Mako Hakkinenn's Voice
by Mako Hakkinenn



 2005鈴鹿、期待から落胆、そして失望……
2005年10月10日(月)

 先週の日曜日にF1第18戦日本グランプリの決勝が行われましたが、前日の予選で5番グリッドを獲得し、母国での表彰台も期待された日本人ドライバー佐藤琢磨(BAR・ホンダ)は、スタート直後の1コーナーでアウト側に流れてしまいコースオフを喫してしまいました。さらにコースに戻ろうとしたところにルーベンス・バリチェロ(フェラーリ)が現れ接触。両者はコースに復帰しますが、マシンを修復するため、ピットインを余儀なくされました。琢磨はフロントウイングの交換と給油を行い、バリチェロとともにいきなり最後尾に後退してしまいました。

 その後琢磨は懸命に追い上げを試みたのですが、今度は10周目の最終シケイン手前で、ヤルノ・トゥルーリをパスしようとしてインに入ったところで接触してしまい、琢磨のマシンには大きなダメージはなかったものの、トゥルーリのマシンはサイド部分が大きく破損し、その場でリタイヤとなってしまいました。

 佐藤琢磨は今シーズン、不運やミスが重なり思うような成績を上げられず、2戦前のベルギーグランプリではミハエル・シューマッハに追突して波紋を呼びました。その直後にBAR・ホンダはジェンソン・バトンの来季残留を発表し、琢磨は事実上BARのレギュラーシートを失うこととなりました。
 ところが、その数日後に状況が一変し、まずホンダがBARを完全買収したと発表し、来シーズンはBARがオールホンダになることが明らかになりました。さらにその発表と同時に、来シーズンは新チームがF1に参戦し、ホンダがそのチームにもエンジンを供給するという驚愕の事実も明らかとなりました。そしてそのホンダエンジンを搭載する新規参入チームから、佐藤琢磨にレギュラードライバーとしてのオファーが来ていることも発表されました。

 そんな状況の中での、琢磨の今回の出来事は、少なからず来季のドライバー生命に影響してくることは間違いないでしょう。琢磨はこれまで幾多に渡って接触事故の原因を引き起こしているとされ、FIAではブラックリストに入っているという噂が流れ、最悪の場合F1参戦に必要なスーパーライセンスの剥奪もあり得るという噂まで飛び交っています。
 また琢磨と接触したヤルノ・トゥルーリは「琢磨はF1に必要ない」と厳しく批判し、トヨタの冨田務代表は「ドライバーは攻撃的であるべきだが、しかしフェアに戦わなくてはならない」とコメントしました。

 今回の琢磨とトゥルーリのアクシデントは、レース後にFIAのレース・スチュワードによって審議され、双方のドライバーとチームマネージャーを別々に呼んで映像を見せて事情聴取を行い、最終的に琢磨に否があると判断され、琢磨は今回の13位というレース結果から除外する処分が下されました。

 結論から言いましょう。琢磨は、今のF1には向いていないようです。

 放送された事故の瞬間の映像は真横から捕らえられたもので、上空から撮影されたものではないので、僕の目から見てどちらに否があるのかは判断できませんが、今回の琢磨とトゥルーリの一件は、もはやどちらに否があるという問題ではありません。琢磨が立て続けに接触事故を起こしてしまったことが問題なのです。

 今回のレースでは、共にシケインで1周目と10周目にそれぞれ接触して一方のマシンがはじき出されるという同じようなアクシデントが起きました。しかしその処分は明らかに分かれ、前者のビルニューブが25秒タイム加算に留まったのに対し、後者の琢磨には失格処分という重いペナルティ。琢磨は先に述べたようにベルギーグランプリ時にもペナルティを受けていますが、この時もピッツォニアが罰金の処分なのに対し琢磨には予選グリッド10番降格という重いペナルティを受けていることから、FIAからはブラックリスト登載者にされていると受け止められているようです。
 今回も再びアクシデントの原因者ということで、周囲の目は厳しいものがあります。当事者のトゥルーリが批難するのはともかく、トヨタの冨田務代表が公式リリースで名を挙げて琢磨について批難したことは衝撃を与えています。

 今回の琢磨とトゥルーリのアクシデントは、両者レースをしていた結果、アクシデントを起こしてしまっただけのことです。そしてたまたま琢磨は運悪くアクシデントが重なってしまっただけのことです。
 しかし、立て続けに接触事故を起こしてしまった以上、言い逃れはできません。単独事故で勝手にコースアウトしてリタイヤするならともかく、今回もベルギーの時も、トゥルーリやシューマッハといった、とばっちりを食ってしまったドライバーがいるわけですから。そう言う意味では、琢磨は批判されても仕方がないと僕は思いますね。「またあいつかよ!」と言われて当然でしょう。

 ただ、今回は鈴鹿に観戦に来ていたファンはもちろん、日本中の多くの琢磨ファン、トゥルーリファン、トヨタファンが期待していたのは紛れもない事実です。そんな多くの期待を、琢磨は台無しにしてぶち壊してしまいました。はっきり言って期待を大きく裏切られました。失望しました。
 トゥルーリとの接触だけではありません。1コーナーでのオーバーランもそうです。琢磨は鈴鹿で期待に応え良い結果を残すためにも、予選5番手という絶好のチャンスを無駄にしないためにも、もっと慎重に行くべきでした。

 トヨタの冨田務代表が言っていた言葉は、半分は同意できます。ドライバーは攻撃的であるべきです。しかし僕は、琢磨がフェアではなかったとは思いません。ただ、慎重さが足りない。

 さて、ここから書くことは、今回の件に関して琢磨に否定的な方、そしてトヨタファン、トゥルーリファンの方にとっては許し難い内容かもしれませんが、あえて書かせていただきます。

 今回のトゥルーリとのアクシデント、そしてベルギーでの明らかに琢磨に否があるミハエル・シューマッハとのアクシデントも含め、琢磨がこれまで起こしてきたすべてのアクシデントは、他のドライバーが起こしてきたアクシデント同様、単なる「レースアクシデント」に過ぎない。
 そして、F1はただのパレードではない。レースなのだ。すべてのドライバーは、前をゆくライバルを抜こうとし、後ろから追い上げるライバルに抜かれまいとする。レースは、その意地と意地のぶつかり合いに他ならない。よってコーナー手前で一方が一瞬のチャンスを突いてインに飛び込み、もう一方は抜かれまいとインを締めようとする。その結果両者が接触してしまうのは、レースとしてごく当たり前のことであり、あって当然のことである。

 しかしながら、ここ数年のF1は、ただでさえグルーブドタイヤという意味のないタイヤのせいでオーバーテイクが激減しているにもかかわらず、接触した際の処罰がうるさくなり、はっきり言ってレースとしては生ぬるいものになってしまった。そしてその処罰は、明らかに琢磨に対してだけ厳しすぎる。これは紛れもない事実である。

 僕は声を大にして言いたい。公平に処罰を与えられないのであれば、処罰などやめてしまえ。そして相当悪質で危険なアクシデントを除いて、いちいち接触や追突でピリピリ審議などするな。審議したいなら、処罰を与えたいなら、公平にせよと。

 もし来年彼にシートがあるのなら、来年に期待しましょう。



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