Mako Hakkinenn's Voice
by Mako Hakkinenn



 井出のライセンス取り消しは妥当
2006年05月11日(木)

 5月8日付のVoiceでもお伝えしましたが、スーパーアグリでサンマリノグランプリまでセカンドドライバーを務めた井出有治が、FIAから昨日正式にスーパーライセンスを取り消す旨の通告を受けたようですね。

 チームはこの件に関して、オフィシャルサイト上で経緯に関して説明をおこなっています。それによると、FIAからはまず、井出に対してスーパーライセンス取り消しを含めた審議が行われている通知があり、その前にレースドライバーから外してはどうかという勧告があったそうです。チームはライセンス取り消しという最悪の事態を避けるため、断腸の思いで井出をヨーロッパグランプリで走らせない決断を下したとのことですが、それにもかかわらず今回の通告が下されてしまったようです。この件について鈴木亜久里チーム代表は「残念でなりません」とのコメントを残しています。

 今後のスーパーアグリのセカンドドライバーについては、ヨーロッパグランプリでもセカンドドライバーを務めたフランク・モンターニュがスペイングランプリとモナコグランプリに参戦するとのことですが、それ以降については「多くの関係者と議論を重ねていく」としています。チームは「オールジャパンでの挑戦」を続けていくとの姿勢を示しており、今後新たに日本人ドライバーがチームに加わる可能性もあります。

 サンマリノグランプリでのクリスチャン・アルバースとの接触以来、前代未聞とも言えるFIAからのドライバー交代の勧告に始まり、ついに今回、スーパーライセンス剥奪という異例の結果となってしまいました。井出のスーパーライセンス再取得の可能性は残されており、チームは井出がF1ドライバーとして復帰するチャンスを今後も探っていくそうです。

 僕の個人的な意見を言わせてもらえば、今回の井出有治のスーパーライセンス剥奪は妥当だったと思います。今更こんなことを書いても後の祭りなのですが、スーパーアグリが井出有治をレギュラードライバーに起用したのは、時期尚早でしたね。
 もちろん、シーズンが開幕するまでは井出のレースでの実力は未知数だったわけで、仮にも井出は日本モータースポーツの最高峰フォーミュラ・ニッポンの準王者ですから、あくまで“候補”としてなら問題はなかったでしょう。しかし、チーム側は井出に対して十分なテスト機会を与えることができませんでした。そのため井出は事前にF1マシンの経験を積むことができず、ぶっつけ本番に近い状態でレースに臨まなくてはなりませんでした。つまり井出は、F1ドライバーとしては不十分な状態でレースに出なくてはならなかったというわけです。

 今思えば、開幕戦の段階でF1ドライバーとしてはまだ不十分であるという時点で、チームは井出のレギュラー起用を見送った方が得策だったと思います。チームは「オールジャパンでの挑戦」にこだわっていますが、僕としては別にドライバーまで2人とも日本人にする必要はないと思いますし、日本人コンビにこだわって経験不足のドライバーを起用するよりは、ゆくゆくはオールジャパンでいくにしても、最初は経験豊富なドライバーを起用して、有効なデータを収集してマシン開発に活かした方が、長い目で見ればチームにとっても有益なはずです。
 しかも、井出有治を不十分な状態でデビューさせてしまったことで、もしかして十分に経験を積んでからデビューさせていればまともに戦えたかもしれない彼に、不要な汚点をつけてしまったことにもなるわけです。

 まあ、チームとしても、事前にテストで経験させることができなかったから、実戦で経験を積ませようと考えて、つまり井出の実力に賭けて最終的に井出をセカンドドライバーに起用することを決めたのでしょう。そしてFIAとしても、昨年フォーミュラ・ニッポンでシリーズ2位とスーパーライセンス発行に必要な条件を満たしているため、井出にスーパーライセンスを発行したわけです。
 しかし実際に蓋を開けてみると、井出は開幕4戦で十分な結果を残すことができず、それどころか経験不足故の危険な走行が目に付き、様々な方面から批判を浴びることとなってしまいました。このことに関しては井出だけに責任があるとは言えず、むしろ井出に十分なテストの機会を与えられなかった、そしてそれにもかかわらず井出をデビューさせてしまったチーム側に大きな責任があると思います。

 やはりF1ドライバーとしてまだ未熟である、つまりF1ドライバーにはまだふさわしくない以上、F1で走らせるというのは問題がありますよね。危険も多いですし、何より世界最高峰のモータースポーツという格調を下げてしまうことになりますから。

 そういうわけで、今回の井出君は、必要な条件は満たしていたので一旦はスーパーライセンスを発行したが、その後の走りでやっぱりスーパーライセンスにはふさわしくないと判断され、取り消されたと言うことですね。要はスーパーライセンスも、普通運転免許と同じというわけです。免許を取得しても、違反が多くてクルマを運転する資格がないと判断されたら、運転免許を取り消される。ただそれだけのことです。

 とりあえず当面は、琢磨とモンターニュでいいんじゃないでしょうか。

 心配なのは、チームがオールジャパンに固執しすぎて判断を誤ることです。



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