Mako Hakkinenn's Voice
by Mako Hakkinenn



 BARはバトンに必死
2005年05月30日(月)

 先週末に行われたF1第7戦ヨーロッパグランプリでBAR・ホンダは、ジェンソン・バトン10位、佐藤琢磨12位という不本意な結果に終わってしまいました。そしてバトンはレース後に「予選はともかく、レースについては速さがあると思っていた。だからトップチームと同じペースでレースが出来ると思っていたんだ。それだけにレッドブルが我々よりも速かったことは驚きだった。非常に奇妙であり、理由がわからない。今回は全くグリップがなかったんだ。これは重大な問題だよ。」とマシンのポテンシャルに対する不信感を隠そうとはしませんでした。

 バトンとの契約の一部に、BARが2005年に一定のパフォーマンス目標を達成できなければウイリアムズへ移籍できるとの条項が含まれていることは周知の事実ですが、これはバトンの契約を巡る昨年の騒動の後に設けられたものです。バトンは昨年のシーズン途中にウィリアムズへの移籍を熱望していましたが、FIAの判断によってバトンの契約はBARに有効という判断がなされ、ウィリアムズへの移籍はなりませんでした。
 しかしその後新たに設けられた契約条項によって、来シーズンもバトンをBARに留まらせる(つまりウィリアムズへの流出を防ぐ)ためには、バトンがシーズンの折り返し点までに選手権リーダーのポイント数に対して一定の範囲内のポイントを得ていることが条件とされています。
 ところが、イモラでのポディウムフィニッシュを取り消され、さらにスペインとモナコの2レースにわたる出場停止処分を受けたため、バトンをチームに留まらせるために必要な目標に到達するのは、きわめて難しい状況になっています。

 BARはそれでも、何とかバトンを来シーズンも引き留めるために、必死になっているようです。BARの責任者であるニック・フライは「私たちのやるべきことは明らかだ。つまりまず1勝を挙げて、ジェンソンを残留させること。それしかない!」と語り、契約条項に含まれている条件には到達できないものの、BARで優勝できるマシンを作ることで、何とかバトンを残留させられるのではないかと考えているようです。

 ジェンソン・バトンはその甘いマスクで女性ファンも多いですが、容姿だけでなく実力も備わっているため、ドライバーとしても非常に魅力的であり、ストーブリーグでもとても人気の高いドライバーといえるでしょう。昨年の成績を見ても明らかなように、チームメイトの佐藤琢磨と比べても常に速く、ミスも少なく安定した成績を残していますからねえ。おそらく彼がルノー、マクラーレン、ウィリアムズのいずれかのマシン乗れば、間違いなく数戦のうちに易々と優勝できるだけの才能は備えているはずです。BARとしては何としてもバトンを残留させたいと考えるのは当然のことですね。
 琢磨も徐々に力はつけ始めていますが、F1キャリアの差を考慮したとしても、琢磨ではタイトルを狙うには頼りないのは否めません。さらに年齢を見ても、琢磨が28歳なのに対しバトンは25歳と3歳も若く、それでいて経験豊富で確実に琢磨より強い、BARがバトンでタイトル獲得を目指そうとするのも無理はないでしょう。

 しかし、BARがバトンを引き留められるか否かは、バトンがBARで優勝できるかどうか、つまりバトン自身の腕に懸かっているというのも、何とも奇妙な話ですな。



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