ご優待料金のおかげでお得に観劇させていただきました。
歌舞伎のお客さんたちは若い人たちも多いけど、主流はご年配の方々なので、
この夏は劇場に足を運ぶのを控えた方も多いのかもしれませぬね。
よほどお家が銀座に近くて、地上に出ずに地下鉄で行けますとか、タクシーですぐ行けますとかでないと、
猛暑に電車乗り継いで炎天下を歩いてというのは、ご年配にはキツかよー。
昼(第二部)と夜(第三部)を拝見しましたが、残りあと5日だというのに
いつもよりは空席が目立っていたような。
とはいえ、わたしが観た中では若干空席が多い、というだけで、大盛況には違いないですが。
2部はG2の新作歌舞伎『東雲烏恋真似琴(あけがらす こいのまねごと)』と、
舞踊『夏 魂まつり(なつ たままつり)』。
昨年夏のクドカンの新作歌舞伎『大江戸りびんぐでっど』は、
大変にインパクトの強いゾンビ大集合で、歌舞伎というジャンルの中で観るにはちょっと、な、作品でしたが、
今回のは全然違和感なくとても面白く拝見しました。
ひょんなことから、美しい花魁(福助)を身請けすることになったカタブツの侍(橋之助)。
身請けして祝言をあげるはずだったのに、花魁は吉原の大火の夜に殺されてしまうのです。
殺されたことを信じようとしない侍の元に、花魁そっくりの人形が届き、
この人形を「生きてちゃんと自分の元に戻ってきてくれた花魁」と信じて疑わない侍。
人形と侍とその家族の奇妙な生活が始まり・・・、というお話。
どこまでが現実でどこからが夢まぼろしなのか、あるいはすべてが本当のことなのか、
「人形」に翻弄されていく人々の様子が滑稽でもあり薄気味悪くもあり、
ラストもハッピーエンドなのかホラーなのか、視点によって全然異なる、
ある意味これも「怪談」と言っていいお話かと。
橋之助の真面目で人のいいカタブツっぷりと、福助の変幻自在なお人形っぷりがステキでした。
「人形」モチーフのお話って怖いよね。
3部は舞踊劇『宿の月(やどのつき)』と『怪談乳房榎(かいだんちぶさのえのき)』。
『怪談乳房榎』は勘太郎が四役の早替りを見せてくれるのですが、これが本当に凄い早替り。
「父勘三郎の当り役を受け継いだ」とのことですが、お父さんのこの作品は観たことないけど、
その舞台裏のドキュメントはTVで見たことがあるような気がします。
ダッシュで走るくらいじゃ追いつかなくて、ロケット的なトロッコとか、滑り台とか、
一気に吊り上げられたりとか、なんか凄まじい舞台裏だった記憶が。
お父上の舞台を見慣れている人にはどう映ったのかわかりませんが、
私には本当に見事に自分の舞台としてモノにしているように見えました。
声がとにかくお父上にそっくりで、動きや笑わせどころの間合いもお父上の名人芸を
しっかり受け継いでいて、芸が継承されてゆくって本当にステキと思わせてくれるお姿でした。
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