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■ 正義は存在した(F1日本グランプリ決勝)
2006年10月08日(日)
題名は、ルノーチーム監督フラビオ・ブリアトーレの言葉である。まさにそうとしか言わざるを得ない“奇跡”が起こった。まるでそこにはF1を司る「神」が存在するかのような出来事だった。
20回目の開催をもっていったん幕を下ろす鈴鹿での日本グランプリは、今シーズンを沸かせたフェルナンド・アロンソ(ルノー)、ミハエル・シューマッハ(フェラーリ)の新旧王者による同ポイントでのタイトル決定戦と、その歴史に相応しいレースとなった。その運命の決勝スタートで好スタートを切ったのは5番グリッドのアロンソ。フェラーリとの間に入るトヨタの2台の背後にぴたりとつけると、1コーナーから2コーナーにかけてヤルノ・トゥルーリのイン側に並び、その出口で4位に浮上する。一方3周目の1コーナーではミハエル・シューマッハがチームメイトのフェリペ・マッサを交わしトップに浮上。この周にはファステストラップも記録し、2位以下とのタイム差を広げていく。4位アロンソは3位のラルフ・シューマッハとの差を徐々に詰めると、13周目の1コーナーの飛び込みでラルフをオーバーテイクし3位に浮上。その後レースは中盤に向けてミハエル・シューマッハがトップ、その約5秒後方にアロンソが続き、新旧王者がマッチレースを展開した。
そして奇跡は、上位陣の2回目のピットストップ後に起こった。35周終了時に2位アロンソ、その翌周にトップのシューマッハが2回目のピットストップを行ない、それぞれ終盤に向けての優勝争いに備えるが、シューマッハはコースに復帰した周のデグナーカーブで何とマシン後部から激しい白煙を上げスローダウンし、デグナーカーブを越えたところでコース脇にマシンを止めてしまったのだ。これでトップに立ったアロンソは2位のマッサに16秒以上の差をつけてトップチェッカーを受け、シューマッハとのポイント差を10に広げ、自身2回目のドライバーズタイトル獲得に王手をかけた。
これで最終戦ブラジルグランプリでわずか1ポイントでもアロンソが獲得すれば、それでシューマッハの順位如何にかかわらずタイトルはアロンソのものとなる。シューマッハは優勝しても、アロンソがノーポイントに終わらない限りチャンピオンを獲得することはできない。また、またルノーとフェラーリとの間で戦われているコンストラクターズタイトルも、今回マッサの2位に対してルノーが1・3位を占めたことにより9ポイントの差。順当であればこちらもルノーの優位は揺るがない状況となった。
1998年以降、圧倒的な信頼性を誇ってきたフェラーリエンジンのトラブルによるミハエル・シューマッハのリタイヤは、実に2000年のフランスグランプリ以来6年ぶりのことだ。その考えられないようなミハエル・シューマッハのエンジントラブルが、この最も重要な自身最後のシーズン、しかもタイトル争いを大きく左右する日本グランプリの決勝で起こったのだ。これを奇跡と言わずして何と言おう。 今シーズンのイタリアグランプリでは、昨シーズンから圧倒的な信頼性を誇っていたライバルのルノー、フェルナンド・アロンソにも同様のエンジントラブルが起こった。しかしそれは、前日の予選でフェラーリの八百長行為によりスターティンググリッドを後方に押しやられたアロンソが驚異的な追い上げを見せたことでエンジンに負担がかかったもので、今回のシューマッハのケースとは異質のものだ。イタリアグランプリでフェルナンド・アロンソが理不尽に失った10ポイントが、今回のシューマッハの奇跡的なリタイヤによって戻ってきた。まさに神の息吹が、シューマッハにいたずらしたのだ。
もしシューマッハが今回そのままリタイヤすることなく優勝していたら、シューマッハが8度目のタイトルを獲得して引退する可能性は非常に高かっただろう。しかし、モナコでの予選の一件やイタリアでの一件などのアンフェアな行為によってシューマッハがタイトルを獲得していたら、F1はもはやスポーツではなくなってしまうのだ。今シーズン、シューマッハがこのまま8度目のタイトルを獲得するということは、これからのF1にとって絶対にあってはならないことなのである。すでにイタリアグランプリで引退を表明しているシューマッハに、もはや8度目のタイトルを獲得するチャンスはない。
正義は、最後の最後に訪れたのだ。
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