今日のおたけび または つぶやき

2013年03月20日(水)  限界を超えさせたがる監督



ちょっと前になりますが、14日に放送された「オデッサの階段」には、

「ハゲタカ」「龍馬伝」「るろうに剣心」で独特の撮影手法をとってきた大友啓史監督が登場。

最新作「プラチナデータ」もかなりの注目度のようですな。



以前、ましゃもおっしゃっていましたが、映像作品には「カット割り」というものがあり、

リハーサルを何度も繰り返してから、そのカット割りをひとつずつ埋めるように撮影していくのが

通常のやり方なのだそう。

ところが大友監督は、リハーサルをほとんどせず、カメラを同時に何台も回しながら、

長回しで一気に撮るのだそうだ。



セリフを間違えようと、殺陣が失敗しようと、他のカメラやスタッフが映り込もうと、

NGにはせず、とにかく撮り続ける。そしてそれを何度も何度も繰り返す。

リハーサルはしないのに、本番はこれでもかと繰り返すのだそう。



「るろうに剣心」で、凄まじいアクションシーンを「まだやるの?」ってくらい何度も何度も

やらされた佐藤健くんいわく、


「大友監督は、人間の限界を超えた瞬間にしか出てこない表情や空気感が大好き。

 だからアクションシーンも何回も何回もやらせてとにかく追い込む。

 追い込まれないとギリギリ感は出ないだろう、と思っているのか、それともただのドSかもしれない。」



たけるんからのドS疑惑発言に対し、大友監督は、

「僕はドMです。監督というのは、基本的には思い通りにはならない仕事。

 思い通りにはならないことを、どう受け入れるのか、というのが監督。だからM。」

という理屈で返していらっしゃいました。



NGでもないのに、何度も同じシーンをやらされることについて、

たけるんの捉え方がステキでした。


「監督は、僕達に『生きて』ほしいのだと思う。

 その役になって、その時代に『生きて』ほしいのだと。

 だから僕達はとにかく『生きる』。そして監督はそれを切り取る。」



たけるんは剣心として「生かされた」実感があるのでしょうね。役者冥利につきますね。

こういう手法でなくても、役者さんならもちろんどんな細切れな撮り方でも

きっちりその役を「生きて」くれるのでしょうけれど。



「龍馬伝」で人斬り以蔵を演じていたときは、

「今まで経験した中で一番過酷な撮影」とおっしゃっていた健くん。

素足で寒い中を逃げ回るから傷だらけで、さらには吊るされるし叩かれるし、

肉体的にも苦しいわ、心理的にも辛いわで、本当に大変だったのでしょうが、

以蔵でのがんばりがあったからこそ、剣心も開花したに違いないと思うのです。



実際、「るろうに剣心」は大成功でしたよねー。

(とか言いながらまだ観てないわたし。早くWOWOWでやってください。

ひょっとしてもうWOWOWでやってそれも見逃した? っつーかレンタルしてこいよって話ですが。

でもレンタルじゃすぐ返さなきゃならないからイヤなの。ならさっさと買えよという話ですが!)




そんな大友監督、撮り方は独特でも、まわりの意見にはよく耳を傾けるそう。

「観客は正直。だから観客の意見はとても気にするようにしている」と。

「るろう」では、日本ではきわめて新しい試みとして試写会後に観客からアンケートをとり、

それをもとに編集しなおしたのだそうだ。

「つまらない」という意見には対応のしようがなかったが、「わからない」と言われた場面については、

セリフやシーンを付け加えるなどの改善し、結果、作品も確実に良くなったと。



「まわりの意見は聞く。それを取り入れるかどうかは全く別の話だが。

 自分としては答えは出ていても、自分とは違う意見を聞きたい。

 自分が思っている以上のことを映像に収めたいから。」



最新作の「プラチナデータ」については、

先日の朝日新聞に、原作者の東野圭吾さんとニノの対談が載っていました。

撮影を見学した東野さんも、大友監督の独特の撮り方に驚かれたそうな。

あんなに長くカメラを回しているのを見たのは初めてだと。


ニノ「ああいう撮り方はめったにないですね。」

東野「大変じゃないのですか?」

ニノ「スタッフの方は大変だと思います。でも舞台をふんでいる共演者が多かったので、

   舞台っぽくて楽しいと言っていましたね。

   監督が役者に対して『今日は何をしてくれるんだい?』というモチベーションを持っている方で、

   それに応える人もいれば淡々とやる人もいて、そのコントラストを楽しんでいらっしゃるんです。

   だからあまりリハーサルもしっかりとはやらないんですよね。」

東野「たいしたもんだなと思うんですよ、役者さんて。

   ただ、尊敬はしますけど、少しもうらやましくはないです(笑)」



なんだか、まんまと「プラチナデータ」も観たくなってきましたよ。




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