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仕事に行くため玄関に立った夫の携帯が、鳴った。
なにやら、眉間にしわを寄せて応答する夫。
「そんなん無理や。今さらそんなこと言われても…。もう死んだことに してくれ。それか、引っ越して居場所がわからない事にでもして」
その受け答えを、ワンコと一緒に首を傾げて見守る私。
死んだことに…って、北朝鮮の拉致問題じゃあるまいし。 というか、私ら、夜逃げした事にしちゃうわけ?
電話の内容を聞いてびっくり。
昨年の6月末にもらわれてきたワンコ、チップ。
元々の飼い主が離婚し、旦那さんの所に連れて行かれたチップ。 旦那さんが自殺して、奥さんの元に戻ったチップ。 奥さんが動物を飼えない状態だからと、知り合いの元へ里子に出された。 チップともう一匹・仮の名をディールは、里子に出された。
流浪の民、チップ。
里子に出された先は、先住猫が5匹いるお宅。
5匹の猫+2匹の犬は、飼いきれるわけもない。
そこで、うちの夫に「犬、飼わへん?」と話を持ちかけたのだ。
諸手を挙げてチップを迎えた夫。
今までの生活から一変し、とまどいながらもチップの世話をした。
ようやくワンコとの生活にも慣れ、ワンコのかわいさもわかってきた頃だ。
なのに今さら、返せって?
「2匹一緒に飼ってもらえると思ったから渡したのに、よそにやるなんて」
そう、元の飼い主は文句を言っているらしい。 現在ディールを飼っているお宅で、2匹一緒に飼ってほしいと言っている。
つまり、自分で飼う気はないのだな。
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