声優さんと映画とアニメと
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「金色のガッシュベル101番目の魔物」2004年夏劇場公開版 劇場での、あの感動の美声を思い出した。 ストーリィも結構良質でアニメとして観ていて楽しいのはもちろん。何よりもドルビーデジタルサラウンドの大音響で聴く森川悩殺ボイスである。あまりに良い響きで、もううっとり酔った。 そう、DVDで聴いても、やっぱりいい声。 櫻井さんとか、売れっ子の声優さんが沢山でているし、作画の水準も高いので、劇場版はそれなり良く作り込まれてる。印象的な最強の魔物で登場する森川さんの悪役ぶりが、また清々しい。 本性を現しているときの低めの押さえた声、良い青年を装うときの、清々しい若者ボイス、そして戦いの時の何とも言えないクールボイス。徹底した悪役なのに、堪らない二枚目声。そして一人称が「僕」(笑)。デビルじゃないけど、同情を誘う2枚目悪役の条件はすべて揃った感じ。 そして「フフッ」の良く響くこと・・・これこそ悩殺ボイスだ。
声優さんの訓練のサイトを覗くと、声を響かせる響かせないは自在にコントロール出来るらしい。鼻孔や喉を共鳴させて、声を響かせたり、あえて響かせずにしゃべったりすることで、セリフとナレーションでの声を使い分けるのだそうだ。森川さんは特に響かせると綺麗な残響が美しい。声が涼しいとか、清々しいとか、時には禍々しいと感じさせる魅力のひとつだ。 残響音の制御以外にも、よくよく注意して聴くと、声優さんの声を聴かせる技術というのはいろいろ面白い。 アニメの(特に悪役での)森川さんのセリフ回しで、印象深くなるのが語尾に強調の韻が入るとき。セリフの歯切れもひときわ良くなるし、語尾にアンカーが入る感じ。この韻の入れ方次第でセリフの印象がぜんぜん変わる。 森川さんクラスの中堅からベテランの声優さん達が、新人達に比べてセリフが安定して聞こえたり、上手いって感じるのが、長丁場でのセリフの後半まで持続する豊富な肺活量と、強調韻の付け方。セリフ中に自在に差し込まれる強弱のうねりとリズムが、まるでそれ自体が呪文か言霊のように強い印象を与える。しかもこの強弱配分とリズムは、彼ら個々の声優さんの個性が織り込まれる。こういうふうに声優さんが自分の役者としての個性を味付けしながら、自在にキャラクターの性格や考えをセリフのイントネーションだけで描いてくれるので、それぞれのキャラクターが、決して枠にはまったありきたりの物ではなく、それぞれが絵との相乗効果での魅力を生み出すのだと思う。こういうテクニックは、身につけるのがとても難しいと思うし、それが出来る人しか結局は主人公やメインの役が貰えないと思う。過去から現在に至るまで幾多のステキな人気キャラクターは、個々に命を吹き込んできた声優さん達の寄与が絶大であると思う。やっぱり、コレばかりは経験が物を言うのかも知れない。でも、森川さんはデビュー作のテッカマンブレードですでに十分、この技術を駆使していたと思う。Dボーイは本当に語尾がしっかりとしていたし、意志の強さと苦悩と悲しみが、一つ一つのセリフに丹念に織り込まれていた。 当時はデビューして4年ぐらい、プロとしては当たり前なのかもしれないが。役者としては、かなり完成型に近い形でシーンに出現した人であることは間違い無い。 そんな森川ボイスだが、まったくもってアニメとは対極に位置する外画の吹き替え。元の俳優さんが喋っているのかと勘違いさせるほど、自然と役にとけ込だセリフ回しが聴けるのだから、ファンとしては堪らない世界。このダイナミックレンジとその振れ幅の広さが役者として、大いなる魅力の一つだ。
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