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■ ミカ・ハッキネンの再来と世代交代
2005年10月09日(日)
今日はF1第18戦日本グランプリの決勝が三重県の鈴鹿サーキットで行われました。今回のレースは様々なことが起こりました。見終わった今は、正直非常に複雑な心境です。母国での表彰台も期待された佐藤琢磨(BAR・ホンダ)は5番グリッドという好位置からスタートしましたが、その直後の1コーナーでコースオフしてしまい最後尾に後退、その後10周目に最終シケインでヤルノ・トゥルーリ(トヨタ)と接触し、トゥルーリをリタイヤに追い込んでしまいました。
琢磨については明日改めて書くことにして、今日はその他の点に触れましょう。
さて、マクラーレン・メルセデスのキミ・ライコネンは12歳からカートでレースキャリアをスタートさせ、英フォーミュラ・ルノー、フォーミュラ・フォードを戦い、F3未経験で2001年にザウバーからのデビューを決めました。その年の開幕前、ライセンス問題では揉めに揉めましたが、シーズン中盤には誰もがその事を忘れるほどの旋風を巻き起こし、翌年にはF1からの離脱を決めていたミカ・ハッキネンに見初められ、彼の後任としてマクラーレンに大抜擢されました。2003年マレーシアグランプリで念願の初優勝を果たし、2003、2004、そして今シーズンと3年連続でチャンピオン争いを演じ、もはやその才能は誰もが認めるものでしょう。
ただ、ハッキネンファンである僕としては、もちろんライコネンは応援しているものの、まだ若造というイメージが強く、ライコネンの強さもマクラーレン・メルセデスのマシンの速さによるところが大きいという認識で、初優勝はハッキネンより圧倒的に早いものの、実力ではまだまだハッキネンには及ばないと思っていました。
しかし僕は今回、ライコネンを「ミカ・ハッキネンの再来」であると認めました。
今回の日本グランプリでは、初日のフリー走行で、もう毎度お馴染みとなってしまったメルセデスエンジンのトラブルによって、またもエンジン交換を余儀なくされ10グリッド降格が確定。さらに予選では、前戦で優勝しているため本来ならもっとも有利なはずのラストアタッカーであったにも関わらず雨にたたられ、決勝は17番手からのスタートとなってしまいました。 しかし決勝ではオープニングラップでは一気に12番手まで順位を上げ、その後新チャンピオンのフェルナンド・アロンソ(ルノー)とともに皇帝ミハエル・シューマッハ(フェラーリ)をパスするなど、マシンの速さを遺憾なく発揮して怒濤の追い上げを見せます。
レース終盤の45周目にライコネンが最後のピットインを終えた時点で、ライコネンはすでにピットインを終えているトップのジャンカルロ・フィジケラ(ルノー)から十数秒遅れの2位につけてました。しかし、こここからライコネンの最後の追い上げが始まります。ライコネンはトップのフィジケラより1秒以上速いペースで猛追し、50周目にフィジケラの背後を捕らえ、チャンスを伺います。 そしてフィジケラとライコネンはテール・トゥ・ノーズのまま最終シケインを抜けファイナルラップに突入。ライコネンはホームストレートでフィジケラのスリップストリームに入り、1コーナーで鮮やかにオーバーテイクしトップに躍り出ると、そのままトップでチェッカーを受けました。
この悪魔のような速さ!まったくミスをしない冷静さ!そして何と言ってもファイナルラップでの勝負強さ!今回のライコネンの走りは、まさに「ノッているときの」ハッキネンのキレた走りそのものでした。何と言っても17番手からの優勝ですからねえ!いくらマシンが速いとはいえ、おそらくライコネンでなければ、優勝するまでには至らなかったでしょう。見事な勝ちっぷりでした。
今回のレースは、はっきりと世代交代が浮き彫りになったレースでもありましたね。ライコネン同様16番手という後方からのスタートを余儀なくされた若き新王者フェルナンド・アロンソも、マシンの優位性を活かして、ペースの上がらないF1史上最強の男ミハエル・シューマッハを2度に渡ってオーバーテイクしていきましたからねえ。そのオーバーテイクシーンは、まさに世代交代以外の何物でもないでしょう。
もちろん、ミハエル・シューマッハの実力は、今もまったく衰えているとは思いません。スピードで劣るフェラーリのマシンで、迫り来るアロンソやライコネンを抜かせまいと抑え続ける彼の「ライン上の駆け引き」は今回も冴え渡り、最終的に抜かれはしましたが、実に見事だと改めて実感しました。シューマッハの最強たるゆえんが垣間見られた場面でしたね。
しかし、F1はドライバーの実力だけでなく、マシン、タイヤ、エンジン、チーム力、そして運と、すべての要素がうまく噛み合って初めて勝つことができるのです。そしてその「総合力」を競うのが、チャンピオンシップなのです。今シーズンはシューマッハにとって、マシン、タイヤ、そして運に見放されたシーズンだったということですね。そして新チャンピオンとなったアロンソは、「総合力」でシューマッハに打ち勝ったということです。
F1はフェラーリ&シューマッハの時代から、ルノー&アロンソ、マクラーレン&ライコネンという、新しい時代に突入しました。今日のレースは、それを象徴する素晴らしいレースだったと思います。フェラーリを凌駕するチームが、そしてシューマッハを凌駕するドライバーが、ようやく台頭する時代がやってきたんですね。
最後に、世代交代を認めたくない方々もいらっしゃるようですが、世代交代というものは、遅かれ早かれ必ず訪れるものなのですよ皆さん。ミハエル・シューマッハといえども生身の人間です。「シューマッハに限って衰えるとこなどあり得ない」なんていうのは、「ヨン様はおならなどしない」と言っているのと同じぐらい幻想に過ぎませんよ。それに、若いドライバーが芽生え、シューマッハを越えるドライバーが現れてくれないことの方が、F1にとって憂いですよ。シューマッハが最後まで負けないまま引退した日にや、その後のドライバーがどんなに頑張ったって、F1は物足りなくなってしまいますよ。「シューマッハのいないF1はつまらない」とね。
若いドライバーがベテランに打ち勝って引導を渡し、次の時代のF1を引き継いでいくからこそ、F1はこの先もずっと続いていくんです。それとも、シューマッハ引退とともに、F1観るのをやめますか?
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