ゲンゾー日記
2007年02月17日(土)  やさしい実 

今日ボクはボスとアキコと一緒に昔住んでいた山に行ってみた。
山にはまだボロになった大きな鶏小屋がいくつも残っている。
鶏が1羽もいない空っぽの静かな鶏小屋は、少しさびしく、そして不気味
である。

ボスは鶏小屋を見ているようだったが、ボクはアキコを引っ張って周りの
植物観察に出かけた。
山にはいつもの散歩道と違った植物がいろいろあったが、ボクがとても心
惹かれたのはこの枯れた実である。

これは枯れたゴンズイの実なのだ。
魚にも同じ名前のヤツがいるらしいが、これは木のゴンズイである。
木肌の模様が魚のゴンズイに似ているからそんな名前がついているらしい。
魚のゴンズイにも毒があるらしいが、この木にも毒があるのだ。

昔、秋になるとタンキリマメに似た鮮やかな赤い実をつけていたものだが、
この実はもう一冬越してカサカサであった。
真っ赤な肉厚の実が二つに割れると、中から黒い種が出てきて驚くような
コントラストなのだが、この実は種も落ち、赤かった色もほとんどなくな
って、すっかり枯れた山の色と同化している。

ボクは毒々しい真っ赤な実よりもこんな風に時間を経てやさしい色になっ
た実の方が好きである。
鶏がたくさん居てギャーギャー騒いでいた鶏小屋が、時間を経て静かに朽
ちていく様子に似ている。
鶏小屋もゴンズイの実も、話ができたらきっと優しく昔話を聞かせてくれ
るに違いないのだが、どちらも何も言わないのでボクはただ耳をすまして
風の音を聞いていたのだ。


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