| 2011年01月07日(金) |
「坂東玉三郎特別公演」@ル・テアトル銀座 |

素敵な観劇始めになりました。
私のような歌舞伎初心者なんかよりもっともっと、
喉から手が出るほど見たかった長年の玉三郎ファン、歌舞伎ファンが大勢いらしたに違いない。
今回の『阿古屋』というのは現在、玉三郎しか演じられる人がいないと言われている演目で、
それというのも、阿古屋が最高位の太夫としての品格や美しさを持つのはもちろん、
劇中で琴、三味線、胡弓を全く音が乱れることなく最高の技術をもって
弾きこなさなくてはならないからだそうなのです。
佇まいの美しさには、観ていると本当に我が身が浄化されたような気持ちになります。
琴、三味線、胡弓は、どれも日頃わたしはまったく聞きなれていない楽器ですが、
どれも本当に美しく、特に胡弓の音が一番好きでした。
本来だったら、急遽決まった代替公演にかけるような演目ではなく、入念に準備の時間をとり、
大々的に宣伝してお披露目するほどの「玉三郎にしかできない」演目。
そこを「緊急事態だからこそ」、歌舞伎の真骨頂とも言える難易度と美しさの「阿古屋」で始め、
「女伊達」という、いかにもお正月の華やかさにふさわしい賑やかさで締めるてみせる、
その心意気がなんとも粋でカッコよくて、本当に素晴らしいと思いました。
ル・テアトル銀座のエレベーターに乗って、劇場のある階に到着してドアが開くと、
いきなり目に飛び込んでくるのは、でっかい玉三郎のお写真のお出迎え。

ロビーにはお正月らしく、そこここに紅白の繭玉が華やかに飾られ、
獅子舞が舞い踊っております。(本物の獅子舞よ)
ロビーをお正月らしいしつらえにしてお客さまをお迎えする、というのは
玉三郎のたっての希望だそうで、小さい空間ながら「おもてなしの心」がよく伝わってくる気がしました。
そしてあの素晴らしい舞台。
最後に新年のご挨拶と客への感謝や祝祷、これからもどうぞ歌舞伎をごひいきに、など、
それはそれは丁寧な口上を述べられるのです。
あれほどの芸の高みにいる人が、どや顔ひとつせず(あたりまえだが)、美しい佇まいと美しい声と美しい言葉で、
客の一年間のご多幸ご健勝を祈ってくださったらご利益がないわけがない! というか、
この一年が良い年にならないはずがない!という気持ちになります。
あれほどの人なのに、「これからもどうか歌舞伎をごひいきに」と、謙虚に美しく頭を下げられたら、
いえいえいえ、どうぞお顔をお上げください、ご贔屓どころかこちらこそどうぞよろしくお願いいたします、と
平身低頭したくなるほどでございますよ。
で、客席にはびっくりするくらい多くの男性客が。
雰囲気的に、きっとご同業か、同じような芸事をたしなんでいらっしゃるのかなー、と
思われるようなキレイな男の人がよく目に付きます。篠井英介氏っぽい感じ?
ご年配では白髪の品の良いおじいさま方が圧倒的に多く、こちらの列にはずらっと8人、
あちらにはずらっと10人、というくらい男性客ばかりが並んで御覧になっていたりしまして。
そんなおじいさま方がパンフを広げながら「玉三郎は昔より今の方がキレイだ」なんて会話なさってたりしますの。
初心者の若輩者がそんな中に混じって観劇させていただいてちょっと申し訳なかったですが、
なんとも清々しく幸せな年の初めになりました。
で、美しいものを見るといつも思うのだ。自分ももうちょっとエレガントであらねばと!
思うのだがいつの間にか忘れてやっぱりガサツなままなのだ。
いかん。これはいかん。
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