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■ キミ・ライコネンにエールを
2006年09月12日(火)
先週末に行われたF1第15戦イタリアグランプリの決勝後、フェラーリチームから来シーズンのドライバーラインアップがリリースされた。すでにレース終了後の記者会見の席上でミハエル・シューマッハが今シーズン限りの引退を表明しており、ドライバーラインアップは大方の予想通り、現マクラーレン・メルセデスのキミ・ライコネンの新加入とフェリペ・マッサの残留というものだった。
ミハエル・シューマッハが5年間君臨したワールドチャンピオンの座から陥落した昨シーズン、多くのシューマッハファンは「今年シューマッハがチャンピオンになれなかったのは、マシンがベストではなかったから」と言い訳をしていた。
その通りである。
F1とはドライバー同士の戦いであると共に、マシン同士、チーム同士、エンジン同士、タイヤ同士の争いであり、その総合力で競い合う“モータースポーツ”である。従ってマシンがベストでなかったシューマッハが昨年タイトルを逃したのも紛れもない“敗北”であり、ベストなマシンがあれば、そこそこ速いドライバーならチャンピオンになれてしまうと言っても過言ではないのだ。 ちなみに、ミハエル・シューマッハが初めてチャンピオンに輝いた1994年、シューマッハはベネトン・フォードに乗っていたが、よく言われる「シューマッハはベネトン時代、決してベストではないマシンでチャンピオンになった」というのは間違いである。1994年のベネトン・フォードのマシンはエンジンこそV8の非力なものだったが、現フェラーリのデザイナーでミハエル・シューマッハのチャンピオンマシンを長年手がけてきたロリー・バーンの設計したシャシーは、非力なV8を考慮して中高速粋での抜群の安定性を実現しており、シャシー性能だけを見れば当時のウィリアムズを凌いでおり、ベストマシンであったことは明らかである。
「マシンがベストでなかったからチャンピオンになれなかった」と言えば、シューマッハよりもむしろキミ・ライコネンの方がより如実だろう。ライコネンは今や、昨年史上最年少でチャンピオンに輝いたフェルナンド・アロンソ(ルノー)と並んで、ミハエル・シューマッハを凌駕するドライバーである。ところが、アロンソが信頼性抜群のルノーエンジンによって昨年シューマッハを打ち倒したのに対し、ライコネンは毎年タイトル争いには絡むものの、2000年までのミカ・ハッキネン時代から続いている慢性的なメルセデスエンジンの信頼性不足などにより、トップ走行中にリタイヤすることもあり、“速いがもろいマクラーレン”の足かせによってこれまで何度もタイトルを逃してきた。もしメルセデスエンジンにフェラーリやルノー並みの信頼性があれば、ライコネンはこれまでに1度ならずチャンピオンになっていただろうし、シューマッハの5連覇もなかっただろう。
そのライコネンが、速さと信頼性を兼ね備えたフェラーリに移籍するのだ。
これはライコネンにとっては大きな人生の節目となることは間違いない。おそらく来シーズンはライコネンが初タイトルをものにする可能性が非常に高い。クールなライコネンがフェラーリでシューマッハ同様の待遇を受けるかどうかはわからないが、ライコネンにとっては、マシンが速ければ、そして最後まで走ってくれればどうでもいいのである。ただ、個人的にはライコネンにはシューマッハ的な待遇は受けて欲しくない。フェラーリには同世代のチームメイト、フェリペ・マッサとのガチンコ勝負を期待したい。
これまでマクラーレンで苦汁をなめ続けてきたライコネン、来シーズンは“壊れないフェラーリ”で思う存分今までのうっぷんを晴らして、悲願の初タイトルを手にして欲しいものである。ライコネンはチャンピオンになるべきドライバーだ。
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