|
|
■■■
■■
■ トヨタ、ガスコイン更迭を語る
2006年04月25日(火)
今月5日付のVoiceでもお伝えしました通り、突然マイク・ガスコイン元テクニカルディレクターを解雇して、チーム内外に大きな衝撃をもたらしたトヨタですが、そのガスコイン更迭について、TMGの木下美明モータースポーツ部長兼TMG副社長が、先週末のサンマリノグランプリで初めて口を開きました。それによると、チームの公式発表にもある通り「開発を巡る哲学の違い」が最大の要因であるとのことです。
「ガスコインとの基本的な考え方の違いは私が2年半前にモータースポーツ部長に就任した時点から感じていました。その意味ではお互いにガマンを続けてきた部分もあったので、正直、良くここまで持ったなという気持ちすらします。例えば開発の方向に関して5つの可能性があったとしたら、我々の考え方はその5つをすべて平行に試して、その中から本当にベストなものを見つけ出していくというモノですが、ガスコインは彼のF1での経験に基づいて、その中から1つの方法を選択し、そこに全力を傾けるというものでした。実際、彼がチームに来た時点でTMGには十分な経験もなく、混沌とした部分がありましたから、彼のようなカリスマのある人物がそうした経験に基づいて決断し、ものごとの優先順位を決めていくという部分でのメリットは大きかったと思います。しかし、チームが今のレベルに来たからには、経験だけで1つの可能性に絞り込んで、他の可能性を捨ててしまうのではなく、より幅広い方向性を持ってマシンの開発を行っていく必要がある。そういう部分でお互いの考え方が違うことがハッキリしたため、このままの形で続けていくことはできないと判断したのです。」
要するに、ガスコインが加入した当初は、まだチームに十分な経験がなかったので、彼の今までの経験に基づくやり方は開発を進めていく上での大きな牽引役となったが、トヨタも経験を積み、自分たちの力で物事を多角的に考えられるようになったので、ガスコインの単一的なやり方がウザくなったので首を切った、ということですね。
個人的な意見ですが、トヨタのそうした傲慢で虚栄的な体質が、世界トップクラスの自動車メーカーでありながら、F1で5年の歳月を費やしても未だ勝利を挙げられない大きな要因になっているのではないでしょうか。 トヨタは目先の刹那的な結果にとらわれすぎているんですね。そしてガスコインを切り捨てた今、マシン開発の牽引役を失い、今後の開発では様々な可能性にとらわれすぎて迷いが生じ、方向性を確立することは難しくなるでしょう。それでもトヨタは「我々のやり方が正しいのだ」とうぬぼれ続けるのでしょう。
トヨタは現在参戦しているF1チームの中でも特に企業色の強いチームですから、社員のリストラのように「結果が出せない」「良いものが作れない」となったときに、その責任を外部のものに押しつけて、首脳陣はまったく責任を感じてはいないのでしょう。 今回のガスコインの一件だけでなく、参戦2年目の2003年にも、参戦1年前から開発やテストに携わりチームに貢献してきたミカ・サロとアラン・マクニッシュの両ドライバーを、いともバッサリと切り捨ててしまいましたからねえ。入れ替わりで加入したクリスチアーノ・ダ・マッタとオリビエ・パニスも2004年シーズンを以てドライバーから外され、現在のラルフ・シューマッハとヤルノ・トゥルーリ体制になっています。これでは継続的なマシン開発などできるわけないですよね。
F1で成功するには、フェラーリや数年前のマクラーレンのような、長いスパンを見据えた“継続性”が重要であると僕は思います。またマシン開発に関しても、経験に基づいた“確固たる方向性”が効率的な開発力に繋がっていくと考えます。ですからトヨタのように結果が出ないからといってコロコロと体制を節操なく変えてしまったり、いくつかの可能性の中から幅広く開発していくなどと悠長なことを言っているようでは、いつまで経ってもトップチームになどなれないわけですね。
ちなみにガスコインの後任に関しては、技術部門全体の統括に関してパスカル・バセロンを充て、永島勉モータスポーツ部門マネージャーとのコンビで運営していく方針で、今のところ外部から新たな人材を招くことは考えていないそうです。 TMGのジョン・ハウェット社長は「全体的には、パスカル・バセロンがガスコインの仕事を引き継ぐことになるが、彼がその後任のポジションという訳ではない。すでにわがチームはそうしたカリスマなしに、組織全体で作業が進むようなシステムになっているからね。ガスコインが去ったとしても、それで何かチームが大きく変わるということはない。」と語っています。
いっそのこと、ドライバーも社員から起用してみてはいかが?
|
|
|