この日は彼へ着替えを届ける為に、 とある場所にある留置場へ向かった。
留置場のある駅に着くと、 そこは何とも殺伐としていて、何か寂しいキモチになった。
初めて足を踏み入れる留置場。 坂を下って一歩一歩ゆっくりと中ヘ向かう。 玄関の前には、彼も乗ったであろうサイレンのついた大型車があった。 その車を見て胸が痛くなり、立ち止まりそうになった。。 インターホンを押して中の人を呼び出すと玄関のドアが開く。 その玄関でのやりとりを数回繰り返して、やっと受付に入れた。
受付で「今日は接見(=面会)禁止が出ている」と言われた。 昨晩、警察から今朝地検に行くと聞かされていたので 会えない事は分かっていたけれど、 いざ接見禁止が出ている事によって、 手紙ですら受け取って貰えなかったので ショックだった。
ただ彼の元に届くのは着替えだけ…。
ちょっとね、 もしかしたら彼に会えるんじゃないかって期待してた。 会えなくても手紙だけは彼に渡るモノだと思ってた。 彼に私の今のキモチを伝えたかった。 私のキモチを伝えて、一人の彼に少し安心して貰いたかった。
馬鹿みたい。。。 現実は厳しいのに。。
彼は罪を犯した者。 例え小さな罪だとしても、罪は罪。 自分が甘い考えだった事を痛感した。
涙が出てきそうなのをこらえながら、 受付の紙に震えた左手の人差し指で拇印を押した。 頭を下げて私は留置場を去った。
空はこんなに晴れているのに 心が晴れることはなかった。 |