2005年06月14日(火) |
『ビロードの闇』妄想ストーリー |
何かしら濃厚でオリエンタルな香りが立ちこめる地下のクラブ。
女たちが悩ましげに身をくねらせ、そんな女たちを舐めるように見ている男たちの中に、
白スーツの男がひとり入ってくる。
クールビューティーだけど、ちょっと荒んだ顔つき。
通りがかりにふと気になって足を踏み入れてみたけど、自分でもなんでこんな所に来たのかわからない。
この白スーツの男、実は魔法が使える。
その気になれば何だって消したり出したり自由自在、
ムスタングまで浮かせちゃったりするし、ほうきがなくても空を飛べる。
勝負に出れば滅多なことでは負けない。昨日のボーリングでは負けちゃったけど。
でも最近は、自分が操れる魔法はそれだけじゃないような気もしている。
ステージの上では、しなやかに腰をくねらせながら歌う全身キラッキラの男。
ちょっと光りすぎよ。
でもこのくらいで丁度いいの。この男も魔法使いだから。
でも、白スーツの男とは、魔法の種類が違う。キラッキラが操るのはもっと危険な魔法。
心の中に入り込み、無いものをあたかもあるように見せ、別世界に簡単に引きずり込む。
かと思えば、そんな危険さとは正反対に思えるような「愛しむ」魔法にも長けている。
「来たな。寛いでいきや。」
白スーツを呼んだのはこのキラッキラ。
今だけは極上の音と歌と女でもてなしてやろう。でも、目的はそれじゃない。
この白スーツに、別の魔法も操らせてみたいのだ。
この男ならできるから。
それを気づかせてやれるのは俺だから。
キラッキラは、悠然と階段を上っていく。
白スーツがすぐに自分のあとからこの階段を上ってくるのはわかっている。
白スーツに挑発的な視線を送った女も、その女をじっと見ていた黒人の男も、
まわりの客たちも、演奏家たちも、すべてはこのキラッキラが見せた幻想。
媚薬の残り香が漂う中、ふと白スーツが我に返ると
そこにあったのは、ただのからっぽの地下室。
さて、階段を上っていった白スーツは、その後どうなったのでしょう。
もちろん、キラッキラと一緒にいるのです。
キラッキラのことが大好きになり、初めて見る魔法の数々を、どんどん吸収していきました。
白スーツがキラッキラに魔法を教えることもありました。
ボーリングのボールを、美味しそうな巨峰に見せる魔法とか。
でも、ボーリングはふたりとも一向に上達しません。
魔法使いには、弱点が意外に多かったりもするのです。
キラッキラがひとりで立っていたステージには、
今ではふたり一緒に立って、さらに煌びやかな幻想を見せられるようになりました。
ある時、白スーツは、キラッキラが大きな水槽の前でうっとり魚たちを見つめている間に、
こっそりあの、あみあみゴールドの帽子を被ってみました。
「俺もヤツみたいな魔法使いになったら、これ被らなアカンのかな。似合うかな。」
それは真似しなくていいぞ白スーツ。
完。 アホすぎてごめん。
|