業のA社と
キャリアを活かし、時間と金銭のマネジメントが出来るB社。





進路を決定し、結論を両社に連絡をする約束だった。

その日の朝までに。




33歳ーーー。

選んだ道が、おそらく、
10年先でも確実に歩んでいるだろう道。

人生の選択。












選んだのは、B社。







A社・・・、クリエイティブ、広告、やりたいことだった。

しかし、違う業種の違う職種の未知の仕事であり、時間が不規則な仕事であり、
給料も、成績に関係なくブラックボックスの中から出てくる予測のつかないものであり、
不安定極まりない。

チャレンジといっても、もう33なのである。
最後の転職チャンス、つぶしが効かない年齢。

それに、やりがいへのチャレンジといえば、仕事以外で俺は、
女と犬と車と家を1匹ずつ飼っているのだ笑(家は借り物ですが・・・)
こいつらがそれぞれ、超〜手〜ごわ〜い。
女はじゃじゃ馬だし犬はナマイキだし車はジコるし燃費悪いし家は月々高いし・・・

はっきりいって、
この4つの難問を解いていかなければいけないこと自体が、
すでに俺のチャレンジなのだ。

だからもう仕事にまで、
やりがいへのチャレンジとかいらない。



俺にとって、
この難問を解くためのサポートとして仕事がある、そういう考えに変わった。
「成るように成るしかないさぁ」とかなんて云ってられない。
だから、見通しがきく安定した方を選んだ。3年先、いや10年先の自分を見据えた選択。

それが、B社という選択。






B社でも、全くクリエイティブとか広告とかに縁がないわけではない。
今後もたずさわる機会は十分ある。


しかし、クリエイティブを夢見てきた俺は、この決断で、
「不動産販促のコンサルタント」としての人生がほぼ決定した。





33歳の人生の選択。

正しい選択だと思っている。











********












そう、なぜにその日の午後になり、


シャッターの絵を見に行きたいと思ったのか・・・?





自分でも不思議だった。
突然そういう衝動になったからだ。






だが、見に行って分かった。









10年前の自分に向かって、

今の自分を報告し、けじめをつけて、

新たなスタートをきろうとしたのだと・・・。










次の10年に向けて、新たな俺、充電中、

10月、リスタート予定!







t a i c h i 's w o r k 1 9 9 3 (BAMBOO GOLF STUDIO 10m×2m)





030916
t a i c h i




...
    

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