胡桃の感想記
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2004年09月11日(土) |
「ドリアン・グレイの肖像 Azure / Crimson」紀伊国屋サザンシアター |
☆劇団Studio Life(スタジオライフ)公演☆
【Azure Cast】笠原浩夫 高根研一 岩崎大 林勇輔 深山洋貴 奥田努 佐野孝治 牧島進一 篠田仁志 寺岡哲 下井顕太郎 大沼亮吉 関戸博一 三上俊 吉田隆太 黒川幸一朗 石飛幸治 藤原啓児 河内喜一朗 ほか
Azureは何といっても笠原浩夫さん演じるヘンリー・ウォットン卿(通称ハリー)の凄い誘惑が印象的。 2列目ほぼセンターだったので、役者さんたちの表情までしっかり分かり、あまりの近さにくらくらしながらの初観劇。 もう最初に笠原ハリーと岩崎バジルが舞台に現れた瞬間、モデルのような2人に失神しそうになった(笑)。 メイン3人が精神的な三角関係と雑誌のインタビューに載っていたのだが、ハリーはどっちが好きなのか観劇前は分からなかった。 だが笠原ハリーをみていると、岩崎バジルが好きなのかなと。 岩崎バジルがあまりにも高根ドリアンに心酔しているから、それに嫉妬して高根ドリアンを彼の哲学で以って破滅へと導く笠原ハリー。 だから前半の高根ドリアンを見る笠原ハリーの目ってどことなく冷めている。 懐いてくる子(高根さんに向かって“子”もどうかと思うが)をややうっとうしく思っているかの様な感じ。 岩崎バジルはホントに高根ドリアンを好きなのが伝わってきて、みているこっちが切なくなってくる。劇場で高根ドリアンをなぐさめるシーンなんて、寄り添って岩崎さんの優しさが滲み出ている感じ! ただ笠原さん(同級設定)、高根さん(10歳下設定)と並ぶと・・・やっぱり一番若い。高根ドリアンと同年のほうがまだ自然・・・と言うか金髪の笠原ヘンリーが貫禄ありすぎ(笑)。
高根ドリアンに恋をする少女、シヴィル・ヴェイン。最初にシヴィルは劇中劇で演じるジュリエットとして登場するのだが、林さんは素晴らしい!もうジュリエットの一声で意味も無く涙が溢れそうになってしまった。林シヴィルはもう声もしぐさも“女優”で熱演。でも、はしゃいで石飛ママに「・・・バカな子だよ」と言われるシーンは、本当〜にバカだった(笑)。 そしてシスコンの弟・奥田ジェイムズが登場して、少しだけ家族の風景。 石飛ママの芝居じみた演技が笑いを誘っていた。石飛さんって男らしいのに、女性役やっても普通にいるいる〜って思ってしまう。それだけ演技力があるってことね。 舞台で大失敗して、高根ドリアンに振られてしまう林シヴィル。泣き崩れる林シヴィルの姿に涙が出そうになっていたのに・・・突然音楽が変わり、立ち去る高根ドリアンの足にしがみついた時、固まってしまった。振り払われてもしがみつく姿に、女の執念みたいなのを感じて恐ろしくもあり、ちょっと笑いたくもなり(汗)複雑な気分になってしまった。林シヴィルは無表情で思いっきり足にしがみついているから、高根ドリアンのズボンが少し落ちかけていたような・・・気が(いえっ、気のせいだよね)。
笠原ハリーはもう格好イイの一言に尽きる。舞台を観れば観るほど、この人の格好よさを再確認って感じで、看板俳優なのも王子なのも納得できてしまうのだ。 金髪であの格好が似合う日本人ってそういないと思う。笠原ハリーは演技が割とオーバーリアクションで、顔の表情がとても分かりやすい。好き嫌いが分かれるだろうけど、私は感情が読み取れるような気がして好き。
高根ドリアンは、前半のおどおどした感じが思ったより自然だった。肖像画を隠す衝立を軽々と上から持ち上げて移動させていたのが印象的。ああ背の高い人は上から持つのかって思った(私だと横から持つから)。肖像画が醜く変化するのをスライド(?)で見せてくれるのだが、席が近すぎて見にくくて醜かった(苦笑)。
笠原ハリーの妻、篠田ヴィクトリアは高根ドリアンに嫌味をいう時、ヒステリックな感じがよく表れていた。ハリーとの意思疎通が出来ず、虚しさを凄く上手に表現していた。 しかし・・・ハリーってば何故ドリアンの写真を16枚も持っていたの?
最近、劇団員さんの顔は割と分かるようになったと自負していたのに、寺岡トマスが出て来たとき、最初誰だか分からなかった。・・・あの不自然な大きな髭は何っ?!寺岡トマスは笑顔で笠原ハリーと会話をかわした後、背後でメガネをくいっと上げてから立ち去るのが印象的。たったこれだけの事なのに、ハリーの社交界での思われ方を表しているようだった(うるさ型には煙たく思われているのだなーと)。
そしてフレッシュ吉田くんは今回もかわいい女性役で活躍だった。 特に後半のグラディスは知的な女性で、ハリーのいとこなので口でも負けていなくて、観ていて楽しい場面だった。
二幕(18年後)で高根ドリアンが岩崎バジルを殺してから舞台は更に暗くなっていき、ラストも救いが無いような気がする。でも後味は悪くないので不思議。何故なのかはこれからもしばらく続く「ドリアン・グレイの肖像」を観て考えてみようと思う。答えは出ないかもしれないけど。
この1時間30分後に、もう一つのチームCrimsonの観劇だった(ちょっと頭がいっぱいいっぱい/笑)。
【Crimson Cast】山本芳樹 楢原秀佳 山崎康一 及川健 深山洋貴 小野健太郎 篠田仁志 寺岡哲 佐野孝治 牧島進一 下井顕太郎 荒木健太郎 宗村蔵人 松本慎也 吉田隆太 黒川幸一朗 石飛幸治 藤原啓児 河内喜一朗 ほか
実質10列目センターだったので、とても良席だった。 だって山本ドリアン初登場の立ち位置がほぼ目の前で大興奮(舞台から遠いけど)。 二回目はストーリーが分かるぶん流れが早かった。Azureのメインがモデルのような3人で大迫力だったが、Crimsonの3人も似たような身長で、楢原ハリーと山崎バジルは同級というのが自然と納得できる落ち着きぶり。 そして山本ドリアンは、山崎バジルに「モデルなんて飽きちゃった」とポーズを決め、「散歩に行こう」と長椅子に跨いでねだるという無邪気さで若々しさが出ていた。
そんな山本ドリアンに対する楢原ハリーもおちゃめで面白い。庭で握手した後、楢原ハリーは山本ドリアンの手にキスしようとして逃げられていたし(笑)。ドリアンに対する冷たい目が少ない感じがした(明日は前の席なので、また変わるかも)。 山崎バジルは役柄的にやや抑えた感じはするものの、絵描きシーンなどに細かいこだわりを感じた。モデルのドリアンに「いい子だから・・・」というセリフが妙に説得力があり自然だった。 あと楢原ハリーがシヴィルを観て「すてき、(自分のステッキを見て)ステッキ」というギャグの後、すかさず「ハリー!」っていうツッコミの発音とタイミングが素晴らしかった。
及川シヴィルは予想通りの美少女!!及川さんはストレートの方が似合うような気がする。 石飛ママの「バカな子だよ」の時は、衣装を抱えて「きゃっ!!」という位でバカ度は控えめ(笑)。弟・小野ジェイムズに対して「おバカさんねぇ」と言う時などは愛情がこもっていて、ホント“お姉さん”っぽくて、凄い美形の姉弟だな・・・と思いながら観ていた。 ドリアンに振られるシーンは、必死にしがみつく及川シヴィルと必死に逃げようとする山本ドリアン・・・・・・山本ドリアンはちゃんと舞台袖まで辿り着けるか心配してしまった(苦笑)。及川シヴィルの絶叫がセリフ以上に高音で女の子っぽくて・・・あのシーンがもう少し長かったら、私泣いていただろうなぁ。
堕落していくドリアンだけど、さすがダンサー山本さんは動きがキレイ。 Azureではさらりと流していたけど、山本ドリアンと寺岡アランって出会った時から妖しい・・・。何がどうかは明日しっかり見よう(笑)。 寺岡トマスの髭は、アランとの区別をより明確にする為なのかな(だって髭で顔の3分の1は見えないし←大袈裟な)。前公演「DRACULA」に続いてドクター役の寺岡さん。山本ドリアンに振り回された上に脅されている役がハマっていて良かった。
篠田エイドリアン(ドリアンの堕落した友人)は、最初誰だか分からなかった(まただよ・・・)。 だってAzureで麦藁色の髪でドレス姿のヴィクトリアと同一人物には見えないって。 佐野ヴィクトリアは美人で強がっている感じ。山本ドリアンと佐野ヴィクトリアはお互い仮面を被り「負けないわよ」(何故女コトバ?)って感じだった・・・けど何の戦い?場面が短くてよく分からないけど、ヴィクトリアが嫌味を言って、ドリアンがそれに応戦しているのは分かった。
そういえば山本ドリアンが茶髪に巻き毛で、やたら触れていた。楢原ハリーは頭をなで抱きしめていたし、及川シヴィルも「キスして」と髪撫でていたし、深山娼婦も撫でていたなぁ。珍しくてカワイイから?(笑)
Crimsonの楢原ハリーを観て、陽気な悪もあるのだなぁと思った。笠原ハリーが計算づくで悪の道を示したとすると、楢原ハリーの場合は彼の哲学+山本ドリアンの行動力であの結果という感じがした。
今回は12列目(実質10列目←しつこい)センターで舞台全体が良く観えた。その為かマチネの4列目(実質2列目←分かるって)ではあまり観えなかった肖像画の映像もしっかりチェックできた。山本さんが醜く変わるのは嫌だなぁと思っていたけど、あの映像は「誰?!」だったので安心安心(笑)。 白いカーテンを上手に使い、秘密の部屋まで登場するというセットで、衣装も音楽も良くてキレイな舞台という印象だった。堕落と殺人のある舞台をキレイというのもおかしい気がするけど、ラストシーンで流れる音楽と、もとに戻った美しいドリアンの肖像画(ラストで初めて公開される絵で、ドリアンそっくりでとても上手)でエンディングだから、後味がいいのかなぁと思った。
ここからは個人的注目シーンについて・・・それは舞台での山本芳樹さんの飲みっぷり。 「MOON CHILD〜月の子〜」の山本セツは食塩水をセリフがない時、ゴクゴクとそれはもう爽快な飲みっぷり。しかも時々ぐるぐるとコップを回して塩を溶かすという芸の細かさ! 「DRACULA」でも山本ジョナサンはWキャストの甲斐ジョナサンに比べて、明らかにワインをゴクゴク飲みまくり(といっても一杯だけだが)。 今回も二幕始めにアルコールを飲むシーンがあり、私は大注目していた。 バジルがドリアンの悪い噂を問いただしているシーンで、最初は軽く飲んで話を聞いているから“あれ、今回は少ないな・・・”と思っていると、最後にくいっと口に含んでからゴクッと!(←やっぱり芸が細かい) 嫌な事を指摘され「いまいましい!!」みたいな顔をして飲んでいた。 期待を上回る飲みっぷりをありがとう、山本さん!!これからもあなたを応援します!と思った瞬間だった。
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