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■ 大人のムード、モダン・ジャズ・カルテット
2006年04月10日(月)
今回も昨日に引き続き、「CafeM−NEST」お薦めのLPレビューをお送りしたいと思います。今回ご紹介するのはこちら。
モダン・ジャズ・カルテット「The Last Concert」 (1974)
1946年にミルト・ジャクソン(バイブラフォン)がジョン・ルイス(ピアノ)、レイ・ブラウン(ウッドベース)、ケニー・クラーク(ドラムス)とカルテットを結成。52年の末にブラウンの後任としてパーシー・ヒース(ウッドベース)が参加し、正式にモダン・ジャズ・カルテット(MJQ)と名称を変更します。55年にクラークの後任としてコニー・ケイ(ドラムス)が加わり、74年まで活動しました。その後何度か再結成されましたが、94年にコニー・ケイが他界し正式解散。室内楽風ジャズとして未だにクラシック・ファンに根強い人気を誇るグループです。
彼らは40年にも渡ってアンサンブルを演奏するなかで、一度もレギュラーメンバーにホーンプレーヤーを入れることなく、クラシックに影響をうけた作曲を通して、テーマを発展させることに集中しました。また「ジャンゴ」や「バグス・グルーブ」など幾つかの代表的なジャズ・スタンダード・ナンバーも彼らの手によるものです。ちなみにバグスとは、ビ・バップのスタイルをバイブラフォンに取り入れたミルト・ジャクソンのニックネーム。 しかし、グループ内のコンセプトを仕切るのは、もっぱらピアニスト兼アレンジャーそしてリーダーでもあるジョン・ルイスの仕事でした。もともとヨーロッパ室内音楽を学んでいたルイスは、アレンジの際、クラッシック音楽における対位法やフーガとジャズ特有のインプロヴィゼーションをミックスさせることを試み、J・S・バッハ作品のカバーアルバムもリリースしているほどです。多くのクラッシック作曲家同様、ルイスも古典劇の音楽制作に積極的で、コンメディアデラルテ(イタリアの古典即興喜劇)の曲も制作したことがあります。
さて、今回ご紹介するアルバムは、1974年11月25日にニューヨークのリンカーン・センターにあるアベリー・フィッシャーホールにおいて、20年以上に渡って数あるジャズグループの王座に君臨してきた不朽の名バンド「MJQ」がおこなった、ラストコンサートの模様を収録したライブアルバムです。 で、このアルバムはラストコンサートを収録しただけあって、曲数は2枚組で14曲にも及び、そのすべての曲をご紹介するとあまりにも膨大な量になってしまうので、収録曲の曲名だけをご紹介し、アルバム全体を通して聴いた感想を書きたいと思います。ちなみに僕はこのMJQの存在は名前だけ知っていましたが、実際にそのサウンドを聴くのは今回が初めてです。なので今回もまったく先入観や曲に関する情報概念のない状態で感想を書きます。 収録曲は「朝日のようにさわやかに」「シリンダー」「サマータイム」「トラヴェリン」「Aマイナーのブルース」「ひとしれず」「バグズ・グルーヴ」「コンファメイション」「ラウンド・ミッドナイト」「チュニジアの夜」「ゴールデン・ストライカー」「スケイティング・イン・セントラルパーク」「ジャンゴ」「ホワッツ・ニュー」。
前述のように、このMJQのバンド編成はバイブラフォン(鉄琴)、ピアノ、ウッドベース、ドラムスの4人編成で、トランペットやサックスといったホーンプレイヤーがいません。そのため全体的な曲の展開はすべてドラムのリズムにウッドベースのベースラインが乗り、さらにその上にバイブラフォンとピアノの旋律が重なっていくという演奏で統一されています。ですからスタンダードジャズというよりはむしろクラシックジャズで、このアルバム自体は1974年に演奏され収録されたものですが、時代的には50年代〜60年代当時のオーソドックスなジャズと言えるでしょう。
おそらく現代の20〜30代の世代がこのアルバムを聴いたら、多くの人が退屈さを覚えるのではないでしょうか。それほどこのMJQの演奏は、シンプルでオーソドックスなのです。演奏方法も昨日ご紹介したチック・コリアの目にもとまらぬ速さで流れるように弾き回す天才的な演奏法とは違い、非常にシンプルな演奏法は古めかしさを感じずにはいられません。
しかし、そもそもジャズというのは演奏テクニックの競い合いだけでなく、そこには独特の世界が存在するわけで、特にMJQは50年代から解散した74年までアメリカで愛され続けたグループであるため、彼らがジャズシーンに与えた影響は非常に大きく、50〜60年代アメリカを強烈に印象づける雰囲気を持っているのは事実です。 僕が生まれたのはこのアルバムがリリースされた翌年の1975年ですから、当然50〜60年代のアメリカなど知るはずもないのですが、その当時の映画、もしくはその当時を時代背景とした映画は何作か観ているので、その当時のレトロな雰囲気は何となくイメージできます。このアルバムを聴くと、アメリカ人でもないのに、不思議とそんな古き良きレトロ・アメリカの映画の世界に入り込んでしまったような、ノスタルジックな感覚を覚えます。しかも聴いている音はCDではなくレコード盤ですから、時折聞こえるレコード独特の「ボツッ、ボツッ」というかすかなノイズが、さらにレトロ感を強調してくれます。
バーボンを片手に、大人のムードを楽しみながら聴くアルバムですね。
モダン・ジャズ・カルテット「The Last Concert」でした。
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