HCUは個室だった。 かなり広めの部屋にベッドがひとつ、機械がいくつかとトイレがあった。
叔父は俺がベッドに横になるのを見届けて「明日の朝また来るから。」といって帰っていった。 俺は身体に心電図の機械とかをつけられた。 若い看護婦さんにあばらの浮いた胸をみられるのは恥ずかしい。 可愛い顔をした看護婦さんだとなおさらだ。 いやーかなり可愛い看護婦さんだった。 女医さんに美人は少ないが看護婦さんに美人が多いというのは何故だろう?
現れた先生に「痛みはどうですか?」と聞かれる。 30過ぎといった感じの先生だ。 マスクと眼鏡のせいで顔はよくわからないが目が優しそう。 「点滴の中に痛み止めははいっているけどこれが効かない時はもっと強いのをいれるから我慢しないでいってね。」と言ってくれる。 あと「眠れるかな?眠れないなら薬だしてあげるからこれも遠慮しないでいいいよ。」と。 「僕はやることがあって一晩中起きているからいつでも呼んでくれていいからね。」とも。 昼間も仕事がある上に徹夜で翌朝も仕事なんて医者というのは大変な職業だなぁとか思う。 俺につとまるのだろうか・・・と不安になった。
部屋は明るく(HCUは消灯しないらしい)看護婦さんは頻繁に来るし確かに寝にくそうな部屋だった。
が痛みがだいぶおさまってきた俺は眠くて仕方なかった。 あれほどほしかった睡眠薬にもちっとも心動かされない。 ここのところの不眠症が嘘のようだった。 「ここは家じゃない。」ということがこんなにも心を軽くするものなんだろうか?
この後は退院するまでの2日間俺はほとんど眠っていた。 看護婦さんが検温にきたりお医者さんが回診にきて起こされてもまたすぐ眠れた。 目がさます度に自分の家じゃないということがとてもとても嬉しかった。 とにかく寝て寝て寝たおした入院だった。
退院して叔父に言われた。 「この程度ですんでよかったなぁ。俺はもっとひどいことになるんじゃないかってずっと心配していた。」と。 もっとひどいって叔父はどんなことを想像していたのだろう。 あと「もうこれ以上お前の苦しむところはみたくない。」とも言われた。 ごめんなさい。 俺は多分叔父が想像するほどは苦しんでいないと思う。
この入院騒動があって俺も精神的に少し変わった気がする。 こんな馬鹿馬鹿しいことはもう繰り返したくない。 生産的じゃない。 だからいろんなことを言われてもその言葉を極力聞き流すことにした。 相手には悪いけどその言葉と自分を照らし合わせて自分の悪いところをなおそうとかそういう気持ちもまったくなくなった。 相手の気持ちを理解しようとつとめることもやめた。 逃げかもしれないけど今後こういうことは避けようと思ったんだ。 俺が倒れても誰も喜ばないし何のいいこともないんだから。
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