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みぃ
ワタシはうんこが出ないで困った例が殆ど無い。時差を有する旅行に出たとか人の家に泊まったとかいう様な、余程の事態に遭遇しない限り、ワタシのうんこは日々それなりの量がそれなりに一定の時間帯に排出されている。今日は何故か二度も大量なのが出たので、一寸驚いてこんな事を書いているけれど、あれは一体何事だったのだろう。 食べた物も、特に日頃より多く食べたとか少なく食べたとか、そういう変化は無かったと思う。穀類が幾つも入ったパンやご飯をいつも通りに食べたし、野菜もそこそこに食べた程度で、特に心掛けた事は無い。強いてあげれば、一日家にいたから、お茶を沢山飲んで過ごした事くらいか。 うんこと肥満や冷え性等の問題を抱えた女性との関係については以前にも書いたけれど、ワタシの冷え性についてはそういうワケで水を沢山摂るようにしたら随分良くなった。しかしそれとワタシのうんことは、特に相関関係は無いように思われる。本当にあれは一体どう理解すれば良いのだろう。 ところでうんこの話で思い出したけれど、知人にうんこが出ないで困っている奥さんと、日に四度もうんこをするダンナという夫婦がいる。 ここんちの夕食に呼ばれた時、うちはご飯が大目なのよね、と言って出されたカレーを見て、一寸肝を抜かれそうになった。 それはご飯が大皿一杯に山盛りになっており、その上からカレーは並々と溢れんばかりに盛られ、しかし当然それではカレーが足りないから、ご飯を完食しようと思ったらカレーを何度かお代わりしないといけないのだ。ご飯自体は、そうさね、普段うちで食べている茶碗の三倍強はあったか(と言ってもワタシの茶碗と貴方の茶碗はサイズが違うかも知れないので、この比較は無意味)。ワタシは食べる前に半分位に減らして貰ったのだけれど、それでも後半はもうすっかり持て余してしまった位だ。 ワタシはこれでも結構食べる女である。基本的に出されたものは残さないし、ファストフードの類に至ってはこの国のサイズにすっかり慣れてしまったから、コンビネーションで頼んだ此方サイズの草鞋若しくは赤子の顔程もあるハンバーガーにミディアムサイズのフレンチフライ(は日本的に言うところのラージサイズ)にミディアムサイズの炭酸飲料(同)を、こちらの皆さんと同様難なく完食する。 またある時には、この国の体格の良い大学出たてのオトコノコに、こんなに(俺以上に)喰う女を初めて見た、と言わしめた程のものである。全く売れ頃のいい女が、面目丸潰れ。 これは一応言い訳をして置くけれど、朝ご飯と昼ご飯、または昼ご飯と夕ご飯が一緒になってしまう事が多いから、必然的に一回の量が増えてしまうのがいけないのだ。だから平均にしたらそれ程でも無いのだろうが、偶々その日は日中食事の時間が取れなかったから、折角美味しそうなオトコノコと一緒に美味しい夕ご飯を食べましょうとなった段には、斯様な有様だったという訳である。 だからと言って、ワタシは人より格別体格が良い訳でもなければ、胃下垂でもない。尤も消化器系統の働きが幾分悪い様なので、呑み過ぎや食べ過ぎには留意する事にしてはいる。 いや、食事に寛大な夫婦だという事を言わんとしているのではないのだ。確かにこの夫婦は二ホンジン的には多少大きめではあるけれど、それでも特に肥えているという印象は無いから、まあ中年太り程度の部類に入れて良いだろうと思う。双方辛うじてまだ中年の域には達していないように思えるのが難だけれども。 ワタシが言いたいのは、奥さんはこの勢いで食べているのに、それを中々「出さない」のだから困るという事である。 そしてこのダンナは、この勢いで喰う割りに「稼ぎが無い」のだから、更に困るという事である。つまり、稼がないのに喰うだけ喰って、日に四度もうんこをするのである。(余計なお世話だが。) 元々は奥さんの方がこちらへ先に出て来ていて、ダンナは日本での仕事を辞めて後を追って来た。以来ダンナは「無職」である。奥さんは大学院で勉強していたのだけれど、始めの頃は奨学金が出たので、ダンナは奥さんの「扶養家族」という事になっていた。そしてそれが切れると、奥さんは学業の傍ら少しずつ仕事をするようになった。 「傍ら」と言っても、ダンナと自分を喰わせなければならない訳だから、結局学業に遅れが出た。お陰で彼女は、やれやれ、もう何年学校に居るのだろう。日本で途中までやってからだから、通算十五年じゃ効かないだろう。漸く受けた試験では教授も匙を投げたと人伝に聞いたから、どうなるのやら。 奥さんが大学院に行っているのに、自分が高卒では釣り合わないと思ったのだろうか。ダンナはこちらで大学に通うつもりで居ると胸を張る。初めからそのつもりで来たから、働く気は無いらしい。仕事をしようと思えば無い事も無いが、しかしそれをやってしまったら本末転倒だから、だから働かないのだと言う。 それにしては現地語会話が一向に上達しないダンナだから、ワタシにはこの理屈は良く理解出来無かったが、兎に角ダンナは働かないと堅く決めて居るという事だから、それについては放って置いた。それでは一体何をして日々過ごしているのかと言うと、夫婦が週末に通っている教会へ毎日出掛けて行っては、そこで建物の修理だの寄付品を集めたバザーの準備だのといった、「ボランティアワーク」をしているのだという。 そしてそこへ出掛ける時には決まって、それじゃあこれから「ワーク」(仕事)に行って来るから、などと言うのである。 それを聞く度ワタシは、「ワーク」じゃなくて「ボランティアワーク」だろう、とか「仕事」と言うからには金を貰ってこその「仕事」だろう、そんな事だから婚約指輪ひとつ買ってやれないのだこの甲斐性無し、等と悪態を付きたくなるのである。甚だ余計なお世話なのは重々承知だが、嫁入り前の売れ頃女子には、打って付けの反面教師である。 そういうワケで肉体労働が多い所為だろうか。ダンナは何しろ良く喰うし、また良く屁もこく。 ある時など、誘われて大人数で野外に出掛けたのだが、ふと気付くと、前方を歩く彼が恰もイヌの用足しの様に片足をひょいと上げたのでおやと思うやいな、ぶはっと破裂音が響いたから驚いた。ワタシは目を丸くして、まさか今のは屁では・・・?とたった今目の前で起きた事を信じられずに凝視しているのだが、彼は何事も無かったかの様に歩いて行く。 あの傍若無人振りには、恐れ入った。あの様子だと、いつでも発射準備は万端と見える。 ところが奥さんの方は、もう半月も出ないで困るなどと溢しているのだ。例によって水を飲めと薦めたのだが、どうやら続かなかった様だ。それきりうんこの話を聞かないから、恐らく水を飲むのは止めにして、ついでにうんこも出し渋っているに違いない。 女の方が色々なものをよく堪えるのが常だから、便意も感情も何もかも、すっかり体内に溜め込んでしまうのだろう。気の毒な事である。 とは言え、他人のうんこ事情に一々文句を言うのも無粋と言うものであろう。ワタシのうんこはお陰様ですっきりさっぱり、出るべくして日々出ているのだから、人様のうんこが何処でどう油を売っていようとも、ワタシには痛くも痒くもない話ではある。鼻面に屁を吹き掛けられさえしなければ、ワタシはただ黙って人様のうんこ事情を理解するに務めようという所存である。 それにしても出すものまで分担が行き届いているとは、今時の夫婦の間柄というのは、他人には一寸分からないものである。
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