Mako Hakkinenn's Voice
by Mako Hakkinenn



 F1開幕目前、大丈夫なのか?
2005年02月06日(日)

 現在バレンシアなどで合同テストを行いながら、25日後の3月8日のF1開幕戦に向け、着々と準備を進めているF1チームですが、フェラーリ、ウィリアムズ、ルノー、マクラーレンらがテストで好調さをアピールする中、BAR、ザウバー、そしてミッドランドによって売却された新生ジョーダンは、何かとトラブル続きであわただしい状況のようです。

 まずBARは、スペイン・バレンシアの合同テストで、フェラーリ、ウィリアムズ、トヨタの3チームと共にテストを行い、J・バトンが新車「007」を駆って110周をこなし、2番手につけました。しかし、陣営に流れるのは嫌なムードばかり。なぜなら、新車を1月中旬に投入したものの、開幕まで4週間となったこの時点で、いまだに今シーズンから求められる2グランプリ分の1300kmを走り切れていないのです。
 問題となっているのはホンダ・エンジン。パワーが出る高い回転域を維持しながら2グランプリ分の耐久性を求める高い目標設定が災いし、この日のE・ベルノルディで新車となって5基目とブローが続いています。空力パーツの仕上がりも今一歩で、エンジンの対策パーツや空力パーツの改良型が出揃うのはまさに開幕間近。さらに新車に組み込まれている新しいギア・ボックスが、あまりに速いシフト・ダウン&アップをすることで、かつてウィリアムズが開発、投入してすぐに禁止された「無段階変速機(CVT)」を使用しているのではないかという疑惑をかけられているともいわれています。

 次にザウバー、最初のバレンシアテストでは目立たなかったものの、翌週バルセロナに舞台を移してからは、同じエンジンを搭載するフェラーリのF2004Mに比べ、2〜3秒も遅かったザウバーの新型車C24について、どうやら根本的な不具合があるのでは、と囁かれているそうです。
 ペーター・ザウバー代表は「タイヤが異なるとはいえ、後はコンディションにもさして大きな違いがない筈なのに、これだけ苦戦するとは理解に苦しんでいる。もしも単にエアロダイナミクスの改良だけで済まないとなれば、もう一度シャシー全体を作り直すことも辞さない」と、苦悩の表情をみせました。 ザウバーはここまで高い信頼性を示しているものの、もし作り直しということになればすべてが振り出しに戻りかねない厳しい状況です。
 この非常事態の原因は、どうやらチームが昨年落成した新風洞実験施設にあるようです。C24はこの施設を使って設計されたものの、スペイン・バルセロナ、バレンシアの2ヶ所で実走テストを行ったところ、バレンシアで違和感程度だったマシンの不審な挙動は、空力の影響が極端に出るバルセロナで一気に表面化したようです。風洞のデータと大幅に食い違っているところがあり、エアロ・パーツで空力の修正ができない場合、モノコック自体を作り直さなくてはならない状況となってしまったようです。
 ザウバーの風洞は2台の実物大マシンを実験にかけることができる優れものですが、通常の場合はデータ補正は半年以上かかるといわれており、精査し足りないところがあったようです。

 そして、最も深刻な問題を抱えているのがジョーダンです。ジョーダンは今シーズンからトヨタエンジンで戦うことになるわけですが、その一方で人材不足という深刻な問題を抱えています。ミッドランド・グループによって買収されて財政難からは脱したものの、新しい経営陣から次々と旧チーム・メンバーに対して解雇が言い渡された結果、体制が薄っぺらいものになってしまったそうです。チーム創設者のエディ・ジョーダン前代表はすべての荷物をオフィスから出されてしまい、チーフ・メカニックのA・スティーブンソンらマシンを動かすノウハウを持っていた主要メカニックも離脱。現在のT・カーリン・スポーティング・ディレクターがもともと指揮していた英国F3のカーリン・モータースポーツの面々をF1オペレーションに随時配置していく方針だったそうですが、その予定通りには行かなかったようです。
 さらに、チーム関係者によると、旧経営陣時代の慢性的な資金不足が影響していたのか、05年に向けての下準備をしてきた形跡はまるでなく、残っていた図面をもとに新しいモノコックを焼き上げることも可能ですが、ノウハウを知る開発メンバーがチームを去ったため、シーズン開幕までに新車を製造するのはほぼ不可能で、現存する04年型マシンを改造して05年を乗り切るしかない状況だそうです。
 新生ジョーダンのチームオーナー、A・シュナイダーは「1年に1億ドル(104億円)の予算を用意している」と言っていますが、頼みにしていたM・スミス・テクニカル・ディレクターの辞任もあり、設備を実用レベルで稼働させるのには早くとも数ヶ月必要。06年以降は提携したシャーシ・コンストラクター、ダラーラのテクノロジーを使って純粋なミッドランドF1の1号車をデビューさせることはできますが、当面の状況は厳しい限りです。

 今シーズンのF1は、序盤からトップチームと下位チームとの差が大きく開くそうですね。万年最後尾のミナルディは基本的に2002年以来マシンの小改造によるレギュレーション対応で何とかここまで参戦を続けてきましたが、2005年用の次期マシンでは根本的に新設計となるようで、ポール・ストゥダート代表も「PS05は完全に新しいマシンになる。ローラの風洞で開発されたものだが、とりわけエアロダイナミクスが大きく変更される」と、期待しているものの、このマシンは第4戦のサンマリノグランプリ(4月24日)に投入されると見られており、それまでは2002年型の改良型でのレースを余儀なくされます。。
 BARは何とか開幕までにマシンやエンジンを仕上げてくると思われますが、今シーズンはジャガーを買収したレッドブルという未知数のチームが新たに参戦することもあり、トップ争いよりもむしろ、レッドブル、ザウバー、ジョーダン、ミナルディの最下位争いが熾烈になりそうな気がします。

 今年もまた、F1憂い年は続きそうですね。



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