せらび
c'est la vie
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みぃ


2005年12月20日(火) ストライキ始まる

ここのところ、ワタシの住む街の公共交通機関において、一部の労働組合と管理側の間で対立が続いている。

組合側は年金をもう少しカバーして貰いたいとか、鼠がうようよしている地下で工事や補修などに従事する労働者の為に鼠駆除にもう少し力を入れて貰いたいとかいうような事を主張するのに対して、管理側はそれなら乗合運賃を再び(再び!)上げる事で市民の皆さんの痛みでもって諸君の主張を賄う事にするなどと言ったので、それはいかん、という次第で、某有名ホテルを舞台に両者間で長らく交渉が続けられて来た。

今年の初め辺りの運賃値上げ(しかも、いきなりこれまでの倍額!)で儲けた分は、一体何処へ行ってしまったのだろう。その癖、週末毎の路線工事もいつまで経っても終わらないし、電気系統の故障など通常の運行にも支障を来たす問題は相次いでいるし、そもそも経営自体どうなっているのだ。

と、一個人利用者は、思う。

しかし結局その話し合いが決裂したので、今朝三時頃から、全面ストライキに突入した。

つまり、この街の交通機関は二十四時間運行しているので、この機関が担っている地下鉄・バス・郊外電車の一部が、一斉に運行停止になったのである。

これが未明で良かった。結論が何時出ても可笑しくない日々がここ数日続いていたのだから、それに伴って、例えば仕事が終わってさあ帰ろう、と思ったら電車が止まっていた、などという事も大いに有り得た訳である。しかも外はとっくに氷点下。流石に野宿はしない方が良かろうと思う。


こういう事態はこの街では二十五年振りだそうで、その時は春だったのだが、全面ストライキが十一日間にも及んだそうである。

それでこの街の職業婦人らは、ビジネススーツにスニーカーを合わせても、平気な顔で歩いていられる。スーツにバックパックという組み合わせも、そういう訳だから人々の間に広く定着したのである。ファッションなんかは、とりあえず二の次である。


しかし今回はクリスマスの買い物シーズンにぶつかっているので、少々不都合である。

何もこんな時期にやらなくても、とは思うのだが、しかし契約の都合などで止むを得ないのだろう。という事にしておく。

お陰で街の中心地では、乗員四人以下の車両のラッシュ時乗り入れが禁止になっている。タクシーの運ちゃんもそれを知らずに「空荷」で乗り入れようとして、橋の袂の検問所でお咎めを喰らっているようである。運送業の皆さんは、余程お困りの事だろうと察する。

郊外から仕事に行く人々は、近所と声を掛け合って相乗りしながら中心地へ乗り入れ、一定時間帯に入場する事を条件に「ストライキ特別料金」を設定している駐車場などに車を止めるのだが、普段地下鉄で通える範囲の比較的近くに住んでいる人々は、当然のように歩くのである。テレビで、朝五時起きして九時の出社に備えて橋を徒歩で渡る人がインタビューされていたが、そういう出勤者で街は朝から大賑わいである。

こういう時には、郊外電車で二時間、とかいうような高級しかし辺鄙なところに住んでいなくて、本当に良かった、と思う。何しろ動いている電車だってあんまり混雑しているから、途中の駅にも停車すらせず、さっさと通り過ぎてしまうのだそうだ。だからその途中駅周辺に住む人々は、結局他の手段で職場を目指さねばならない。

しかし買い物客などはそういう訳に行かないから、必然的に客足は大幅に減る。仕事帰りに買い物する予定だった人々も、歩いて帰る場合は荷物も大変だからと、結局寄り道などせず帰宅するのだろう。

そういった諸々を総合すると、一日当たり約40,000,000,000円=400億円の損害だそうである(ゼロゼロゼロと、換算が大変だわ)。

今頃街の中心地は、周辺のホテルに滞在している観光客と勤めに出掛けるか帰る途中の仕事人で溢れているらしい。


そういう訳で、ワタシは今日は電車に乗る予定が元々無かったので、そういった非常事態の「蚊帳の外」である。今時はインターネット回線を使って仕事が可能だったりするから、「必ずしも出社に及ばず」という職種は他に幾らもあるだろう。便利な世の中である。

だから、うちでぬくぬくとテレビを見ながら、「お気の毒だなあ」などと呟いては、淹れたてのブルーベリー味のする珈琲をずるずると啜っている。しかしアマレット(甘い酒)味やフレンチ・バニラ味のやつの方が、断然旨いと思う。ブルーベリーは菓子類に止めておくに限る。失敗。


いや、出掛ける予定は一応あった。

今日はご近所に住む同僚らふたりと近所でお茶会をする筈だったのだが、しかしそのうちのひとりが酷い風邪を引いたとかで朝っぱらに電話があったので、止む無く延期する事になったのである。

だから、ひとりでお茶している。これはこれで、のんびりしていて中々良い。


しかも昨日のうちからスープをどっさり拵えて、寒空に帰宅しても直ぐ食べるものがあるように仕込んでおいたので、何やら心が満たされている。

これは具沢山で滋味溢れる美味しいスープだが、実際のところを明かせば、冷蔵庫と冷凍庫、更に食糧棚の残り物をてんでに入れただけの、「残飯整理スープ」と言ったところである。煮込んでしまえば、元は何が入っていようとも、旨いものは旨いのである。


しかしこの調子でストライキが続いてしまうようだと、明後日には街中で忘年会があるのに、困ったものである。

呑む為だけに、わざわざ徒歩で街中まで出掛けて行くのか。それも馬鹿げている。うちからだと、一時間も歩いたら着くかしら。でも、相当寒そうである。



考えても始まらないので、とりあえず先日旅行先で買って来た好物の「豆餅」を、オーブンで焼いて食べる。

ワタシは豆自体はあんまり好きでないのに、何故か豆餅は好きである。黒豆をほじくり出しては、ぷちぷちと齧る。

嗚呼、懐かしい日本の味。



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