| 2011年02月27日(日) |
「ろくでなし啄木」@天王洲 銀河劇場 |

千秋楽ぎりぎりで観劇できました。よかったー。
2階の立ち見でしたけど、銀河劇場はとてもこじんまりとしていて舞台が近く感じる劇場で、
視界をさえぎるものは全く無く、1幕2幕ともに1時間15分ずつというのも立ち見に優しい♪
三谷幸喜脚本の舞台を拝見するのは初めてでしたが、評判どおり本当に面白かったです。
出演は、藤原竜也(啄木)、中村勘太郎(啄木の友人でテキヤのテツ)、吹石一恵(啄木の愛人トミ)の三人だけ。
この三人が温泉に出かけたある一夜の出来事を、啄木の死後12年たって再会したテツとトミが回想する、
というシーンから始まります。生活にだらしなく金に困っていた啄木が三人の微妙な三角関係を利用し、
愛人トミを使ってテツから小金を巻き上げようとした、というのがその出来事の顛末だったのですが、
それは表向きの理由で、啄木の本当の意図は・・・・というお話。
膨大なセリフ量なのに、この三人のスピーディでコミカルな掛け合いが素晴らしくて。
序盤は勘太郎が際立っていて「これ勘太郎の一人勝ち?」と一瞬思ったほどです。
テキヤっぽいノリの良さもあり、海千山千の凄みもあり、トミに対する断ち難い恋心も見せ、
本当にろくでなし野郎な啄木への純粋な友情もあり。
それらを絶妙に表現する声色の使い分けも見事でしたが、何よりその身体能力。
歌舞伎がご本業ですから美しい身のこなしが身についておられるのはあたりまえですが、
とても実写とは思えないほどキレとスピードのあるコミカルな動きをなさる。
あの身軽さはサダヲちゃんを超えているかもしれない、と思いましたよ。
それほど動きながらも、膨大なセリフを息を切らすことなくつねに明瞭にドラマチックに
客席中に響かせる。いやもう勘太郎本当にお見事でいらっしゃいました。
で、中盤からは藤原竜也演じる啄木の見せ場。
トミやテツに甘え、取り入り、気づけば言葉巧みに丸め込んでしまう様子が本当に「ろくでなし」なのだけど、
その言葉を聞き入れずにはいられない魅力が彼の演じる啄木にはあって。
熱く激しく自分の想いをぶつけてくる啄木には、舞台上のふたりのみならず、客席内すべても
丸め込まれてしまう説得力がありました。
映像でしか拝見したことがなく、ナマ藤原竜也くんを拝見するのは今回初めてでしたが、
映像以上に素晴らしかったです。さすがです。
ふたりから想いを寄せられるトミ役の吹石一恵嬢はこれが初舞台だったそうですが、
この芸達者なおふたりに挟まれても全く遜色なく演じておられて、素晴らしいマドンナでした。
どたばたとすったもんだの一夜のあと、三人がそれぞれ別の場所で朝日を浴びながら
ものを想う場面があるのですが、この終着点が素晴らしい。
そしてその朝日にふさわしい、清々しい三人でした。
ドラマも舞台も、やはり脚本がすべてだと、最近強く思います。
根っからみーはーなワタクシですので、視聴・観劇意欲は出演する役者さんの顔ぶれで決まりますが、
作品の面白さの9割は脚本にかかっているのではないかしらん、と思う今日この頃。
特に今期のドラマとか観てるとね。いくら素晴らしい役者さんでも、脚本と違うセリフは言えないのだし。
ああしかし!
三谷幸喜作品の舞台まで今後チェックしたくなると、更に首が回らなくなってくる恐れが。
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