Mako Hakkinenn's Voice
by Mako Hakkinenn



 スーパーアグリ新型車はシームレスシフト!
2006年05月16日(火)

 今シーズンからF1に参戦している純国産コンストラクターズチーム「スーパーアグリF1」ですが、第6戦スペイングランプリが終わったばかりの今日、非常に興味深いニュースが入ってきました。現在スーパーアグリは、4年前の旧アロウズのマシン「A23」をベースに作られたマシン「SA05」に改良を加えながら参戦すると共に、チームオリジナルの新型マシン「SA06」の開発を進めており、そのデビューは7月のフランスグランプリになると見られていますが、何と!その新型マシンSA06には、シームレスシフトを備えた最新仕様のギヤボックスがホンダエンジンに装着されるということが明らかとなったのです!

シームレスシフト・ギヤボックスとは、その名の通りギアシフトするときにシーム(seam=繋ぎ目)がないギアボックスという意味で、ギヤシフト時のタイムラグを最小限にする新システム。コースによっては1周でコンマ4秒は短縮できるという優れものです。1周でコンマ4秒ということは、単純に計算すれば10周で4秒も差が付いてしまうと言うことですね。
 いわゆる無段階変速(CVT)はF1では禁じられていますから、一応シフトチェンジはドライバーがステアリングの裏にあるパドルでおこなっているのですが、そのギアシフトの際にスムーズにギアが切り替わり、従来より加速時の速さが向上し、エンジンへの負担も軽減すると言われています。しかし実際のところこのシームレスシフトの構造は詳しくはわかっていません。

 F1ではすでにマクラーレン、ホンダ、ウィリアムズらトップチームが使用していると言われていますが、それもはっきりとはわかっていません。ただ、これらのチームがシームレスシフトを開発していたのは間違いないようで、ウィリアムズとホンダは早い時期からこのシームレスを完成させていたようです。
 さらにフェラーリは、先月25日の時点でテクニカル・ディレクターのロス・ブラウンが「ウチがシームレス・シフトを投入するのは今年半ばということになるだろうが、しかしこれがなければ太刀打ちできないというものでもない。ウチもルノーもこれを使っていないが、しかし現実問題マクラーレンやホンダらよりも速いのだからね。人々が言うほどシームレス・シフトが大きなメリットを持つというものではないんだよ」とコメントしていましたが、F1界では「使っていない」と言いながら実際は使っていたり、「交渉してない」と言いながら実際は内定していたりといった狸の化かし合いは日常茶飯事ですから、現在熾烈なトップ争いを演じているフェラーリとルノーの2強がシームレスシフトを本当に使っていないのかというのも疑問です。

 スーパーアグリのテクニカル・オフィサー、マーク・プレストンはこのシームレスシフト・ギアボックスに関して「われわれは1周あたり最低2秒から3秒短縮する必要がある。もっともそれは可能だと思っているがね」と自信のコメントをしていましたが、やはり新開発の機構であるため信頼性はまだ未知数で、おそらく導入されてからしばらくの間はトラブルが出たりして、その効果が正常に現れ始めて他のチームに浸透していくまでには、かなりの改良とテストが必要になってくると思います。

 しかし、よくよく考えてみればスーパーアグリはどのみち現状ではテールエンダーですし、7月のフランスグランプリから新型車SA06が投入されても、せいぜい最下位争いが関の山でしょう。ですから、その1年目のいわばチームの学習シーズンのうちにシームレスシフトのような新技術を投入しておけば、いずれ徐々にマシンやチームが進化してまともにレースで戦えるようになったときに、シームレスシフトも十分熟成されて信頼性もある程度確立されているのではないでしょうか。そう言う意味では、今シーズンは大して効果は出ないかもしれませんが、長い目で見れば早めに導入しておくことに意味はあると思いますね。

 スーパーアグリついでにもうひとつ、FIAが井出有治のスーパーライセンス失効を決めたことにより、第5戦ヨーロッパグランプリで急遽スーパーアグリからF1デビューを果たし、先週末に行われた第6戦スペイングランプリでも出走した28歳のフランス人、フランク・モンターニュですが、彼はモナコグランプリまではスーパーアグリで走ることが決まっているようですが、その後に関してはまだ未定のようです。
 ところが、マーク・プレストンは「彼は私の周囲では最高の男だよ。とにかく初めてわれわれのクルマに乗ったとき、その最初のインストレーションラップですら彼はエンジンとマシンのトラクション・コントロールについてフィードバックを返して寄こしたくらいさ。前に一度もそのクルマに乗ったことがないのにだよ。とにかく彼がほんとうに優れたテストドライバーであったことがそれだけでもわかったね」と手放しでモンターニュを賞賛しているというのに、チーム代表である鈴木亜久里は、山本左近の起用を視野に入れているようです。

 山本左近は昨年の終盤ジョーダン(現ミッドランド)のサードドライバーに抜擢された23歳のドライバーで、日本グランプリで金曜日のセッションを走った際には、レギュラードライバーだったナイレン・カーティケアンとティアゴ・モンテイロより速いタイムを出してその非凡さをみせつけました。しかし山本にとっては鈴鹿は走り慣れたホームコースのようなもので(まあカーティケアンもフォーミュラニッポンで参戦していたんですが)、実際テスト経験も豊富であるとは言えず、鈴木亜久里が“オールジャパン体制”にこだわってテスト経験豊富なモンターニュを切って山本を起用するというのは、あまり感心できませんね。

 しかし、実際鈴木亜久里本人も、現在チームが置かれた厳しい状況を憂慮しており、あえて今の時期に将来のある日本人ドライバーの起用には走らないのでは、との見方も強いようです。

 ……だから、とりあえず今年は琢磨とモンターニュでいいのでは?



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