☆天使の姿がくるくる回りながら光の色を変える(見辛いかも知れませんが) オルゴール。 急な坂の上の長屋で小学生時代を送った。長屋の裏側は何故か絶壁であり、トイレ に入れば、下の住人が用を足す音が全部聞こえ、冬ともなれば凍ったうん○を棒で・・・ (以下自粛)。 それでも50mと離れていない友達の家は一軒家でピアノがあった。ぼっとん便所で ある事に違いは無かったけれど。 その頃の私の宝物は赤いオルゴールだった。開くとマドンナの宝石と言う、美しい が、微妙にマイナーな曲を奏でてくれる。いつから手元にあるのか判らなかったが、 私は それを両親が、女の子の私に買い与えてくれた物だと思い込んでいた。 2歳違いの弟は泣き虫でチビだったので、夫婦喧嘩をしても母は弟だけ連れて出て 行くし(買い物にだが)ミシンの内職を納品しに行く時なども弟だけ連れて行く。 冬の日、それを見送る頼り無さを今も憶えている。父は事業を始めたばかりで子供 が起きている時刻に、家には殆んど帰って来なかった。 言って見ればちょっと寂しい子供だった私は、オルゴールを良く聴いた。そして それを 両親が、女の子の自分に買ってくれた物だと信じたかったんだろう。 そして何時か 娘が生まれたらお祝いに自分もオルゴールを買ってやりたいと思う ようになった。 つい先日の事だ。「あの赤いオルゴールさあ・・・」と何を思ったか私は、突然 思い出して母に話し掛けていた。 「え?あれ、あんたが持ってたの?」 「え??あれ、私んじゃないの?」 つまりはこう言う事だった。 昔むか〜し、母と父の結婚は周囲の反対に遭っていた。母は2つ年上で父はまだ20歳 を過ぎたばかり。 最初は頑張っていた母も次第に自信がなくなり、父に別れ話を持ち出した。 父も仕方無いと母に贈り物を一つして別れる決心をした。それが赤いオルゴール だったと言うのだ。 つまり、あれは父が母に贈った物だったと言うのである。何だよそれ。 しかも何がどうなってと言うのは馬鹿馬鹿しいので ここでは触れないが、結局二人 は一緒になり、別れの品のオルゴールも母が「何となく持って」来ちゃったと言う のである。両親の愛と信じた品は、愛は愛でも何となく縁起の悪い代物であった。 私には娘はいない。居るのは息子だが 不思議な事にオルゴールが大好きだ。 私の時とは違って特に寂しそうな様子でもなく、じっとオルゴールに聞き入っている。 今日オルゴール屋さんに行ったら大喜びだった。そして予算より若干お高めだったが 上の写真のオルゴールを買った。 数種類の曲目から選べたので、私は「花のワルツ」か「ノクターン」が良いと思ったが 息子が強固に主張してスピッツの「スターゲイザー」になってしまった。 赤いオルゴールは何時の間にか無くなってしまった。何時無くしたのか不思議と憶えていない。
|