植物には「イヌ」という名前のついたものがたくさんある。 主に「○○のようで○○ではない」という意味の「否」が「イヌ」になって付いている名前が多いが、単に「○○ではない」という意味の後ろに「役に立たない」という意味も隠されているのだ。
例えば、カラシじゃないイヌガラシ、サンショウじゃないイヌザンショウ、ゴマじゃないイヌゴマ、ハッカじゃないイヌハッカ、ホオズキじゃないイヌホオズキ・・・挙げていたらキリがないのだ。 本物だったら香りがよかったり食べられたり花を楽しんだりできるのに、それじゃないためにちっとも役に立たないという意味がガッカリ感とともに伝わってくる。 「○○じゃない」の「否」が「イヌ」になったせいで、「イヌ=役に立たない」という意味になってしまって、関係のないボクたち犬は大迷惑なのだ。
ボスとアキコが好きな時代劇でも、武士らしからぬ振る舞いをする「否」な武士をののしって「この犬侍め!」などという台詞が出てくることがあるらしい。 本当に犬のお侍だったらボクはかなりリスペクトなのだが、ののしるコトバに「犬」(漢字でバッチリ犬だと言っている)が付くとはまったくけしからんのだ。
そんなこんなでかわいそうな「イヌ植物」をボクは応援している。 ボクの運動場にも「本物のタデは辛みがあって食べるとおいしいが、葉っぱがタデに似ているだけでタデじゃないのよ」という意味の名前が付く「イヌタデ」がたくさんあって、きれいなピンク色でボクの運動場を華やかにしてくれている。 今日はそんなイヌタデと一緒に記念写真を撮ってもらおうと思った。
しかし! 写真を撮ってよく見てみたら、これは「イヌタデ」ではなく「ハナタデ」だったのだ。 イヌタデはピンク色のつぶつぶが付くだけで花が咲かないが、ハナタデは花が咲くので区別ができる。 これもタデとは別の植物なのに花が咲くだけで「イヌ」から脱却し、さらにイヌタデに花が咲かないから「ハナタデ」などと華やかな名前をもらった植物ではないか! ボクはてっきり仲間のイヌタデたちと暮らしていると思っていたのに、ボクの運動場に生えていたのはハナタデだったとは驚いたのだ。
「こんなハナタデ、刈ってしまえ」と言いたいところなのだが、ハナタデの花は小さくて桜貝みたいな花びらがとても綺麗なので、このままハナタデの花を愛でて暮らしたい。 イヌタデの仲間だということで、仲良くすることにするのだ。
↓ボクの鼻とハナタデ
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